イージーオープンエンド 歴史

イージーオープンエンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/01 02:16 UTC 版)

歴史

イージーオープンエンドの発明

従来からの缶詰においては缶切りを用いて開封するか、缶ジュースなどでは専用の穴開け器(オープナー)によって、飲み口(注ぎ口)と空気穴の2箇所の穴を開けて開封していた。1959年アメリカエーマル=フレイズ英語版が缶切り不用のEOE方式を発明し、1963年にその特許をアルコア社に売り、Pittsburgh Brewing Companyに採用するように働きかけた。発明のきっかけは、ピクニックに缶ビールを持参したが、オープナーを持っていくのを忘れたためと伝えられる。1965年には日本にも技術が導入された。

現在のような方式になる以前には、異なる方式も開発され、用いられていた。そのひとつがジューストップ(Juice Top)と呼ばれるもので、缶の開口部に別体の金属部分を取り付けたものである。その部品にスコアが切ってあり、タブを引くとスコアが切れて開口部となるというものであった(現在のオロナミンCの開栓方式に似ている)。別体の金属を蓋として取り付ける方法は、現在でも一部の調理済食品の缶詰などで用いられている。

もうひとつジップトップ (Zip Top) という方式があったが、これはプルタブ式と同様に缶の蓋となる金属板そのものにスコアを切り、タブをリベットで取り付けたものである。しかし、これはタブが充分なリングとなっておらず、注ぎ口に対して斜めに取り付けられていた。タブを外してできる開口部は、ヒョウタンやベル(欧米での)に似た、真ん中がくびれた形状であった。1965年には缶飲料全体の4分の1を占めるまでに採用されていたが、プルタブ式に切り替わっていった。ジップトップは開封に力が必要であり、タブがとれやすいなどの欠点があったからである。なお、このジップトップが Ermal Cleon Fraze が発明した世界初のイージーオープンエンド(EOE)であり、採用したのは缶ビールであった。

これらは時期が早かったこともあり日本にはほとんど紹介されなかった。1965年に日本に技術導入されたのはジップトップを改良したプルタブ式である。

パーシャルオープンエンドの進化

先述のようにイージーオープンエンド(EOE)の缶蓋のうち、蓋の一部のみが開口するものをパーシャルオープンエンド(POE)と呼び[1]、その方式としてはプルタブ式が普及していた。しかし、それは開口部が金属片となって缶本体から切り離されるものであったため、その危険性や環境問題が指摘されることとなった[1][3]。そのため、1980年代にはステイオンタブ式が広まり始め、1990年代初頭にはほとんどすべてがそれに切り替わった。ただし、日本では現在でも中国などから輸入された、プルタブ式の飲料缶がわずかながら流通しているほか、飲料以外の液体の入った缶(エンジンオイル等の自動車用潤滑油添加剤等)では採用例が多々ある。

とくにアメリカでは、当時すでに同様な環境問題[注 1]となっていたためにプルタブが禁止され、ステイオンタブ式が主流となっていたことが、日本にも伝わり、市民の意識を高める助けとなった。また、そうした缶飲料が輸入されるようになり、珍しくなくなってきたことも影響した。プルタブのポイ捨て問題を解消すべく、企業などに問題提起と要望をした市民団体もあった。

ステイオンタブ式には、その普及のために一時期エコマークがついていたことがある。

ステイオンタブ式は、開口部分の口金が缶に付いたまま内部に押し込まれるため、当初は衛生的ではないなどの見方もされたが、実際に販売してみると市民の抵抗感などはほとんどなかった[7]。この衛生問題については、新規な規格を取り入れることに消極的な企業側が、日本人は清潔好きだからといういわゆる清潔神話をもとに(自社の製品が売れなくなっては困るということで)述べていた可能性が指摘されている[8]。プルタブ式であっても飲料が口に入る前に缶の外側に触れることは同じであり、「衛生的ではない」との声が消費者からのものであったのかどうかは不明である。

なお、1975年には、プルタブのポイ捨て問題に対応するため、2箇所のやや出っ張った口金を指で押し下げる方式のプッシュエンド(またはプッシュボタン)という方式も炭酸飲料において採用された。内圧によって口金を押し付けて密閉している面もあるため、中身を不正に入れ替えることも不可能でなく、力が必要で操作感が良好でないなどいくつかの問題点により、それを採用した製品が市場に出回った期間はごく短かった。

プルタブ式で用いられたプルタブについては、それらをチェーン状に接続加工し、のれん(欧米ではカーテン)などを作ることにも利用されたことがある。

フルオープンエンドの進化

イージーオープンエンド(EOE)の缶蓋のうち蓋の全部が開口するものはフルオープンエンド(FOE)と呼ぶが[1]、従来からの缶切りで開けたもの以上に開口部がスムーズで鋭利なため、誤ってなどでさわってしまうと怪我をするおそれもある。ゴミ分別回収などが広まった結果、缶に残った内容物を洗うことなども多くなり、従来以上に問題となってきた面でもある。これについてはいくつかの対策が考えられたが、現在では切り口を触っても安全なものが開発され、製品によってはそうした缶を用いている。


注釈

  1. ^ ゴミ問題としてだけではなく、野生動物や放牧された家畜などが飲み込むこと、さらには捨て場所に困ったプルタブを缶の中に入れ、そのまま飲料を飲むことにより、誤ってプルタブを飲み込んでしまう事故も問題になった。

出典

  1. ^ a b c d e f 日本包装学会『包装の事典』朝倉書店 p.106 2001年
  2. ^ a b c JIS Z 0108:2012
  3. ^ a b c 『丸善食品総合辞典』丸善 p.958 1998年
  4. ^ 『丸善食品総合辞典』丸善 p.827 1998年
  5. ^ a b 『丸善食品総合辞典』丸善 p.576 1998年
  6. ^ a b 日本包装学会『包装の事典』朝倉書店 p.107 2001年
  7. ^ 六郷生活学校 (1991年3月30日). “空き缶のリサイクルと缶飲料の飲み口改善をめざして”. ふるさとづくり'91. あしたの日本を創る協会. 2008年8月22日閲覧。
  8. ^ 田村有香 (2004年10月22日). “--タイプ1(第三者認証による環境ラベル)”. 企業責任(2) - 環境報告書(続き)と環境ラベル:もくじ. 京都精華大学. 2008年8月22日閲覧。
  9. ^ イージーオープン缶(プルトップ式缶)のあけ方 日清ペットフード、2016年2月20日閲覧。
  10. ^ a b c d 空き缶のリサイクルと缶飲料の飲み口改善をめざして”. 公益財団法人あしたの日本を創る協会. 2016年10月26日閲覧。
  11. ^ 大阪府理容生活衛生同業組合プルトップ事業のサイト
  12. ^ 野幌商店街振興組合青年部リングプル再生ネットワーク
  13. ^ アルミ缶リサイクル協会<Q&A>
  14. ^ アルミ缶はタブもいっしょにリサイクル (アルミ缶リサイクル協会)
  15. ^ a b 所さん!大変ですよ「リサイクル業者悲鳴!?“プルタブ取るのはやめて”」
  16. ^ スチール缶のフタにはアルミが使われていますがリサイクルするときに問題はありませんか?(スチール缶リサイクル協会)
  17. ^ 朝日新聞2000年11月16日朝刊p.31 プルタブ集め車いす ボランティアの会が県社協に寄贈





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