オーディオマニア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/03 22:04 UTC 版)
オーディオの種類
オーディオ機器は、ソース・ソフトから電気信号を読み取るプレーヤー類、電気信号を増幅させるアンプ類、電気信号を空気振動による音として再生するスピーカーに大別される。これらのほか、各機器をつなぐケーブル類、設置のためのインシュレータや台(オーディオラック)などをアクセサリ類として扱う。また、オーディオを設置する部屋の構造や材質も再生音に影響を与え、同時に再生音が周囲には騒音と受け取られるおそれがあるため、専用のオーディオ・ルームが設計される場合もある。
- プレーヤー類
- CDプレーヤー、レコードプレーヤー、カセットデッキ、FMチューナーなど、メディアに対応した機器がある。「音の入り口」として、メディアに記録された情報をいかに汲み取るかが重視される。
- アンプ類
- プリアンプ(コントロールアンプ)、メインアンプ(パワーアンプ)、プリメインアンプ、FMチューナーとの一体型のレシーバーなどがある。再生音の品位や力感に影響するとされる。
- アンプにはトランジスタを使用したものが主流であるが、真空管を用いた管球アンプも根強い人気がある。真空管アンプマニアのために、一度は生産が縮小された真空管の生産が再開されたり、まだこれらの生産が続いていたロシアから、航空・軍事向けに質の高い真空管を生産していたメーカーの品だけを輸入する所も見られる。さらには、自作パソコン分野でもオーディオマニアをターゲットにして、真空管アンプを搭載したマザーボードが発売された事もある[3]。
- スピーカー
- ピュアオーディオでは原則として2チャンネル方式(2個のスピーカーを左右に配置する)を取る。「音の出口」として再生音に直結しており、個性をもっとも左右する機器とされる。
- 再生方式の違いによるホーン型、コーン型、リボン型、平面型などのユニットの種類があり、素材もさまざまに開発されている。これらのユニットを高音域、中低音域用に組み合わせた2ウェイ方式や高・中・低音をそれぞれのユニットに分けた3ウェイ方式が主流である。一般にユニット数が多いほど値段が高くなる傾向にあるが、2ウェイの高級機もある。各音域を受け持ったユニットをそれぞれ別個のアンプで駆動するマルチアンプ方式もあり、高級オーディオで見られる。
- またケーブル接続には、スピーカー単位で一組のケーブルを使用する一般的なシングルワイヤリング接続と、音域ごとのユニットにそれぞれケーブルを接続するバイワイヤリング方式がある。
- アクセサリ類
- オーディオラック、スピーカースタンド、ピンケーブル、インシュレータ、電源タップ、オーディオラックなど。従来は主役的機器類に対して補助的な位置づけであったが、近年は音楽制作スタジオと共により重視される傾向にあり、中には機器類の価格に匹敵あるいは凌駕する高級ケーブルもある。客観的な性能をスペックとして表すことが難しいため、これに目を付けたオカルト的な製品も登場している。
- なかには【アンプとスピーカーはアクセサリー。カートリッジとケーブルがメイン】と豪語する電線病重篤患者もいる。
オーディオ機器の選択
音響機器は入門機からハイエンドといわれる高級機まで値段の幅が限りなく広い。とはいえ、高級機を除くと、メーカーは消費者のニーズを調査して価格設定しており、その結果、同程度の製品がほぼ同じ価格帯で競合している。したがって消費者は、各自の予算に合わせた価格帯にある候補から、自分の好みや目的に応じて機器を選び、組み合わせることになる。
一般に、機器の値段が高いほど高級であり、再生音の音質・品位も向上する。しかし、一定の水準からは、音質向上よりもむしろ個性の変化やデザイン性など外観の要素が大きくなってくるとされる。コンポーネントステレオでは、各機器の組み合わせによって好みの再生音とすることが可能であり、また各機器特性の相乗効果(相性)による音質向上や逆効果もあるとされるため、オーディオ専門店のすすめやオーディオ雑誌に掲載されたオーディオ評論家の批評・「推奨組み合わせ例」がしばしば参考にされる。
コレクション性
オーディオ機器は、目的とする再生音だけでなく、機能的あるいは豪華な意匠や素材などの要素にも利用者に魅力に映る部分があり、その様なデザイン性も重要なポイントである。基本的に、機器が高額になればなるほど素材的にも見た目にも高級感が増す傾向にある。例えば、プレーヤー類やアンプ類ではイルミネーションランプあるいは真空管の放つ光、スピーカーでは家具調の木目やホーンの形状・素材感などがリスニング空間を演出することになる。
これはオーディオ機器が視覚上も大きな価値を示している訳で、コレクターと同質の要素を含んでいると考えられる。生産を終了した旧モデルであっても、音質・デザイン性に優れるとされたものは「往年の名機」として人気・需要があり、中古市場も活況を呈する他、これら「往年の名機」にまつわる復刻モデルやリスペクト要素を含む製品が企画・製造されることもこの業界では多々ある。
なお、日本では、バブル景気の頃に絶頂期を迎えた音響機器の往年の名機が電気用品安全法(PSE法とも)の改正に伴い2006年4月より販売できなくなる(電子楽器類も含む)(検査を合格すれば販売は可能)という事態になり騒動と混乱が起こり、経済産業省が周知が不十分であった事を認めた上で迂回策を提示した(→PSE問題)。
アナログ対デジタル
「オーディオの歴史」で述べたとおり、オーディオ機器は現在までにいくつかの方式の変遷を経てきている。愛好家の中では、そうした録音・再生方式を巡ってしばしば議論や対立が生じる。「アナログ対デジタル」は、そうした議論・対立のひとつの典型である[4]。
