アウトレイジ ビヨンド
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概要
ヤクザ抗争を描いた2010年公開の『アウトレイジ』の二作目で前作の続編映画である。北野武監督作品では初の続編映画である。
監督および主演は北野武(ビートたけし)。三浦友和、加瀬亮、小日向文世ら前作キャストに加え、西田敏行、松重豊、高橋克典、桐谷健太、新井浩文などを起用している。
監督のたけしは『笑っていいとも!』への出演[2]のほか、自身のレギュラー番組を含め各番組で積極的な宣伝活動を行った。
丸の内TOEI2、渋谷TOEI2、新宿バルト9、新宿ピカデリー他、全国225スクリーンで公開され、2012年10月6、7、8日の初日3日間で3億9,528万7,800円、動員29万4,485人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった[3]。これは北野映画史上初となる。
あらすじ
前作から5年。関東最大の暴力団・山王会は二代目会長となった加藤稔(三浦友和)と、若頭にまで成り上がった元大友組の金庫番・石原秀人(加瀬亮)による新体制の下、今や国政に影響力を及ぼすほどの勢力を政官界に拡大していた[4]。マル暴・山本(貴山侑哉)が山王会によって女性との心中に見せかけて殺害され、山王会のさらなる勢力拡大を危惧した警察当局は、山本の前任者であり、暴力団と太いパイプを持つ悪徳マル暴・片岡(小日向文世)を暴力団対策の最前線に復帰させた。片岡は、加藤・石原による新体制に不満を覚える山王会の古参幹部と、関西を拠点とする巨大暴力団・花菱会を利用する計画を立てる。山王会古参幹部の富田(中尾彬)と、花菱会若頭・西野一雄(西田敏行)が兄弟分であることから計画は成功するかに見えたが、実は山王会と花菱会は既に協力関係にあったため、花菱会からの密告によって、富田は山王会本部内で加藤と石原の命令を受けた舟木昌志(田中哲司)に射殺される。黒幕である片岡も後がなくなり、彼らに恨みを持つ大友(ビートたけし)を利用することを思い立つ。
前作で、刑務所内で木村(中野英雄)に刺されて死んだとされていた大友は実は生きており、片岡は大友を利用すべく、刑務所を仮出所させる。だが、大友はヤクザの世界に身を置くつもりはなく、旧知の在日韓国人で日韓フィクサー・張大成会長(金田時男)の下で平穏な生活を送り始める。
片岡は、刑務所から出所後にバッティングセンターを経営し、カタギとなっていた木村を利用することにした。木村を大友と和解させた上で「本当の敵は山王会」だと伝え、復讐心を焚き付ける。木村は子分である嶋(桐谷健太)と小野(新井浩文)に対して大友を守るように命令する。片岡の計画への協力を渋る大友に対し、片岡は復讐を恐れる石原から大友が命を狙われる状況を作り出し、大友はビルのエレベーター内で襲撃されて重傷を負う。嶋と小野は大友を守りきれなかったことに責任を感じ、加藤を殺そうと山王会に殴り込みをかけるものの、舟木たちに捕らえられた挙句リンチされ、惨殺されてしまう。子分を殺された木村は勿論の事、親しい人間を殺された大友は、ここに至って片岡の計画に乗ることを決める。
まず、木村が花菱会の若頭・中田勝久(塩見三省)と親交があった事から、二人は花菱会会長の布施(神山繁)より会長の盃を貰い、抗争の援助を得るべく、花菱会の幹部会に向かう。やってきた大友と木村に対し、西野と中田は優位に立とうとして、怒鳴り声を浴びせてわざと喧嘩を売る。対する大友も一歩も引かず、場は怒号が飛び交う一触即発の状態となるが、木村がケジメをつけるために自分の指を噛みちぎって場を収める。大友と木村の覚悟を確認した花菱会は、2人なら山王会を倒せると考え、非公式の助力を決める。
