島泉丸山古墳 被葬者

島泉丸山古墳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 22:21 UTC 版)

被葬者


雄略天皇
古事記 河内之多治比高鸇
日本書紀 丹比高鷲原陵
延喜式 丹比高鷲原陵
現在 丹比高鷲原陵

丸山古墳および平塚古墳の実際の被葬者は明らかでないが、宮内庁では第21代雄略天皇に治定している[5][6][4][7]。雄略天皇の陵について、『古事記[原 1]では「河内之多治比高鸇」の所在とあるほか、後段[原 2]では顕宗天皇が復讐として雄略陵の破壊を命じたが意祁命(仁賢天皇)は一部を壊すに留めたとする[1]。また『日本書紀[原 3]では「丹比高鷲原陵」とあり、続けて天皇崩御時に臣下の隼人が陵の側で不眠不休で泣き7日目に死んだので陵の北側に墓を造り葬ったとするほか、後段[原 4]では顕宗天皇が復讐として雄略陵の破壊を計画するも億計尊(仁賢天皇)が思いとどめたとする。『延喜式諸陵寮[原 5]では遠陵の「丹比高鷲原陵」として記載され、河内国丹比郡の所在で、兆域は東西3町・南北3町で、陵戸4烟を毎年あてるとする[4]

本古墳を雄略天皇陵に比定する説は、古くは延宝7年(1679年)編纂の『河内鑑名所記』に見え、1885年明治18年)以降には丸山古墳・平塚古墳が合わせて前方後円形に修陵されているほか、北側の隼人塚古墳(後述)が『日本書紀』に見える隼人の墓に比定され飛地陪冢に治定されている[2]。丸山古墳を雄略天皇陵に比定する説では、当地の地名が丹比郡高鷲原であることが有力な根拠になる[2]。しかし立地・墳形・規模が古市古墳群の大王墓群とは性格を異にする点で問題があり、1970年代には前方部は削平されているとする説が挙げられ[2]、近年では真の雄略天皇陵を岡ミサンザイ古墳藤井寺市仲哀天皇陵)に比定する説等も挙げられている[3][8][9][10][2]。本古墳が雄略天皇陵である場合には、雄略天皇は倭王武倭の五王)にも比定される強力・先進的な大王とされるため、中国南朝の影響を受けて大円墳・横穴式石室の墓制を導入した画期的古墳である可能性が指摘される[2]

なお、河内大塚山古墳(羽曳野市・松原市、大塚陵墓参考地)について、宮内庁では陵墓参考地として雄略天皇を被葬候補者に想定し[11]、かつては考古学的にも雄略天皇の真陵とする説が有力視されたが、近年では古墳時代後期の築造とする説が定着して雄略天皇陵説は否定的である[3][12]


  1. ^ 『古事記』雄略天皇段。
  2. ^ 『古事記』顕宗天皇段。
  3. ^ 『日本書紀』清寧天皇元年10月辛丑(9日)条。
  4. ^ 『日本書紀』顕宗天皇2年8月己未朔(1日)条。
  5. ^ 『延喜式』巻21(治部省)諸陵寮条。
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 羽曳野市史 第3巻 1994, pp. 145–147.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 西田孝司 2016.
  3. ^ a b c 羽曳野市史 第1巻 1997, pp. 300–309.
  4. ^ a b c 丹比高鷲原陵(国史).
  5. ^ 天皇陵(宮内庁)。
  6. ^ 宮内省諸陵寮編『陵墓要覧』(1934年、国立国会図書館デジタルコレクション)10コマ。
  7. ^ a b 『陵墓地形図集成 縮小版』 宮内庁書陵部陵墓課編、学生社、2014年、p. 405。
  8. ^ 『仲哀天皇陵古墳(藤井寺市文化財報告 第36集 -古市古墳群の調査研究報告V-)』 藤井寺市教育委員会事務局、2014年、pp. 111-124。
  9. ^ 足立倫行 「「倭の五王」をめぐる論点」『ここまでわかった! 「古代」謎の4世紀(新人物文庫315)』 『歴史読本』編集部編、KADOKAWA、2014年、pp. 48-61。
  10. ^ 『発見・検証 日本の古代II 騎馬文化と古代のイノベーション』 KADOKAWA、2016年、pp. 335-336。
  11. ^ 外池昇『事典陵墓参考地 もうひとつの天皇陵』(吉川弘文館、2005年)pp. 49-52。
  12. ^ 川内眷三 「河内大塚山古墳の研究動向と周辺域古墳群の復原」 (PDF) 『四天王寺大学紀要 第57号』 2014年、pp. 32-41。
  13. ^ 百舌鳥・古市古墳群リスト(古市)(百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議)。
  14. ^ a b 島泉村(平凡社) 1986.


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