北勢鉄道モハニ50形電車 北勢鉄道モハニ50形電車の概要

北勢鉄道モハニ50形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 06:13 UTC 版)

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北勢鉄道モハニ50形電車
近鉄北勢線時代のモ222
(1991年8月16日 西桑名駅
基本情報
製造所 日本車輌製造
主要諸元
編成 1
軌間 762 mm
電気方式 直流600 V
車両定員 48(座席28)人
自重 15.8 t
全長 11,460 mm
全幅 2,130 mm
全高 3,720 mm
台車 NKC-1
主電動機出力 25 kW ×4
駆動方式 吊掛式
歯車比 14:73(5.21)
編成出力 100 kW
定格速度 31.0 km/h
定格引張力 1,300 kg
制御装置 三菱電機KR-8 直接制御器
制動装置 SME非常直通ブレーキ
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概要

1931年7月8日の六石 - 阿下喜間延長および全線電化開業に合わせて、モハニ50形モハニ50 - モハニ55の6両が電気機関車20形20・21と共に名古屋の日本車輌製造本店で製造された。

その後、これら6両は1944年2月11日に実施された三重県下の鉄軌道の三重交通への統合で三重交通籍に編入され、762 mm軌間用電車としては松阪電気鉄道からの承継車であるモニ201形(旧デ31形)、それに四日市鉄道からの承継車であるモニ211形(旧デハニ51形)に続けてモニ221形モニ221 - モニ226へ改番された。

1949年3月にはやはり日本車輌製造本店でほぼ同型のモニ227 - モニ229の3両が追加製造された。これら3両はモニ227が北勢線に、モニ228・モニ229が三重線[1]へ分散配置され、松阪線を除く三重交通の762 mm軌間各線で運用される電車の代表形式となった。

車体

車体長11 m級の半鋼製車体を備える。

構体主要部は窓の上下にそれぞれウィンドウ・ヘッダー、ウィンドウ・シルと呼ばれる補強帯を露出状態で取り付け、リベットで主要部材を接合する、設計当時としては一般的な設計・工作手法による。

内装は木製で、さらにその上に同じく木製の屋根板に防水用の屋根布で覆ったものを載せており、座席はロングシートを扉間に設置する。

戦前製は車体が鋲接組み立てであったが、戦後製は設計そのものはほとんど変えずに溶接構造に変更されており、外観がすっきりとしたものとなった。

側窓配置は1d(1)D(1)6(1)D1(d:荷物室扉、D:客用扉、(1):戸袋窓、数字:窓数)で前面が3枚窓構成、と近隣の四日市鉄道が先に導入していたデハニ51形(1928年田中車両製。後の近鉄モニ210形)と同様である。もっとも、製造時期が3年遅い分リベットの数が減り、また、その間の車両設計製造技術の進歩を受けて鈍重な1段下降式窓ではなく、上下寸法の大きな2段上昇式窓となったため、重厚な印象のデハニ51と比して明朗かつ軽快な造形にまとまっている。

前照灯は妻面の屋根上中央に白熱電球を1灯、独立した筒型灯具に収めて取り付けられ、標識灯は戦前型は腰板左に1灯、戦後型は腰板左右に各1灯、埋め込み式で取り付けてあった。

主要機器

電装品

軽快な外観とは裏腹に、電装品は四日市鉄道モハニ51形と比較して大差ない。

各車の運転台に備えられた三菱電機KR-8直接制御器に同じく三菱電機MB-216AR[2]という当時の軽便電車用モーターとしては比較的大出力の主電動機[3]を2基ずつ組み合わせて永久直列とし、これら2組を抵抗の挿抜を組み合わせた上で直並列制御する、路面電車並みの直接制御車である。もっとも、東京市電払い下げ車をもって電化開業し、トロリーポールを集電装置に用いていた四日市鉄道とは異なり、当初より架線がシンプルカテナリとされたため、三菱電機製の菱枠パンタグラフを装備していた。

この機器構成はあくまで従来の客車を複数牽引して両端駅で編成を入れ替える、蒸気機関車時代と同じ運用形態で用いられることを前提としていた。その意味では前時代的な運用構想[4]であった。それは総括制御という電車化の重要なメリットの一つ[5]を捨てることを意味していた。

台車

日本車輌製造NKC-1(C-9)形台車(2009年3月 三岐鉄道北勢線阿下喜駅

日本車輌製造NKC-1が採用された。これは、ボールドウィンJ.G.ブリルといった米国メーカー製の路面電車用台車を模倣した、リンク支持の板ばねによる枕ばねを備える軸ばね式台車であり、一般には日車C-9形台車[6]として知られているものである。

