マツ マツの概要

マツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/17 03:53 UTC 版)

マツ属
Pinus densiflora Kumgangsan.jpg
アカマツ Pinus densiflora
分類
: 植物界 Plantae
: 裸子植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: マツ科 Pinaceae
: マツ属 Pinus
学名
Pinus L.
和名
マツ属

分布

マツ属植物の分布範囲

マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られるといってよい。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たる。温度の適性が広いことが一因としてあげられており、亜熱帯熱帯に分布する種でも摂氏-10度程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するという[1]。現在では植栽の結果南半球でも見られ、オーストラリアニュージーランドアフリカ諸国で大規模に植栽されているラジアータマツ (P. radiata) が特に有名。

化石の研究によれば、マツ属は比較的古い時代に登場したとされ、現生種の多様性は進化してきた年月の長さによるものとされている[2]

形態

マツ属に含まれるものはいずれも木本であり、草本は含まれない。樹高は10 m未満のものから、大きいものでは40ないしは50 mに達する種もある。アメリカ合衆国西部に分布するサトウマツPinus lambertiana)やポンデローサマツ(P. ponderosa) では樹高80 mを超える個体も報告されている。

樹木の樹形は環境に左右されるが、マツ属の樹形は同じマツ科に属するモミ属トウヒ属のそれに比べるとより環境の影響を受けやすく不定である。苗木のうちは綺麗なクリスマスツリー状の円錐形だが、大きくなるにつれて先端は鈍く丸まり広葉樹の様な外観になるものも多い。高山に生育する種では上に伸びず匍匐状に横に広がるものも知られる。日本ではマツの樹形を整えるテクニックとして春先に新芽を摘み取る「みどり摘み」や秋に行う「もみ上げ」と呼ばれる方法が知られる。

枝は同じ高さから四方八方に伸びる(輪生)、これは苗木でも成木でも変わらないが、前述のように樹形が崩れた老木の太い枝ではよくわからないことがある。主軸(幹として上に伸びる枝)、枝(横にのびる枝)共に先端に数個の冬芽を付け、夏から秋にかけて膨らんでよく目立つ。翌年の春にはこれらの内の一つが幹に他が枝になる。冬芽の大きさ、色や毛の生え具合は種を区別する上で大切な情報である。

成木の樹皮は他の針葉樹に比べて厚く発達し、亀甲状に大きく割れるものが多い。しかし、多くの種の幼木時代、また一部の種では成木でも滑らかであるか、モミトウヒの様に薄く鱗状にはがれるに留まる。色は一般に褐色で、黒っぽいもの、赤っぽいもの、灰色っぽいものなど様々である。

マツの葉は子葉初生葉鱗片葉尋常葉(針葉)の4種類に分けることが出来る。このうち、私たちが普段目にするのは尋常葉(針葉)と鱗片葉のみであり、子葉と初生葉は発芽直後のみ見られる。鱗片葉は葉に見えず、以下、「葉」と言った場合には特に断りの無い限り、私たちが普段使うどおりの尋常葉(針葉)を指す。

  • 子葉
胚において形成されており発芽後に最初に開く葉。後述のようにマツの葉は種類によって葉中の維管束の数が違うことが知られているが、子葉においてはいずれの種でも維管束は一つだという[3]。他のマツ科植物と同じく子葉は3枚以上出てくる多子葉植物である。
  • 初生葉
子葉の次に出現する葉であり、縁には鋸歯を有する。
  • 鱗片葉
枝(長枝)を埋め尽くすように生えている三角形の鱗の様なもの、一見すると葉に見えないが葉の一種だという。マツ属を表す特徴の一つ。
  • 尋常葉
短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束生する。いくつかの例外を除き1本の短枝に束生する葉を全部集めると断面は円形になる。すなわち2葉のマツならば個々の葉の断面は中心角が180度の扇形、5葉のマツのそれは中心角72度の扇形になる。