大友は先代会長・関内(北村総一朗/本作では写真のみの出演)の死の真相を探るために、関内殺しの事実を口止めする対価として加藤によって引き上げられ、組織内で出世を果たした山王会幹部・舟木を拉致。彼を拷問して加藤の「親殺し」(=会長の関内殺害)を自白させ、ICレコーダーに録音する。布施は、加藤にこの証拠を突きつけ、石原が情報提供したことをほのめかしたため、加藤は疑心暗鬼に陥る。
一方、岡本(菅田俊)を始めとする部下達を次々と殺されてパニックに陥った石原は、木村が未だに大友を恨んでいると考え、木村を抱き込んで大友を殺害しようとするが、逆に木村に部下達を殺害され捕まってしまう。ようやく石原と対面を果たした大友はピッチングマシンの前に椅子に縛った石原を置き、ピッチングを与え続ける拷問で殺害する。
さらに舟木の証言音声のCDが、山王会の幹部達にも送られたため、「親殺し」が知れ渡り、残った側近達も殺された加藤は最早力を失い、最後は花菱会の立ち会いで山王会と木村組の手打ちが決まった。加藤は引退に追い込まれ、古参幹部だった白山広(名高達男)が山王会三代目会長に、五味英二郎(光石研)が同じく三代目若頭に就任し、事実上山王会は花菱会の影響下に入った。
木村は自分の組に大友を誘うが、大友はヤクザの世界に戻るつもりはなかったため、すべての手柄を木村に譲った。花菱会も木村に対して、大友との関係を断つように命令したため、大友は張会長の下に戻り、韓国へと消える。数日後、大友は密かに日本に帰国すると、張会長の腹心である李(白竜)と協力してパチンコ店で待ち伏せし、一人寂しくパチンコを打つ日々を送る加藤をナイフで刺殺し、山王会への復讐を完了させる。
一方、警察では山王会の代わりに花菱会が台頭しただけだとして、片岡の責任が追及され始めていた。片岡は花菱会と木村の不安定な関係を利用し、再度大友を巻き込んで花菱会の力を削ごうとする。片岡は、加藤殺しを口実に木村組の組員を逮捕して事務所を手薄状態にした上で、加藤の元部下(四方堂亘)をリーダーとした数名をけしかけ、木村を殺害させる。さらに片岡は「大友が木村を殺害した」という噂を流しつつ、大友には「花菱会が木村を殺した」と吹き込む。片岡は木村の葬儀に現れた大友に、参列者の花菱会幹部らを襲撃するための拳銃を渡したが、全てを見抜いていた大友は片岡に向けて引金を引き、自らの手で葬り去る。
主要人物
主人公
- 大友(おおとも)
- 演 - ビートたけし
- 元大友組組長。
- 武闘派として知られた昔気質のヤクザ。前作の終盤で小沢率いる池元組との抗争に敗れ刑務所に逃げ込むも、先に服役していたかつての敵対者の木村に刺殺されたということになっていた。しかし、これは片岡が流したデマで、実は一命を取り留め刑務所の中で生きており、木村のことも黙っていた。過去の木村に対する仕打ちや武闘派故の行き過ぎた行為を反省し、模範囚として大人しく刑期を過ごしていたが、山王会の弱体化を狙う片岡によって早期の仮出所を受ける。出所後、以前より交流のあった張の元へ挨拶に向かうが、後に片岡の仲介で木村と再会し互いに相手への行為を謝罪して和解する。片岡から山王会相手にけじめを取るよう焚き付けられるが、大友本人は既にヤクザ稼業に対して嫌気がさしており、張の世話を受けて堅気の生活に戻ろうとしていた。その意思はかつて自分の部下だった石原秀人に差し向けられたヒットマンに腹部を撃たれて重傷を負った際も変わらなかったが、後に自分を助けてくれた木村の子分の嶋・小野が加藤を殺そうとして山王会幹部の舟木に返り討ちに遭い、惨殺されるに及んでついに山王会への復讐に乗り出すことを決意、木村と共に行動を開始する。
- 花菱会の助力を得た後は、木村と共に舟木の拷問を行ったり、石原を誘き出して殺害するなどして山王会への報復を行う。加藤の引退で一区切りついた後は木村からお互いに組を持たせてくれるという話(大友組の復活)を聞かされるも、抗争の手柄をすべて彼に譲って引退する。そのまま韓国へ向かったと思われていたが、ある日加藤がパチンコを打っているところに現れ、張の腹心の李と共に加藤を自らの手で刺殺し、山王会への復讐を果たした。ところが、この加藤殺しが原因で元の抗争相手である木村組に警察の手が入り、その直後の隙を狙って片岡にけしかけられた加藤の元側近が木村を殺害してしまう。その後、彼の葬儀の場に現れるが、待っていた片岡に暗に花菱会へ報復を行うよう唆される。しかし、一連の騒動の元凶が片岡だったことに既に気づいており、花菱会構成員を始末するためにと片岡から渡された拳銃で逆に片岡を射殺する。
