ハイイログマ 解説

ハイイログマ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 12:58 UTC 版)

解説

別名アメリカヒグマ。また、日本でも同名の映画が公開されて以降、グリズリーGrizzly)という英名がよく知られている。北米では、内陸に棲む同種をグリズリー、沿岸に棲む同種をヒグマ (Brown Bear) と呼ぶことが多いが、実際のところ、ヒグマと区別する明確な基準はない。 古い時代の区別方法としては「爪が細長く、普通に歩いていて地面に跡が残るほどのものがグリズリー、そうでないものがヒグマ。」や「体毛の先端部が白っぽいものがグリズリー、そうでないのがヒグマ。」というような区分がされていたが、この時点でもアラスカの南部の海岸線や島にいるシトカグマが、外見にグリズリーとアラスカヒグマのどっちとも言えない特徴があるとされていたなど、曖昧な点があった [2]。 亜種小名「horribilis」は「恐ろしい」という意味である。

なお、ゲノムの解析により、絶滅種のホラアナグマと異種交配しており、現生のハイイログマにもホラアナグマの遺伝子を持つ個体が存在する事が判明した[3]。 

生態

最大級の個体は体重が450キログラム以上に達する[4]が、平均的な大きさは日本のヒグマとあまり変わらない[5]。ただ、肩のコブがより盛り上がっている。走行速度は、雌のハイイログマが瞬間的に時速48キロメートルを計測した事があり(雌は雄よりも速い)[6]、泳ぎも得意とする。木登りについては若い個体は得意とするが、成獣は体重が増加するためほとんど登らなくなる。

絶滅したカリフォルニアハイイログマは平均で今のグリズリーの最大級ぐらいの大きさだった。かつては北アメリカ大陸西部に幅広く生息していたが、開発に伴って生息域が減少し、現在の分布はアラスカ州アメリカ合衆国北西部、カナダ西部に限られている。

季節によってヘラジカトナカイアメリカアカシカアメリカバイソンオオツノヒツジ、ドールシープ、シロイワヤギ等の草食獣やその死体サケマスバス等の魚類、松の実ベリー等の植物や昆虫など何でも食べる雑食性である。アメリカクロクマを捕食することがあり、オオカミピューマから獲物を奪うこともある。天敵と言えるものは存在しないが、通常ヘラジカやアメリカアカシカやアメリカバイソンの健康な成獣を狩ることは無く、それらやイノシシ家畜などの大型草食動物の反抗によって死亡する例もある。 カリフォルニアやスペインなどでは、娯楽としてヒグマと雄牛を戦わせる見せ物が19世紀まで盛んであった。この需要が、カリフォルニアハイイログマの絶滅の一因になったともされる[7]


  1. ^ Fred Bunnell 「クマ科」渡辺弘之訳『動物大百科1 食肉類』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年。
  2. ^ 『シートン動物誌 4 グリズリーの知性』アーネスト・シートン 著、今泉吉晴 監訳、株式会社紀伊國屋書店、1998年、ISBN 4-314-00754-0、p.38-39、41図2、215図13
  3. ^ ナショナルジオグラフィック(2018年8月30日)絶滅クマのDNA、ヒグマで発見、異種交配していた
  4. ^ 1979年にイエローストーン国立公園で508キログラムの個体が麻酔銃で捕獲・計量された。
  5. ^ 1979年にイエローストーン国立公園で行われた調査では雄の平均体重は260キログラム、雌の平均体重は170キログラムであった。
  6. ^ Kearns, William E. (January–February 1937). “THE SPEED OF GRIZZLY BEARS. Yellowstone National Park (Nature Notes)”. www.nps.gov. 2023年11月25日閲覧。
  7. ^ When California delighted in the bloodsport of bulls vs. bears by Mike McPhate, Jul 26, 2018
  8. ^ Species Profile”. U.S. Fish and Wildlife Service. 2008年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月22日閲覧。
  9. ^ カナダ政府絶滅危惧種のページ(英文)
  10. ^ ただし、この探検隊は「ヤッカー」もアメリカグマ(Ursus americanus)と別種(毛が密で色に斑のものがいるなどが理由)だと判断したが、その後ヤッカーはアメリカグマの事だとされている(『シートン動物誌 4 グリズリーの知性』アーネスト・シートン 著、今泉吉晴 監訳、株式会社紀伊國屋書店、1998年、ISBN 4-314-00754-0、p.240。)。
  11. ^ 『シートン動物誌 4 グリズリーの知性』アーネスト・シートン 著、今泉吉晴 監訳、株式会社紀伊國屋書店、1998年、ISBN 4-314-00754-0、p.26・45-46
  12. ^ 『シートン動物誌 4 グリズリーの知性』アーネスト・シートン 著、今泉吉晴 監訳、株式会社紀伊國屋書店、1998年、ISBN 4-314-00754-0、p.35地図1・47-61
  13. ^ JOHN DAVID BORTHWICK. “Bear in Mind: Bears in the Arena (1 of 10) print”. The Regents of the University of California.. 2019年3月22日閲覧。
  14. ^ Lanier Bartlett: “Ursus Horribilus - California Grizzly”. 2012年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月22日閲覧。






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