葉はベトナムに分布するP. krempfiiという例外を除いて、細く針のようになっている。葉の長さにも色々あり、僅か3 - 4 cmのバンクスマツ P. banksianaから40cmを超えるようなダイオウマツP. palustris)やヒマラヤマツ(P. roxburghii)に至るまで様々なものがある。一般に温暖な地域に分布するものの方が葉の成長期間が長く、長い葉を持つ傾向にあるという[4]

マツ属の葉は短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束になってつく。その数は個体内での多少の差はあるものの2枚、3枚ないしは5枚が束になって生えていることが多く、種によってその数は決まっている。

日本では二葉松はアカマツP. densiflora)、クロマツP. thunbergii)、リュウキュウマツ

五葉松はゴヨウマツヒメコマツハイマツチョウセンゴヨウP. koraiensis)、ヤツタネゴヨウが知られている。

三葉松は、アメリカ大陸を中心に分布しテーダマツP. taeda)やダイオウマツP. palustris)などが知られている。日本には3葉のマツは自生していないものの、化石の研究からオオミツバマツ(P. trifolia)と名付けられた種が分布していたことが確認されている。

葉の数による分類は直感的で非常に分かりやすい方法であり、両者には葉の数以外にも多数の違いがあること、遺伝的にも交雑出来ないことから、分類学的にも古くから認められていた方法である。

さらに、葉の断面を顕微鏡で観察すると維管束が見える。その数は2葉・3葉のマツと5葉のマツで異なるという特徴もよく知られており、一般に2葉・3葉のマツは2つの維管束を持つことから複維管束亜属(Dipxylon)、5葉のマツは1つの維管束しかないことから単維管束亜属(Hapxylon)とされてきた。しかしながら、北米やアジアに分布する一部の種は維管束は1つであるが、葉の数は2枚ないしは3枚であり、両者の中庸の形態を持つ。

マツの花は雌雄同株[注釈 1]である。雌花は枝の先端に作られて、小さな球果の形をしている。雄花は枝の根元に作られ、小さなラグビーボールが多数集まった様相を呈すものが多く、色は黄色から赤色までさまざまである。風媒花であり雄花で作られた花粉は風で、雌花に運ばれて受粉する。

雌花は球花(英語:female cone)などとも呼ばれ、概ね成熟した球果の縮小形をしている。色は赤っぽいものが多い。

マツの球果(松かさ)は鱗片状のもの(種鱗)が集まった形状である。この球果についても形や大きさ、個々の鱗片状の凹凸の状態、表面の棘の有無、熟した時の色合いなどに違いが見られる。形や硬さについても色々あり、2葉・3葉のマツの多くの球果は卵型で硬く種鱗を剥がすのは素手では困難であるが、5葉のマツの球果は細長い円筒形(カプセル型)で比較的軟らかく素手でも容易に分解できるものが多い。ただし、例外もある。

球果と枝とを結ぶ柄(果柄)についても長いものから短いものまでいろいろある。球果が樹上から落ちる際には果柄と球果実の間、もしくは枝と果柄の間に離層が形成されることが条件であるが、どちらに形成されるのかという違いもある。前者の場合、さらに一部の種では球果の種鱗数枚を果柄に残したまま落果するものもあるという。なお、種類によっては離層が形成されにくく、樹上に何年にもわたって球果が残るものもある。また、球果が開く条件は乾燥によるものが多いが、中には火災による高温や動物による摂食や球果の腐敗が条件の種もある。

種子は一般に風散布型で翼を持つが一部持たないものがある。また、翼のあるものであってもその大きさは色々である。特に種子に付く翼の付き方で分類する方法も古くから知られており、葉の維管束だけでなくこれでも2・3葉のマツと5葉のマツをほぼ綺麗に分けられることが知られている。一般に2・3葉のマツは翼と種子を綺麗に分離出来るが、5葉のマツは翼の組織が種子内部に入り込んでおり綺麗に分離出来ない。