木村一派
- 木村(きむら)
- 演 - 中野英雄
- 元村瀬組若頭。
- 前作で大友組との抗争に敗れ刑務所送りとなった男で、顔にかつて大友に切りつけられた大きな傷跡が残っている。「獄中で大友を刺殺した」という噂が流れていたが、大友は一命を取り留めた上に上層部に逆らえなかったことで顔を傷付けてしまった罪悪感から木村を庇って犯人を明かさなかったために、刑期延長の罰を受けず、既に出所している。義侠心に厚く、当時の大友の立場も理解して互いに謝罪し和解した後は、兄貴分として慕うようになる。前作では惨めな場面が多かったのに対し、今作では子分の死に激情を湧かせたり、大友と花菱会幹部の中田の間の一触即発の状況下で自ら小指を食いちぎって詰め、収めるなど、漢気を見せる場面が多い。
- 大友よりひと足早く出所し、堅気としてバッティングセンターを経営し、かつての兄弟分(村瀬組組員)の遺児である嶋・小野を子分兼店員として面倒を見ていた。大友を抗争に引き込みたい片岡の策謀で、本当に復讐すべきだった相手は加藤だと教えられ、山王会と抗争をする意思を固める。一方で嶋・小野が大友を襲撃から守れなかった負い目から独断専行で石原の事務所に乗り込んで返り討ちに遭い、舟木たちに殺されるなどの悲劇にも見舞われる。花菱会とは若頭補佐の中田との旧交で交渉に挑むものの、花菱会側の思惑で破綻しかけたところを、自らの指を食いちぎってケジメをつけたことで場を収め、協力の約束を得る。大友と兄弟盃を交わした後は花菱会のヒットマンを率いて舟木と石原を殺害し、加藤を引退に追い込んで復讐を完遂すると、正式に木村組として出発することを決める。大友とは花菱会から破門しろと圧力をかけられたことと大友自身がヤクザに戻る気にならなかったことで表向きは関係を絶つが、その後も連絡は取り合っていたようで、事務所には嶋・小野の遺影とともに大友と交わした兄弟盃が飾られていた。しかし、花菱会や片岡の思惑に翻弄されることとなり、最期は片岡が仕向けた加藤の元部下達に暗殺される。
- 嶋(しま)
- 演 - 桐谷健太
- 小野(おの)
- 演 - 新井浩文
- 木村の子分。村瀬組組員の遺児である2人組の青年。木村が経営するバッティングセンターの店員として働いている。二人とも背中に刺青があり、嶋は拳銃を所持している。バッティングセンターで1000円程度で何時間も遊ぶ態度の悪い客に制裁した上でボックスの後ろに整列させて金を取り上げながら遊んだり、食べかけのカレーライスを片付けようとしたウェイトレスを怒鳴りつけるなど少々荒っぽい行動や言動が目立つが、山王会関係者のような理不尽な暴力は振るわない。
- 木村の命令で大友の警護を任される。大友から何度も帰るように言われるが、木村の言いつけに従い周辺で待機していた。しかし、大友に突き放されたことや任務を甘く考えていたことが災いし、山王会の刺客によって大友は腹部を撃たれてしまう。大友は彼らを責めなかったが、襲撃から守りきれなかった自責の念から加藤を暗殺しようと石原の事務所に向かうも、逆に舟木に拘束されて凄惨なリンチを受けて殺害され、遺体は頭に袋を被せられて鉄くず置場に放置された。
- 木村は彼らに厳しく接しつつも息子同然に可愛がっており、大友にとっても重傷の所を運び出してくれた命の恩人であった彼らの死は木村の復讐心を後押しすることになった。木村組設立後の事務所には、大友との兄弟盃と共に彼ら二人が笑顔で写った写真が飾られ、タバコが供えられていた。
山王会
関東最大規模を誇る巨大暴力団。
- 加藤 稔(かとう みのる)
- 演 - 三浦友和
- 山王会二代目会長。