ブレーキ

シンプルな非常弁付き直通空気ブレーキ(SMEブレーキ)が採用された。これは連結運転は行うものの、自動ブレーキが必要になるほどの高速運転を行う必要性も、長大編成を組成する可能性も、共に無かったことを示すものであった。

連結器

在来車と共通で、基準面からの高さ380 mmの位置[7]にピン・リンク式連結器が取り付けられていたが、近鉄合併後に北勢線では増解結作業の簡易化を目的として連結器の自動連結器への換装が進められた。一方で、内部・八王子線では1977年の北勢線近代化による同線の余剰車転入時に、既存車に対しても同種の改造がなされた。このため、本形式は最終的に全車とも、上作用式の並形自動連結器を約3/4に縮小した形状の自動連結器への交換が実施されている。


  1. ^ 後の近鉄湯の山線内部線八王子線に相当する、四日市地区の762 mm軌間路線群を総称。
  2. ^ 端子電圧300 V時定格出力25 kW、1954年10月の北勢線、および1956年12月の三重線、の2回に分けて実施された架線電圧の昇圧後は端子電圧375 V時定格出力28 kW。戦後型は同級の東洋電機製造TDK-21BあるいはTDK-586-Aが装着された。
  3. ^ この電動機の採用により、電動車1両で最大4両の付随車を牽引することが可能となった。
  4. ^ 日本国内に存在した762 mm軌間の軽便鉄道で間接制御器による総括制御が導入されたのは、1949年電化の下津井電鉄線が最初であったから、設計当時としては通常の対応であった。また、先行する四日市鉄道や松阪電気鉄道も同様の運用形態を採っており、先行事例にならったとも言える。
  5. ^ 機回し作業に伴う入れ替え要員の削減、列車折り返し時間の短縮、機回し線の無い駅での折り返し運転の実現による機動的なダイヤ設定、それに複数の電動車を連結運転する際の乗務員削減、と総括制御化には多大なメリットが存在する。
  6. ^ メーカー側形式名。C形は路面電車や軽便電車用に割り当てられた形式名で、当時の同社が発行していたカタログで確認される範囲では、心皿荷重上限値(9/12/14 t)ごとにC-9・12・14の3種が提供されていた。ただし、製造時期により、前期はBrill 27GE・27E、後期はボールドウィンL・R形と2系統の台車を模倣しており、これらは製品ラインナップとしては同一シリーズ扱いではあったが、その本質においては全くの別物であった。なお、C-9は先行して近隣の松阪電気鉄道で採用されていたが、こちらはBrill 27E系の設計で、本形式のボールドウィンR形模倣品とは側枠形状、特にペデスタル周辺が大きく異なる。
  7. ^ 三重線やピン・リンク式連結器へ変更後の松坂線は高さ350 mmであったため、それらの路線と北勢線の間での車両の転籍時には必ず連結器の高さを変更せねばならなかった。なお、これは近鉄合併後の近代化時に450 mmへ引き上げられ、当時近鉄に存在した特殊狭軌線各線間での規格統一が図られている。
  8. ^ ただしモニ225のみは、1967年の事故で荷物室寄り妻面を破損し、その部分だけノー・シル、ノー・ヘッダーの平滑な外板にHゴム支持の2枚窓といういささかアンバランスな姿で復旧されている。
  9. ^ 出力3.5 kVAの東洋電機製造TDK-306-7Aが搭載された。
  10. ^ ただし、旧モニ221 - モニ224に搭載されたものとは形態が多少異なる。
  11. ^ ここにはATS設置時に、速度照査に必要な論理回路などの保安機器が搭載された。
  12. ^ これにより111D6D1と戸袋窓のない変則配置となった。111の部分が旧荷物室部分であり、3枚の窓がやや太い窓柱を挟んで並べられていることにかつての面影を残している。
  13. ^ 枕ばねは板ばねのまま残されたが、その両端を支えるリンク機構を改良し、上揺枕を左右に延伸、側受の位置を車体幅一杯まで拡幅することで揺動周期を延ばして揺れを抑制する改造が実施された。
  14. ^ パステルカラー車両さよならイベントを開催いたします。 - 四日市あすなろう鉄道プレスリリース(平成30年8月20日発表)2018年9月2日閲覧)


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