国際基督教大学 キャンパス

国際基督教大学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/11 07:12 UTC 版)

キャンパス

大学本館は中島飛行機三鷹研究所本館として使用されていた(写真は1950年代のICU)。

ICUのキャンパスは学生数に比してかなり広大であり(東京ドーム13個分)、緑が豊富である。中島飛行機三鷹研究所跡地[17]を用いている。大学の本館は、1941年12月8日に着工された[18]同研究所の本館を改装したものであり、内装も一部に残されている。またチャペル前のロータリーも研究所の遺構である。隣接する富士重工業三鷹製作所も、同研究所の跡地を構成していた[注釈 3]

ICUキャンパスと隣接する野川公園も、1970年代までICUの牧場/ゴルフ場であった。野川公園と接する側の敷地の広大な部分において、あまり人が立ち入らない「生物学演習林」が広がっている。野生動物も生息しており、数家族のアナグマがキャンパス内に暮らしていることも確認されている[19]。また、アナグマが毎晩ICUキャンパスから野川へ出てきて水浴びをし、衛生を保つ様子も観察されている[19]

東京都道123号境調布線(通称:天文台通り)上の正門からICU教会前の中央ロータリーまでは、通称「滑走路」と呼ばれる600m程の長い直線道路(マクリーン通り)が貫いている。この道の両側は並木(ソメイヨシノ)で、これが満開になるとあたかも桜のトンネルとなることから、大学近辺では桜の名所として知られている。

桜並木は地域の人にも親しまれている
ロータリーから滑走路を臨む

学生が授業を受ける本館の前に、通称「A(あほ)山」「B(ばか)山」と呼ばれる芝生のエリアがあり、学生の憩いの場となっている。大学内の各施設が互いに離れていて移動に時間がかかることから、キャンパスを移動するための自転車を持つ学生も少なくない。

本館前の芝生の広場は学生の憩いの空間である
本館前の芝生の広場には築山がつくられており、写真奥をあほ山、手前をばか山と呼び、親しまれている

学生寮

キャンパス内には1つの男子寮(カナダハウス)、2つの女子寮(第三および第四女子寮)、1つの国際寮(グローバルハウス)、男女共用の3つの新寮(欅寮、銀杏寮、樫寮)、および2017年に新設された2つの新々寮(樅寮および楓寮)を有している。新寮と新々寮は男女フロア別であるが、新々寮にはセクシャル・マイノリティらに配慮したジェンダーフリーのフロアも設けられ、メディアでも注目を浴びた[20]。新々寮の竣工により、2017年度4月現在全学生の約30%にあたる約900人がICU内の寮で生活していることになる[21]

また、教員用住宅も整備されており、一部の教員も家族同伴でキャンパス内に居住している。学生を教員住宅に招待し、食事を振舞ったり、読書会をしたりする「オープンハウス」というイベントが伝統的に行われる。

大学図書館

大学図書館は大学発足とともに大学本館内に設置され、1960年に現在の図書館本館が米国各派教会とロックフェラー三世からの寄付金を元に建設された。設計を担当したのはフランク・ロイド・ライトの助手として帝国ホテル建築に携わり、東京女子大学聖路加病院などを手がけたアントニン・レイモンドである。また、1999年にコンピュータほかニューメディア機能を装備したミルドレッドトップオスマー図書館が南側に増築され、地下には自動化書庫(ASRS)が日本の大学図書館では初めて導入された。[22]

学生一人当たりの貸し出し冊数が多く[23]、『大学ランキング2018年度版』(朝日新聞出版)の「大学図書館」の項目では、総合評価1位を獲得した[24]

大学博物館

キャンパスの敷地内では発掘調査が行われており、石器縄文土器などが出土している。美術・文化財研究メジャーの授業の中には、キャンパス内での発掘作業を行うものも存在する。大学博物館湯浅八郎記念館」では、それらの土器や、初代学長でもあった湯浅八郎が集めた各種民芸品の展示を行っている。大学博物館の設計を担当したのは、東京都美術館などを手がけた前川國男である。

泰山荘

大学の敷地内にある建築物群であり、1936年(昭和11年)頃実業家であった山田敬亮の別荘として建てられた。泰山荘を構成する建物の多くは移築されたものであり、その中でも高風居の一室をなす一畳敷は、北海道の名付け親として知られる松浦武四郎によって約130年も前に建てられたものである。現存する6つの建物、「高風居(一畳敷を含む)」「書院」「待合」「蔵」「車庫」「表門」すべてが国登録有形文化財になっている[25]。1940年に中島飛行機に売却され、創業者の中島知久平の晩年の住まいとして使われた。