アナログ方式・デジタル方式は、実際には録音時にも用いられる方式の選択肢であるが、愛好家の議論の場合は、もっぱらオーディオ機器による再生時の方式の違いであり、メディアとしてはレコードとCDの対立となる。
オーディオ評論家の長岡鉄男は、「最高のアナログは最高のCDを上回るが、最低のアナログは最低のCDを遥かに下回る」と述べている。[要出典]
アナログ派の批判と反論
アナログ方式及びレコードを支持した愛好家のデジタル・CD批判はおよそ次のようなものである。
- CDは、標本化の前段階で20kHz以上の音をローパスフィルタで切り捨てている。このため、原音の雰囲気が再現できないほか、倍音成分を多く持つ音源(弦楽器など)の再現に難がある。
- CDは、量子化の時点で電圧を16bit(65536段階)に丸めてしまうため、ダイナミックレンジに理論的な上限が存在する。特に弱音域では大きな量子化誤差が発生するが、これはレコードで発生するランダムなノイズと比べて聴感上の悪影響が大きい。
- レコードは機器の使いこなしによって音質を向上させる余地がある。また、聴くソースによって最適なアームやカートリッジ・フォノイコライザーを選び調整(いじる)するというCDPにはない喜び・醍醐味がある。
- レコードの音は「温もりがある」、「柔らかい(耳に優しい)」、「自然」である。
- CDプレーヤーはピックアップの製造元(例:フィリップススイング型)の製造終了に伴い、多くの良質かつ往年の高級機のメンテナンスができなくなっていることへの憂慮と懸念がある(デジタル肯定・アナログ派)
- デジタルチップはパソコンと同様に日進月歩が激しく、高級機がわずか数年であっさり後発低価格機に負かされる。また、インターネット経由でのハイレゾへ移行しつつあり、デジタルパッケージメディアに投資することに疑念をもつ。
- DVD-A等のように新しいフォーマットが出ても長続きがしない。
デジタル派の批判と反論
これに対して、デジタル方式及びCDを支持した側の反論は以下のようになる。
- LPレコードに記録できる帯域は通常100Hz~10数KHz程度であり、これはCDよりも狭い。また、レコードはCAV(角速度一定)であるため、内側の再生ほど線速度が遅く、高域の周波数帯域が狭くなっていく。さらに、レコードは再生することによって音溝が磨耗し、特に高音域が徐々に失われてゆく。
- 電子楽器などの音の立ち上がりや減衰が激しい音源、打楽器やピアノの打鍵などのパルス性の音源ではデジタル方式が優位にある。また、レコードではクロストークやオーバーハングによる音質劣化が避けられない。
- レコードを最高の音質で再生するためには振動が無く安定した場所の確保、高価な機器とそれを使いこなすだけの知識・技術が必要であり、レコード盤の保管にもCD以上に気を遣う必要がある。対してCDは不安定で振動がある場所、安価な機器でも比較的良い音質が得られ、メディアの保管も楽である。
- 量子化誤差はA/D変換時の工夫でかなり改善される。最近のCDではΔΣ変調などで聴感上の量子化誤差を抑えている。
- レコードの音が自然に感じられるのは、適度に歪みが加えられた結果と思われる。聴感上良い音に感じられても、原音再生の理念からは外れる。
アナログ・デジタル共存へ
初期のデジタル音源はファイル圧縮などで劣化が避けられなかったが、デジタルオーディオプレーヤーや高音質な音声ファイルフォーマット、ハイレゾリューションオーディオの登場、Blu-ray Audioやインターネットによるハイレゾ音楽配信などの流通形態の登場、デジタルアンプの製品化など、デジタル製品の高性能化やバラエティの拡がりが顕著となり、高音質オーディオ分野でもデジタル製品が圧倒的になった。
一方で2010年代頃からは、LPレコードやカセットなどのアナログ独特の音質劣化を楽しむ目的で見直されるようになり、旧音源のLPリリースが増えてきているほか、新録音の光メディアとLPを同時リリースも増えてきている。アナログレコードの再生には、針の上げ下げ、曲の頭出し、カートリッジの交換、MCカートリッジ使用に伴うトランスやヘッドアンプの選択、振動の伝わらない設置場所の確保など、複雑な手順がともなう。愛好家にとってはそれもまた愉しみの1つであり、それがアナログレコードに強い趣味性を持たせる事となっている。
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ PC wach記事:「AX4B-533Tube」・ASCII24記事:「AX4GE Tube Japan」
- ^ 英語版ウィキペディアには「アナログサウンドVSデジタルサウンド」という記事がある。アナログ支持者とデジタル支持者それぞれの主張を比較する事が出来る。
- ^ 加銅鉄平の「辛口オーディオコラム」 [3]
- ^ 例えば五味康祐は、プロ向け機器は防音室に設置する前提で設計されているために一般の部屋では残響が多くなり、コンシューマ向け機器に音質が劣ってしまう場合もあると指摘し、杓子定規にプロ向け機器を勧めるマニアの姿勢に疑問を呈している。
- ^ ITmedia・「ちゃんとした音」を体験して
- ^ my-musicstyleオフィシャル
- ^ 具体的にはAOpenのAX4B-533Tubeなどがある。
- ^ 「おたく」という言葉を作った張本人である中森明夫は、オーディオマニアをおたくの範疇に含めている。
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