- 前作『アウトレイジ』の終盤にて池元組を継ぐはずだった小沢と当時の会長である関内を謀殺し、小沢に関内殺しの罪を着せた上で山王会二代目会長に就任した。自分と同じく頭脳派であり、ビジネスに天賦の才を持つ元大友組の金庫番だった石原を右腕として重用し、組織を現代的なビジネスに主眼をおいた実力主義の体制に作り変えることで、山王会を政財界にも影響を及ぼすほどの強大な極道組織に育て上げた。その一方で、実力主義の名の下に古参幹部を差し置いて石原・舟木などの若手ばかりを重用する人事を行い、更に定例会議で食事を一切出さない[5]などの器量のなさで一部の側近を除いて山王会幹部からの人望は薄い。布施からも、四條会(名前のみ登場)との抗争を手打ちにした時も謝礼金として500万円しか持って来なかったとの事でケチと評されており「会長の器ではない」と内心で見限られている。
- 物語序盤では、先代から関係を持ち、密かに築いていた花菱会との協力関係から片岡の計画を見破り、裏切った古参幹部の富田を見せしめとして舟木に射殺させ、粛清する。ところが大友・木村の尋問によって舟木が関内の死の真相を白状してしまい、その尋問の様子が録音されたテープが花菱会会長の布施へと渡ったことで旗色が悪くなる。その際、布施から「テープを送ってきたのは石原」「一度人(大友)を裏切った奴は何度でも裏切る」と吹き込まれたことで疑心暗鬼に陥り、追い詰められた結果石原を木村に引き渡し見殺しにする。さらに花菱の陰謀によって関内殺しの事実を山王会幹部全員に暴露されてしまい、元々の人望の無さに加えて親殺しの疑惑が重なった結果、幹部たちの不信を買う。それでも「俺に弓引く奴は破門だ」と強気に出るも、幹部たちのほとんどが離反するという事態を招いてしまう。その後わずかに残った側近も城が率いる花菱会のヒットマンによってほぼ始末されてしまい、最終的に引退へと追い込まれ、会の金庫から全て持ち出した金も1週間で用意する様、迫られる事となった。
- 引退後は白山や五味に罵倒されるなど落ちぶれ、朝からパチンコ店に通う零落した日々を送っていたが、ある日パチンコ店で張会長の腹心である李と待ち伏せていた大友にナイフで刺殺されるという最期を遂げた。
- 石原 秀人(いしはら ひでと)
- 演 - 加瀬亮
- 山王会若頭。元大友組の金庫番。
- 前作で大友組を裏切り、最終的に山王会の金庫番にまで出世した若きインテリヤクザ。その後、加藤体制で頭角を現して、彼の側近として若頭にまで出世した。ビジネス能力は非常に高いものの器量は狭く、また前作と比べて口調が荒々しくなっており、直接の部下だけでなく山王会の古参の幹部すらも見下して怒鳴り散らすため、加藤以上に人望は薄い。自身が裏切った過去からかつての親分である大友を異常に恐れており、その生存を知って以降は恐怖と焦燥からヒステリックに取り乱すことが多くなる。
- 片岡の陰謀によって大友が復讐のために自分の命を狙っていると思い込み(実際にはこの時点では大友は復讐を考えていなかった)、ヒットマンを送って大友の殺害を狙うものの失敗。その後、大友と木村が山王会への報復へ動き出し、側近の舟木や岡本らが始末されたことで追い詰められ、精神が不安定になっていく。あくまで木村は大友を恨んでいるものと勘違いし、木村と協力して大友を殺そうと企むが、既に大友と和解していた木村によって部下を皆殺しにされ、自身は生け捕りにされる。その後、対面した大友に失禁しながら命乞いを行うが、最期はピッチングマシンの前に椅子に縛り付けられた状態で放置され、高速の軟球を顔面に当て続けられて死亡した。この時の大友の決め台詞は「野球やろっか」。
- 舟木 昌志(ふなき まさし)
- 演 - 田中哲司
- 山王会幹部。元関内のボディーガード。
- 石原に次ぐ山王会の事実上ナンバー3。寡黙な武闘派で実働を担うことが多く、加藤の側近として裏切り者の粛清などを行う。元々は関内のボディーガードで、加藤の関内殺しを目撃したため、その口止めとして幹部のポストやシマを得る等、大出世を遂げる。加藤と石原に忠誠を誓う数少ない存在。