近隣施設

隣接する東京神学大学ルーテル学院大学と交流がある。また中近東文化センターがキャンパスの隣に所在しており、もう少し足を伸ばせば国立天文台へもアクセスも可能である。国際基督教大学高等学校は、設置母体を本学と同じく学校法人国際基督教大学としており、学年の3分の1が本学へ推薦入学する。同校の所在地は隣の小金井市であるが、敷地は国際基督教大学(三鷹・小金井両市の境の三鷹市側)と隣接している。


注釈

  1. ^ なお、英語でInternational Christian Universityと表記する同名の大学がかつてウィーンに存在した(現在は改称)。本稿で述べる国際基督教大学はその同名の大学の存在を把握しており、かつて教職員の交流もあった。また同名の英称および略語を含む大学として、ウクライナの首都キエフ(現:キーウ)ICU-Kyivが存在した。
  2. ^ 地元では「キリ大」とも呼ばれている。なお、ICU生へのキャンパス言葉インタビュー調査では、他に「コッキリ大も聞いた」「近所の人にはICUでは分からない」、キリ大などの呼び名は「バスの運転手、不動産屋などから聞いたことがある」が「ICU生は使わない」「違和感がある」というコメントが寄せられている[1]
  3. ^ 大学開設当初の大学本館の改修、ディッフェンドルファー記念館、シーベリー記念礼拝堂、大学礼拝堂(第1期)、学生寮などの新設建物はヴォーリズ建築事務所の設計。大学礼拝堂(第2期)、図書館、アラムナイハウスなどはレイモンド設計事務所の設計。参照:ICU国際基督教大学 キャンパス・施設紹介
  4. ^ 中央大学学習院大学上智大学、国際基督教大学、明治大学日本大学日本女子大学立教大学東京女子大学東京理科大学津田塾大学

