ロケット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/19 13:30 UTC 版)
様々なロケット・ロケット技術の応用
これまで、各国が独自で開発したロケットによって衛星を軌道投入した例は11カ国あり、ソ連(ロシア連邦)、アメリカ、フランス、日本、中国、イギリス、インド、イスラエル、イラン、北朝鮮、韓国となっている。
2024年現在、軌道投入能力を保有するのはロシア、アメリカ、日本、中国、インド、イスラエル、ウクライナ、イラン、北朝鮮、韓国の10カ国と欧州宇宙機関の1機関、それに加えてスペースXなどの民間ロケット企業である。
大気圏内でのロケット
ロケットは推進力が強力であり、大気圏内において物体を飛行させるための推進力としても利用される。その最も一般的な適用例は気象観測ロケットで、高層大気の状態を観測するためにしばしば打ち上げられる。気象庁でも定期的に気象観測ロケット (MT-135) を打ち上げていたが、2001年 に運用を終了させた。
他に無重力実験や各種実験、天体観測用の試験装置を搭載したロケットが打ち上げられる場合もある。
ロケット飛行機
飛行機への適用としては、1928年6月11日にFritz Stamerの操縦によりLippisch Enteが飛行し、1929年9月30日に"ロケットフリッツ"("Rocket Fritz")の異名を持つフリッツ・フォン・オペルの操縦によりOpel RAK.1が飛行に成功、その後、第二次世界大戦前夜の1939年6月20日にErich Warsitzの操縦により液体燃料ロケットエンジンを搭載したHe 176が飛行に成功して、第二次世界大戦末期に盛んな研究・開発がなされた。その典型例がナチスドイツの迎撃戦闘機Me163といえる。Me163 は推力1,700kgのヴァルターロケット1基により亜音速飛行を実現した。この戦闘機を参考に日本でも類似した局地戦闘機「秋水」が試作されたが、試験飛行中に墜落して終わった。ソビエトでは1942年にBI-1が飛行した。他にもミグI-270、DFS 40、DFS 194、Ba 349、Go 242、DFS 228、DFS 346等があった。
また、固体燃料式のロケットもプロペラ機の離陸促進用補助ロケットとして各国で多数利用されたが、純然たる推進力として採用した航空機として有名なのが第二次世界大戦において使用された日本海軍の人間爆弾(特攻兵器)「桜花」である。本機はまずグライダーとして母機から切り離された後、攻撃を回避しながら敵艦へ体当たりするため推力800kgの火薬式ロケット3本を順次燃焼させながら最終的に時速800km程度で突入するというものであった。他にロケット推進グライダーのK1号や神龍が試作された。
ドイツでは無線誘導ロケット爆弾Hs 293などが開発され、実戦投入された。
その後、米軍の超音速実験機X-1においてロケットが推進力として使用されて飛行速度1.06マッハを実現した。「桜花」と同じく、航空機から小型航空機を発射するという方法がとられているが、これはロケットエンジンの燃料消費量があまりにも大きく、戦闘機サイズの燃料搭載量では自力で飛行目標を達成できないからであった。燃費が悪いロケットは大気圏内の航空機用推進力としてはあまり用いられなくなり、航空機の推進力は次第にジェットエンジンへと遷移していった。その後、一部の愛好家によって、実用機ではないがXCOR Aerospace社のXCOR EZ-Rocketのようなロケット飛行機が開発、飛行されている。そのほか、地球以外の惑星でも類似の動力による飛行が検討されている[13][14]。
しかし、その後も宇宙ロケットと構造が類似している弾道ミサイルには液体燃料ロケットが採用され、瞬発力と大推力を有する固体燃料ロケットは弾道ミサイルのほか、前述の通り短射程のミサイルや気象観測、無重力実験、射出座席やゼロ距離発進、多連装ロケット砲、無反動砲等にも多用されている。
ロケット自動車
比較的簡易な構造で急加速、高速が出せるので、1928年5月23日にベルリン郊外のアヴスサーキットでフリッツ・フォン・オペルの運転によりOpel RAK2が時速238kmの世界記録を樹立したり、その後もブルー・フレーム、Budweiser Rocket等、ロケットエンジンを動力とする自動車が速度記録に挑んでいる。ただし、ロケットエンジンの作動時間は限られているので近年の自動車の速度記録では推力の持続するジェットエンジンを動力とする車両が記録を樹立している。
その他
ロケットスレッドや1975年に水蒸気ロケットを用いたドイツの磁気浮上式鉄道KOMET(Komponentenmeßtrager)による401.3km/hの記録の樹立や1978年には固体燃料ロケットを搭載したHSST-01による307.8km/hの達成等で使用された。
レンチの一種として、小型ロケットが互い違いにセットされた台座を緩める対象に取り付けて点火することで、短時間で緩めることができる「ロケットレンチ」がある。主に不発弾の錆びた信管を外すのに使われている。
注釈
- ^ 一時期OTRAGというこの種の概念のロケットが試みられたが資金調達、政治的理由等により頓挫した。
- ^ アマチュアロケット
- ^ そもそも、第二次世界大戦前の各国のロケット開発の多くは宇宙旅行協会に所属したヴェルナー・フォン・ブラウンや反動推進研究グループに所属したセルゲイ・コロリョフを含む民間の好事家達による開発によるものであった。
出典
- ^ 越川智瑛「【Next Tech 2030】無燃料ロケット、電磁波で飛ばす 東大グループ考案 地上から照射、物資輸送向け」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2019年5月24日。2019年6月13日閲覧。
- ^ "Online Etymology Dictionary ― Rocket (n.2)". www.etymonline.com. 2023年7月28日閲覧。
- ^ 宮澤政文『宇宙ロケット工学入門』朝倉書店、2016年11月20日、3頁。ISBN 9784254201628。
- ^ a b 軍事用語ロケット・ミサイルの各国の用法(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
- ^ “Russia unveils nuclear-powered interstellar spaceship - Russian space industry news” (英語). Pravda.ru (Pravda). (2018年11月13日) 2018年11月13日閲覧。
- ^ “Russia unveils NUCLEAR spaceship poised for groundbreaking INTERSTELLAR missions - YouTube”. youtube.com (2018年11月14日). 2018年11月14日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “Interstellar for Real Meet the Nuclear-Powered Spaceships of the Future - Sputnik International”. sputniknews.com (2018年4月22日). 2018年4月22日閲覧。
- ^ “Onward to Mars! (1988) russian - YouTube”. youtube.com (2015年11月2日). 2015年11月2日閲覧。
- ^ В В Роскосмосе задумались о создании ракетоплана с ядерным двигателем - РИА Новости, 06.03.2019 ria.ru | 2019年3月6日閲覧
- ^ “A brief history of rocketry”. NASA. 2006年8月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月16日閲覧。
- ^ 元寇・文永の役(1274年)で大陸から持ち込まれた武器を知りたい。以下のようなものがあったと見聞きし... | レファレンス協同データベース
- ^ 白金はロケット戦闘機「秋水」製造用に(昭和20年10月20日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p148 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ 瀬名秀明 (2007年9月21日更新). “火星飛行機を実現する!”. 瀬名秀明がゆく!. 2020年5月3日閲覧。 “取材先:「見えない流れを見る科学」浅井・永井研究室。”
- ^ 四谷智義、金崎雅博「1405 火星探査航空機翼型の設計探査(OS8-1 近似最適化I)」『設計工学・システム部門講演会講演論文集』第20巻セッションID:1405、日本機械学会、2010年、doi:10.1299/jsmedsd.2010.20._1405-1_。
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