- 物語前半では富田の粛清のほか、討ち入りに来た嶋・小野を返り討ちにして惨殺するなど、武闘派として活躍する。しかし、暗殺された関内のボディガードの役目を果たせなかったにもかかわらず幹部として重用されていることなどの出世の経緯の怪しさから加藤の弱みを知っていると狙いをつけられ、大友らに拉致される。捕まった当初は木村から拷問を受けても報復を仄めかすなど強気だったが、部下が黒いビニール袋を被せられ電気ドリルで顔面を穿たれる様を見せつけられると吐かなければ自分も同じ目に遭うと思い、一転して命乞いを始め、加藤の関内殺しを白状する。その後の生死は不明だが、山王会でも既に死亡しているものと見なされていた。
- 富田(とみた)
- 演 - 中尾彬
- 山王会幹部。
- 加藤体制に不満を持つ古参幹部の一人。長年に渡って組に貢献し、幹部の中でも実力者のようだが、現代的な金銭取引には疎く石原からは見下されている。関内のボディガードだったにもかかわらず、先代を守れなかった舟木が幹部登用されたことから、加藤と舟木が関内を殺害したのではないかと疑っている。花菱会若頭の西野一雄と兄弟分であることから片岡に目をつけられ、加藤への叛心を焚き付けられる。花菱会の助力を得た上で、同じく山王会の古参幹部で加藤に不満を持つ兄弟分の白山・五味と共に加藤の追い落としを狙うも、人望を感じない富田の力量に疑問を持った花菱会会長の布施に裏切られた上、白山・五味からも見放される。最期は立場を悪くしたことから加藤・石原に土下座して命乞いをするも、舟木に射殺された。
- 白山 広(しろやま ひろし)
- 演 - 名高達男
- 山王会幹部。後に三代目山王会会長。
- 加藤体制に不満を持つ古参幹部の一人。富田・五味とは兄弟分。幹部会で石原から富田共々罵倒されるなど扱いが悪い事に加え、石原が絵図を書いた物語冒頭の山本殺しで、自身の若衆を身代わりとして警察に出頭させるよう命令されるなど[6]、現行体制に強い不満を持つ。富田の裏切り計画に乗るそぶりを見せつつも、片岡の甘言は跳ね除け、一歩引いた立ち位置を堅持し、計画が加藤に露見すると、あっさりと富田を見捨てる。しかし、富田を見殺しにしたことは彼の中で後味のよく無いものを残したようで、西野から富田の名を聞いた際には表情を曇らせていた。
- 物語中盤で石原の八つ当たりに近い人事処分を下されるにあたって、ついに加藤・石原を見限り、花菱会若頭の西野の助力を得る。その後、幹部らを糾合して加藤を引退に追い込むと三代目会長の座についた。終盤、木村組が山王会のシマに進出してきたと報告を受けるも、これを花菱会の罠と感じ取り、静観の構えを取った。
- 五味 英二郎(ごみ えいじろう)
- 演 - 光石研
- 山王会幹部。
- 加藤体制に不満を持つ古参幹部の一人。富田・白山広とは兄弟分。姑息な小心者で自らに責任と危険が及ばないように立ち回り、白山が口火を切ってから発言する。強い不満を覚えつつも加藤が健在時には低頭に接し、加藤が引退に追い込まれると痛罵する。
- 白山が会長の座に就くと、若頭となった。
- 岡本(おかもと)
- 演 - 菅田俊
- 山王会幹部。
- 富田らと異なり、石原に平身低頭に従う古参幹部の一人。はるかに年下の石原から手駒のように扱き使われも唯々諾々と従うことから、富田らから「ホモじゃねぇか?」と陰口を叩かれている。先物取引やヘッジファンドなど現代的ビジネスには心得があるようで石原からも認められている。石原の命令で大友の命を狙うが失敗し、激しく罵倒される。その後も大友の行方を追い続けるが、最期は城が率いる花菱のヒットマン集団によって組員共々殺害された。
花菱会
関西最大規模を誇る巨大暴力団。
- 布施(ふせ)
- 演 - 神山繁[7]
- 花菱会会長。