出典

  1. ^ 藤本泉「キャンパス言葉の研究(1) : ICUキャンパス言葉資料」『筑波大学留学生センター日本語教育論集』第10号、筑波大学留学生センター、1995年2月、133-199頁、ISSN 13481363NAID 1200008377302018年4月12日閲覧 
  2. ^ 少人数教育・対話型授業”. 国際基督教大学. 2017年11月11日閲覧。
  3. ^ 日本放送協会. “国際基督教大学 ウクライナの学生を受け入れへ 数人を想定 | NHK”. NHKニュース. 2022年7月7日閲覧。
  4. ^ 3年連続 私大1位 THE世界大学ランキング日本版”. ICU. 2022年7月8日閲覧。
  5. ^ 大学概要”. 国際基督教大学. 2019年3月21日閲覧。
  6. ^ Our History - JAPAN ICU FOUNDATION Archived 2013年9月23日, at the Wayback Machine. 2011年11月9日閲覧
  7. ^ 「1953年入学の一期生198人には、開学1年前に入学試験(受験生2000人超)を受け入学が許された75人のICU語学研修所生が含まれて」いる。1期会報告 リユニオン - 国際基督教大学同窓会 2011年11月9日閲覧
  8. ^ a b 大学ロゴマーク・ICUソング|国際基督教大学(ICU)
  9. ^ 校歌こだわり調査隊 『発掘! 校歌なるほど雑学事典』 ヤマハミュージックメディア、2004年、149-150頁
  10. ^ ホームページにて公開されている2010年度の「事業報告書」「No.2」、2011年度~2017年度の「事業報告書」「データファイル」に組織がある旨の記載があることによる[1]。ただし、2010年度のものから2017年度のものまでを確認しても入学者および在学者は「0」が続いており、この期間に学生募集が行われていたかは疑わしい(組織のみが存在していた、ということが考えられる)。また、2018年度以降の「事業報告書」「データファイル」には、組織がなくなったかのように記載がなくなっているが、2020年7月13日現在、文部科学省の大学設置審議会等で「廃止」と取り上げられていないので、存在していると思われる。なお、各専攻については、加藤竜吾「(1)大学理学専攻科教育における現状と課題」『理学専攻科雑誌』第39巻第2号、東京理科大学、1997年10月、29-32頁、doi:10.20604/00000901ISSN 0286-4487NAID 110001070194 を参照した(以上、リンク先などについては2020年7月13日確認)
  11. ^ 研究所・センター”. 国際基督教大学. 2018年10月15日閲覧。
  12. ^ JECJについて”. ジョナサン・エドワーズ・日本センター. 2018年10月15日閲覧。
  13. ^ 図書館”. 国際基督教大学. 2018年10月15日閲覧。
  14. ^ a b c d e キャンパス・施設紹介”. 国際基督教大学. 2018年10月15日閲覧。
  15. ^ 国際基督教大学宗教音楽センター”. 国際基督教大学宗教音楽センター. 2018年10月15日閲覧。
  16. ^ 国際基督教大学教会 ICU Church
  17. ^ 同研究所は政治経済から工学までを含む総合研究所として企図されていた。中島飛行機株式会社その軌跡 2010年5月24日閲覧
  18. ^ これからどうしていくか?——本館取り壊しに関して YUASA 献学60周年記念展『建物に見るICUの歴史』 2016年2月20日閲覧
  19. ^ a b 金子弥生「都市に生きるけものたち」『UP』第554号、東京大学出版会、2018年12月、16頁。 
  20. ^ “LGBT配慮の学生寮 性別不問のフロア初設置”. 毎日新聞. (2015年12月15日). オリジナルの2018年10月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181012054217/http://mainichi.jp/articles/20151215/k00/00e/040/181000c 2017年8月16日閲覧。 
  21. ^ 新学生寮樅寮・楓寮を含めた全ての寮に新入寮生が入寮”. 国際基督教大学 (2017年4月3日). 2017年8月16日閲覧。
  22. ^ 図書館の歴史”. 国際基督教大学図書館. 2017年8月16日閲覧。
  23. ^ 大学図書館ランキング2016”. 開成教育グループ. 2017年8月16日閲覧。
  24. ^ 大学ランキング”. 国際基督教大学. 2017年8月16日閲覧。
  25. ^ 泰山荘とは”. 国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館. 2017年9月8日閲覧。
  26. ^ 国際基督教大学ホームページ(2021年7月21日)
  27. ^ CHRISTIAN TODAY(2022年11月18日)
  28. ^ https://www.icu.ac.jp/about/program/
  29. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 他大学との連携”. 国際基督教大学. 2018年10月15日閲覧。
  30. ^ 東京外国語大学と国際基督教大学との連携について”. 東京外国語大学. 2016年4月12日閲覧。
  31. ^ 東京外国語大学と交流協定を締結”. 国際基督教大学 (2009年3月26日). 2016年4月12日閲覧。
  32. ^ 東京農工大学・国際基督教大学 連携・協力の推進に関する基本協定締結について”. 東京農工大学 (2013年9月26日). 2016年4月12日閲覧。
  33. ^ 東京農工大学と国際基督教大学が「連携・協力の推進に関する基本協定」を締結しました”. 東京農工大学. 2016年4月12日閲覧。
  34. ^ 筑波大学と大学間連携協定を締結しました”. 国際基督教大学. 2016年4月12日閲覧。
  35. ^ “筑波大・ICUが連携 留学で協力、授業相互公開”. 日本経済新聞. (2016年4月6日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H5W_W6A400C1CR8000/ 2016年4月12日閲覧。 
  36. ^ 坂本直子 (2016年4月7日). “ICU、筑波大と大学間連携協定締結 教育研究のトランスボーダー化を推進”. CHRISTIAN TODAY. http://www.christiantoday.co.jp/articles/20333/20160407/icu-tukuba-agreement-cwc.htm 2016年4月12日閲覧。 
  37. ^ “筑波大とICUが連携協定 互いの強みを生かした人材育成”. 産経新聞. (2016年4月6日). https://www.sankei.com/article/20160406-XKKR4HVIPFLUXKX4N4STZ5VYEY/ 2016年4月12日閲覧。 
  38. ^ 北陸先端科学技術大学院大学と推薦入学協定を締結国際基督教大学(2014年8月13日)2018年3月10日閲覧。
  39. ^ 奈良先端科学技術大学院大学と国際基督教大学との間において連携・協力の推進に関する基本協定を締結”. 奈良先端科学技術大学院大学 (2016年3月31日). 2018年3月10日閲覧。
  40. ^ 国際基督教大学・上智大学が連携及び協力に関する包括協定を締結しました” (PDF). 上智大学 (2018年5月24日). 2018年10月15日閲覧。
  41. ^ 大学倶楽部・上智大 ICUと連携協定 国際機関で活躍する学生の育成目指す”. 毎日新聞 (2018年5月26日). 2018年10月15日閲覧。
  42. ^ 長崎大学と包括連携協力に関する協定を締結|国際基督教大学(ICU)”. ICU - 国際基督教大学. 2019年3月27日閲覧。
  43. ^ a b c 留学|国際基督教大学”. 国際基督教大学. 2022年2月1日閲覧。
  44. ^ BUCHO-ICU入試の歴史 2012年2月22日閲覧
  45. ^ 小樽ジャーナル
  46. ^ 週間ダイヤモンド「大学出世ランキング」
  47. ^ 週刊ダイヤモンド「出世できる大学」 神戸商科大学は5位、大阪市立大学は27位 大阪府立大学は14位
  48. ^ 大学数・学生数|国立大学協会
  49. ^ 出世できる大学ランキング 週間ダイヤモンド「大学出世ランキング」 2024年4月閲覧






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