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注釈

  1. ^ 1つの株に雄蕊のみを持つ雄花、雌蕊のみを持つ雌花という2種類の花を付けること
  2. ^ 地面に近い枝が接地することで発根し、それが新しい個体へと成長する更新様式
  3. ^ 病名和名は「林業技術ハンドブック(2001)全国林業改良普及協会」を参考にした

出典

  1. ^ 酒井昭・倉橋昭夫(1975)日本に自生している針葉樹の耐凍度とそれらの分布との関係. 日本生態学会誌25(4), 192 -200.
  2. ^ 大畠誠一(1995)マツ属における適応と種分化(2)―地理分布圏と分布の様相―. 生物科学47(2).
  3. ^ a b c d 石井盛次(1968)マツ属の基礎造林学的研究 特にその分類学的ならびに地理学的考察. 高知大学農学部紀要19号
  4. ^ a b c 大畠誠一(1995)マツ属における適応と種分化―(1)―マツ属の多様な形質と性質. 生物科学47(1), 32 -39.
  5. ^ Andresen, J. W. (1957) Precocity of Pinus rigida Mill. Castanea 22:130-134.
  6. ^ 石井盛次(1952)マツ属の分類学的研究. 高知大学研究報告 自然科学2(2), 103 -123.
  7. ^ 二井一禎・肘井直樹(2000) 森林微生物生態学. 朝倉書店. 東京.
  8. ^ 戸田良吉(1953)マツ類のサシキについて―綜合妙録―. 研究報告65号
  9. ^ 石川博隆・草下正夫(1959)マツ類のさし木に関する研究(第1報)―クロマツのハタバザシ法について―研究報告116号
  10. ^ a b c 柴田圭太(編).1957. 資源植物事典. 北隆館. 東京.
  11. ^ a b 堀田満・緒方健・新田あや・星川清親柳宗民・山崎耕宇.(1989). 世界有用植物事典. 平凡社. 東京.
  12. ^ a b 日本林業技術者協会 (編). (1993) 新版林業百科事典. 丸善. 東京.
  13. ^ 佐藤為三郎(編).(1886)『現今児童重宝記 : 開化実益』
  14. ^ 『信州の民間薬』全212頁中55頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集
  15. ^ Mirov N. T.(1967)The genus Pinus. The Ronalld Press Company, New York.
  16. ^ a b c d 清原友也・徳重陽山(1971)マツ生立木に対する線虫Bursaphelenchus sp.の接種試験. 日本林學會誌 53(7), 210-218
  17. ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2015年1月16日).[要ページ番号][リンク切れ]
  18. ^ a b 初島住彦・中島邦夫. (1979) 琉球の植物. 講談社. 東京.
  19. ^ 佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠夫 編著 (2001) 日本の野生植物木本1. 平凡社. 東京.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 豊国秀夫 編著(2009) 復刻・拡大版植物学ラテン語辞典. ぎょうせい. 東京.
  21. ^ 松脂の採れる事世界一の新高赤松 約三百万円の輸入も防遏か 意義ある中研の新事業. 台湾日日新報 1936年10月7日付け.
  22. ^ 中野秀章(1962)岩手・宮城両県下防潮林のチリ地震津波時における実態・効果と今後のあり方.林業試験場研究報告140
  23. ^ a b c 大畠誠一.(1993). マツ属における種分化と地理分布の研究 : 亜節の位置づけ. 京都大学農学部演習林報告(65) 36-49.
  24. ^ a b c d 平井信二(1998)木の大百科―解説編―. 朝倉書店, 東京
  25. ^ Taxonomy, History, and Biogeography of the Contortae (Pinus spp.)
  26. ^ a b 中井勇(1990)バージニアマツとクラウサマツの雑種.日本林學會誌 72(4), 335-338.
  27. ^ 朝日新聞社(1997)朝日百科 植物の世界11 種子植物3 単子葉類・裸子植物. 朝日新聞社, 東京.
  28. ^ J. T. Blodgett and K. F. Sullivan (2004) First Report of White Pine Blister Rust on Rocky Mountain Bristlecone Pine. plant disease 88(3), 311






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