- 明朗快活な雰囲気を伴いつつ策謀を巡らす知略家。先代の山王会会長・関内とは兄弟分だったが、加藤が会長になった現在の山王会の腐敗ぶりには嫌気がさしており、早々に見限っていた。物語序盤、加藤の退陣を望む富田の相談に快く応じるが、本心では彼の旗色が悪いと見抜いており、撹乱の材料として何の感傷もなく見捨て、むしろ加藤に密告したことで彼の信用を得る。次に大友・木村の訪問を受けると、西野や中田とのやり取りを通して、2人には利用価値があると判断し、助力を決める(ただし、本来の目的であった盃は与えなかった)。加えて舟木の証言を使って加藤に揺さぶりをかけ、加藤と石原の信頼関係に致命的な亀裂を生み出すことに成功する(このことがきっかけで石原は大友の手に落ち、惨殺されることになる)。
- 最終的に加藤を失脚に追い込み、新たに山王会会長となった白山に多大な恩を売ることで、実質的に山王会に大きな影響力を持つに至り、花菱会の影響力拡大に成功する。
- 西野 一雄(にしの かずお)
- 演 - 西田敏行
- 花菱会若頭。
- 富田と兄弟盃を交わしており、山王会の内情に詳しい。飄然と構えながらも会長に畏敬の念を持たない人間には一切容赦しない。加藤による関内殺しの噂を聞きつけ、それを利用して山王会を弱体化させるべく中田と共に暗躍する。花菱会による山王会への介入以降は実働部分を担い、白山を新会長に据え、後見人として影響力を確保する。
- 中田 勝久(なかた かつひさ)
- 演 - 塩見三省
- 花菱会若頭補佐。
- 木村と面識を持つ武闘派。加藤の関内殺しに関する噂を探るため、山王会を恨む木村を利用する策を思い立つ。当初は木村に対して気にかける様な様子を見せていたが、木村が大友と共に盃を貰いに来た途端に態度を翻して恫喝し、交渉を有利に進めようとする。建前上は筋を通すことにこだわるように見せる一方で冷酷さとしたたかさを持ち、表向きは善意で誘ったはずの木村に最後まで慈悲をかけなかった。
- 城
- 演 - 高橋克典
- 花菱会組員。
- 組織犯罪の最暗部である殺しを淡々・黙々[8]かつ、的確にこなすプロフェッショナル。
- 西野・中田の部下の中から顔の判明していないヒットマン集団を率い、山王会組員を次々と葬り去った。
警視庁組織犯罪対策部(マル暴)
- 片岡(かたおか)
- 演 - 小日向文世
- 暴力団対策部所属刑事。大友の大学時代のボクシング部の後輩。本作の元凶。
- ヤクザを食い物にする悪徳刑事。前作で出世して前線から離れていたが、山本が殺害され、政界にも影響力を及ぼし始めた山王会を危惧した警察上層部の判断で引き戻される。最初は富田を利用して山王会と花菱会の間に抗争を起こし、共倒れさせる計画を立てるものの、布施によって計画が加藤へ露見したことで失敗する。加藤と石原の心象を損ねたことで立場を悪くするが、次善の策として大友と木村を山王会へ嗾ける策を思いつき、大友を仮出所させ木村と和解させたり、大友を装って石原の事務所を銃撃するなどして、2人が山王会と戦争を起こすきっかけを作った。その結果、花菱の助力を得た大友と木村によって山王会がほぼ壊滅状態となったものの、一方で花菱会の影響力増大を招き、そのことについて警察上層部から責任を追及される。そのため、今度は花菱会の影響力を削ぐべく、木村を謀殺して花菱の仕業に見せかけることで、大友に花菱に対する復讐をさせようとする。そして木村の葬儀の場で、花菱会の幹部らがいることを大友に告げ拳銃を渡すも、既に一連の騒動の黒幕が片岡であることに気づいていた大友に射殺される。
- 繁田(しげた)
- 演 - 松重豊
- 片岡の部下。
- 実直な刑事で、ヤクザに対して強い反感を持っている。片岡の部下として行動を共にするが、ヤクザと普通につるむ彼の汚職警官としての一面を知っており、悪辣な計画に不満を隠さない。一方で繁田本人も、取り調べ中の被疑者の頭を灰皿で叩いたり、刑事を侮る発言をした小野に蹴りを入れるなど、清廉潔白な人物とは言い難い。最終的に木村の死の真相に気づいて片岡を非難し、袂を分かつ。なお、この時片岡から「お前も出世できたのに」と皮肉を言われるが、本人は「一生ヒラでいい」と一蹴して、木村の葬儀の場から離れていった。
