アルベルト・シュヴァイツァー 評価

アルベルト・シュヴァイツァー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 02:01 UTC 版)

評価

フランスの実存主義哲学者サルトルの親戚(サルトルの母といとこ同士)でもあるシュヴァイツアーは、哲学的な思想でも知られている。彼はヨーロッパの古き良き人文主義の伝統を引き継ぎながら、20世紀の人類社会が直面する問題を解決するための思想を編み出した。

シュヴァイツアーは、人生世界肯定的でなおかつ倫理的な思想が必要だと考えた。つまりそれは単なる皮相な楽観主義に陥らずなおかつ世界を改良するための思想である。その結果彼が編み出した概念が「生命への畏敬」である。すべての人間はその中に生命の意志をもっているのであり、自分の内外にあるそれを尊重する思想、それが「生命への畏敬」に他ならない。

その一方で、一般にはキリスト教の伝道と医療活動およびその平和活動を通して、シュヴァイツァーの活動は高く評価されているが、日本の児童文学者寺村輝夫伝記『アフリカのシュバイツァー』で記しているように、実はアフリカ現地での評判は決してよいものではない。

自らの神学思想を現地の文化より優先し、また同時代の知識人たちの大半と同様に白人優位主義者の側面を持っていたことも事実である。現に、シュヴァイツァーは「人類皆兄弟」の標語を唱えながらも、あくまで白人を兄、黒人を弟として扱っていたため[7]、ヨーロッパの列強の帝国主義植民地支配のシンボルと見なしている者も少なくない。

真言宗僧侶古川泰龍はシュヴァイツァーの遺髪を預かり「生命山シュバイツァー寺」を開いている[8]

書籍

著書

  • 『水と原始林のあいだに / 生い立ちの記 / むかしのコルマルの思い出』(浅井真男, 国松孝二訳、白水社、シュヴァイツァー著作集1) 1956
  • 『わが生活と思想より』(竹山道雄訳、白水社、シュヴァイツァー著作集2) 1956
  • 『ランバレネ通信(1)』(野村実訳、白水社、シュヴァイツァー著作集3) 1957
  • 『ランバレネ通信(2) / 植民地アフリカにおけるわたしたちの仕事』(野村実訳、白水社、シュヴァイツァー著作集4) 1957
  • 『ペリカンの生活と意見 / 原始林の病院 / アフリカ物語 / イエス / 精神医学的考察』(国松孝二訳、白水社、シュヴァイツァー著作集5) 1957
  • 『ゲーテ / 人間の思想の発展と倫理の問題 / 現代における平和の問題 / 文化の頽廃と再建 / 水と原始林のあいだのインタヴュー』(手塚富雄, 国松孝二訳、白水社、シュヴァイツァー著作集6) 1957
  • 『文化と倫理:文化哲学第二部』(氷上英廣訳、白水社、シュヴァイツァー著作集7) 1957
  • 『キリスト教と世界の宗教 / 現代文明における宗教 / イエス小伝 / 終末論の変遷における神の国の理念』(大島康正, 岸田晩節訳、白水社、シュヴァイツァー著作集8) 1957
  • 『インド思想家の世界観:神秘主義と倫理』(中村元, 玉城康四郎訳、白水社、シュヴァイツァー著作集9) 1957
  • 『使徒パウロの神秘主義』上・下(武藤一雄, 岸田晩節訳、白水社、シュヴァイツァー著作集10 - 11) 1957
  • 『バッハ』上・中・下(浅井真男, 内垣啓一, 杉山好訳、白水社、シュヴァイツァー著作集12 - 14) 1957
  • 『カントの宗教哲学』上・下(斎藤義一, 上田閑照訳、白水社、シュヴァイツァー著作集15 - 16) 1959
  • 『イエス伝研究史』上・中・下(遠藤彰, 森田雄三郎訳、白水社、シュヴァイツァー著作集17 - 19) 1960
  • 『わが生活と思想より - アルベルト・シュヴァイツァー自叙伝』(シュヴァイツァー、竹山道雄訳、白水社) 1953
  • 『イエスの生涯 - メシアと受難の秘密』(シュヴァイツェル、波木居斉二訳、岩波書店) 1957
  • 『バッハ(白水社創業80周年記念復刊版)』上・中・下(シュヴァイツァー、浅井真男, 杉山好・内垣 啓一訳、白水社) 1995
  • 『イエスの精神医学的考察 - 正しい理解のために』(シュヴァイツァー、秋元波留夫訳、「新樹会」創造出版) 2001
  • 『イエス伝研究史』(シュヴァイツァー、遠藤彰, 森田雄三郎訳、白水社) 2002
  • 『カントの宗教哲学(新装復刊版)』上・下 (斎藤義一, 上田閑照訳、白水社) 2004
  • 『バッハ(新装復刊版)』上・中・下 (シュヴァイツァー、浅井真男訳、白水社) 2009
  • 『わが生活と思想より』(シュヴァイツァー、竹山道雄訳、白水社、白水Uブックス) 2011

伝記

  • 『シュヴァイツァーのことば』(浅井真男著、白水社) 1965
  • 『シュバイツァー』(山室静作、講談社、火の鳥伝記文庫) 1981
  • 『シュヴァイツァー その生涯と思想』(笠井恵二著、新教出版社) 1989
  • 『シュバイツァー - 医療と伝道に一生をささげた聖者』(川崎堅二, 栗原清作、集英社、学習漫画 世界の伝記) 1990
  • 『シュヴァイツァー - 音楽家・著作家の実績をなげうって、アフリカの医者として献身した人』(ジェームズ・ベントリー著、菊島伊久栄訳、偕成社) 1992
  • 『シュバイツァー』(杉山勝栄著、ポプラ社、ポプラ社文庫 伝記文庫) 1994
  • 『素顔のシュヴァイツァー - ノーベル平和賞の舞台裏』(海老沢功著、近代文芸社) 2000
  • 『シュバイツァー』(小牧治, 泉谷周三郎共著、清水書院、センチュリーブックス 人と思想31) 2000
  • 『シュバイツァーの倫理思想 - 哲学・宗教・実践をつなぐ「生への畏敬」の倫理』(岩井謙太郎著、三恵社) 2018

その他


  1. ^ 「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)日外アソシエーツ
  2. ^ 『秘境国 まだ見たことのない絶景』パイインターナショナル、2011年、15頁。ISBN 978-4-7562-4124-5 
  3. ^ There are two means of refuge from the miseries of life: music and cats. - brainyquote.com
  4. ^ 清水書院『用語集 倫理 最新第2版』202頁「生命への畏敬」
  5. ^ 寺村輝夫『アフリカのシュヴァイツァー』童心社、1978年、62頁。ISBN 4494018066 
  6. ^ 寺村輝夫『アフリカのシュヴァイツァー』童心社、1978年、61頁。ISBN 4494018066 
  7. ^ 寺村輝夫『アフリカのシュヴァイツァー』童心社、1978年、76-77頁。ISBN 4494018066 
  8. ^ 生命山シュバイツァー寺 facebook





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