- 山本(やまもと)
- 演 - 貴山侑哉
- 片岡の元部下で後任[9]。
- 前作の最後に出世する片岡の後任として山王会担当となった刑事。片岡同様にヤクザに便宜を図って見返りをもらう悪徳刑事だったが、石原曰く、女のことで失敗して金が必要になったことから、山王会に対する要求がエスカレートしたため、石原の命令で殺害される。物語は車ごと海に沈められた彼の遺体が引き上げられるところから始まる。
張グループ
- 張 大成(チャン・テソン)
- 演 - 金田時男
- 日本と韓国を股にかける大物フィクサー。
- 戦後の上野の闇市を10代の若さで取り仕切って成り上がった過去を持つ伝説の男で、上野出身の縁で古くから大友と親しい。刑務所から出所した大友を匿い、身辺の世話をする。日本語と韓国語に堪能。穏やかな性格で、行き場のない大友に自身のグループに入る事を勧めたり、大阪へ向かう大友と木村に対して利用されないよう気にかけるなど、今作で唯一、最後まで大友と木村の味方であった人物。
- 演じている金田は俳優ではなく実業家で、監督のたけしとは友人同士である。
- 李(リー)
- 演 - 白竜
- 張の腹心。刑務所から出所した大友を出迎える。山王会会長の座を追われた加藤を大友が殺害する際に悲鳴を上げない様、後ろから口を抑え込む形で協力する。
- ^ 2012年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ ビートたけし:24年ぶり「いいとも」テレフォンショッキング出演毎日新聞 2012年9月28日
- ^ 北野映画史上初!『アウトレイジ』続編、堂々の第1位スタート!シネマトゥデイ 2012年10月9日
- ^ 劇中では国土交通省の大臣を美人局に掛けて、弱味を握っていた。
- ^ これが会議後に幹部達が会食の場で加藤への不満を漏らす悪循環を生むことになる。
- ^ その若衆には実際に妻子がおり、そんな彼を理不尽に不幸にしたのも許せない理由だった。
- ^ 神山は2017年1月に亡くなり、本作品が最後の映画出演となった。
- ^ 実際にセリフは皆無だった。
- ^ 繁田が敬称をつけて呼んだことから彼より先輩だったことがわかる描写がある。
- ^ 韓国名・金時鐘(詩人の金時鐘とは別人)。北野武と旧知の実業家(「統一日報」会長)であり、本職の俳優ではない。CINEMA VIEW アウトレイジ ビヨンド(日本)全員悪役。飛び交う怒号 統一日報 2012年10月31日
上記記事のアーカイブ
https://archive.fo/QJEVg - ^ 西田敏行、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文、塩見三省、中尾彬、神山繁の12名。
- ^ “第22回東京スポーツ映画大賞”. 東京スポーツ. (2013年1月26日) 2013年1月29日閲覧。
- ^ “悪人全員受賞!「アウトレイジ ビヨンド」が東京スポ映画大賞で3冠に”. 映画.com. (2013年1月28日) 2013年1月29日閲覧。
- ^ “毎日映画コンクール 第67回(2012年)”. 毎日新聞社 (2013年1月18日). 2020年6月6日閲覧。
- ^ https://web.archive.org/web/20171129032312/http://www.hochi.co.jp/entertainment/20171129-OHT1T50063.html
- ^ “極悪人たちに学ぶ劇場マナー!『アウトレイジ ビヨンド』特別映像が公開”. MOVIE COLLECTION. (2012年10月3日) 2017年10月23日閲覧。
- ^ “松村邦洋「アウトレイジ-」ものまね連発!”. サンケイスポーツ. (2013年4月1日). オリジナルの2013年5月8日時点におけるアーカイブ。 2013年4月22日閲覧。
- アウトレイジ ビヨンドのページへのリンク