ちはや (潜水艦救難艦・2代) ちはや (潜水艦救難艦・2代)の概要

ちはや (潜水艦救難艦・2代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 01:53 UTC 版)

ちはや
基本情報
建造所 三井造船 玉野事業所
運用者  海上自衛隊
艦種 潜水艦救難艦
級名 ちはや型潜水艦救難艦
前級 ちよだ (潜水艦救難母艦)
次級 ちよだ (潜水艦救難艦)
母港
所属 潜水艦隊第1潜水隊群
艦歴
計画 平成8年度計画
発注 1996年
起工 1997年10月13日
進水 1998年10月8日
就役 2000年3月23日
要目
基準排水量 5,450 t
満載排水量 6,900 t
全長 128.0 m
最大幅 20.0 m
深さ 9.0 m
吃水 5.1 m
主機 三井造船12V42M-Aディーゼルエンジン×2基
推進
出力 19,500 PS
速力 21 kt[1]
航続距離 6,000海里 (13 kt巡航時)[2]
乗員 125名
搭載艇
  • 深海救難艇(DSRV)×1隻[3]
  • 11メートル作業艇×2隻
  • 無人潜水装置 (ROV)
搭載機 ヘリコプター甲板のみ
レーダー 航海用×2基
ソナー
その他
  • 深海潜水装置 (DDS)
  • 大気圧潜水装置
  • 自動艦位保持装置 (DPS)
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艦名は千早城に由来し、この名を受け継いだ日本の艦艇としては4代目である。

設計

左前方から見た「ちはや」。水面下にバルバス・バウが見える。

老朽化していた「ふしみ」(46ASR)の代替艦として建造された[3]。設計面では、潜水艦救難母艦「ちよだ」(56AS)の拡大改良型とされており、潜水艦母艦機能を廃する一方で医療設備を強化している[1]

DSRV運用のため、船体中央部にムーンプール(センターウェル)を備えるという基本構成は56ASと同様だが、船首楼は艦橋構造物付近まで延長され、基準排水量にして1,800トン大型化している。これによって、従来は暴露部に格納されていた装備も艦内に収容できるようになった。また遭難現場へ迅速に進出できるよう高速巡航能力に意が払われており、造波抵抗低減のためバルバス・バウが採用されているほか、センターウェル下部には艦底閉鎖装置が設けられている[1]。これは2分割した閉鎖板を油圧によって開閉する方式であり、スライド式や内開き式などの構造も検討されたが、救難という任務に求められる確実性から、外開きによる左右舷観音開き方式が採用された[4]

主機関としては三井造船12V42M-Aディーゼルエンジン2基を備えている。これは「ちよだ」で主機関とされた直列8気筒機関と同系列だが、V型12気筒とすることで出力を増強したものであった。推進器としては、可変ピッチ・プロペラ2軸のほか、艦首と艦尾にサイドスラスターを2基ずつ備えている。これらは、「ちよだ」と同様に艦位保持装置(Dynamic Positioning System, DPS)を装備しており、洋上の一点に静止することが可能である[1]

能力

艦橋の直後には、半甲板上げて救難指揮所(RIC)が設けられている[1]

潜水艇・潜水機運用機能

上部構造物後方に深海救難艇(DSRV)の格納庫を設け、その後方の船体中央部のムーンプール(センターウェル)から発進・収容するという基本的な構成は「ちよだ(AS-405)」と同様である。DSRV揚降装置も基本的に同構成であるが、「ちよだ」では油圧であったのに対し、本艦では相当部分を電動に変更して、整備性を向上させている[5]

「ちよだ」との最大の変更点は、DSRVの発進・収容方向の変更である。「ちよだ」では、収容時のDSRVの艇首方向を母艦と一致させ、艦首側に向けて発進し、艦尾側から進入し揚収する方式としていたが、これでは母艦のプロペラ雑音や気泡のためにソナーが影響され、揚収時のDSRVの位置把握や通信を妨げるという問題があった。このため、本艦の搭載艇(09DSRV)では艦尾側に向けて発進し、艦首側から進入する方式としており、艇首を母艦の艦尾側に向けて収容されることになっている。09DSRVの主用目は56ASの搭載艇(57DSRV)とほぼ同様である(排水量約40トン、全長12.4メートル、幅3.2メートル)[4]が、充電池補充などの支援位置が異なるなどの為、両艦のDSRVに互換性はない。そのため、DSRVはLCACと異なり「母艦の搭載艇」扱いである。

DSRVの活動を支援するため、無人潜水装置(ROV)も搭載した。これは「ちよだ」にはなかった装備で、左舷中部に搭載されており、空中重量3トン、速度3ノット、最大潜航深度2,000メートルで、水中作業のためマニピュレーター2基を備えている[1]

潜水作業支援機能

「ちよだ」と同様に、深海潜水装置(DDS)も搭載した。これは、遭難潜水艦へのDSRVメイティングの支援などのために飽和潜水で潜水士を進出させることを想定したものであるが、また同時に、遭難潜水艦が浸水して、乗員が高圧に曝露されていた場合、飽和潜水の技法を用いた減圧を行ったり、減圧症の治療を行うためでもある。大型の再圧チェンバーである艦上減圧室(Deck Decompression Chamber, DDC)と、これと連結できる潜水球である人員輸送カプセル(Personnel Transfer Capsule, PTC)1基によって構成されているが、「ちよだ」ではDDCを左右舷に独立させていたため、大重量のDSRV(40トン)やPTC(13トン)を艦上で左右に移動させてメイティングする必要があり、艦の動揺の影響が大きかったのに対して、本艦のDDC室は船体中心線に対して「コの字」型に配置することで、メイティング位置を船体中心線上としたことで、この問題を解決している[4]

上記の通り、本艦の特徴の1つが医療機能の充実であり、手術室X線撮影室が新設された。医療区画はDDC室とのアクセスを考慮して、艦中央部付近の第1甲板上、PTC格納所後方に配置した。また本艦は、救助した潜水艦乗員のために80名分の居住区を確保しているが、ここは病室への転用が考慮されており、医療区画の近傍に配置されている[4]

艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、MH-53Eの運用に対応している[4]


  1. ^ a b c d e f g 海人社 2006, pp. 92–95.
  2. ^ Wertheim 2013, p. 377.
  3. ^ a b c 朝雲新聞社 2006, p. 266.
  4. ^ a b c d e 後藤 1999.
  5. ^ 海人社 2004, p. 204.
  6. ^ 潜水艦救難艦「ちはや」 平成14年度防衛白書
  7. ^ 「えひめ丸」衝突事故の概要 平成14年2月28日 外務省
  8. ^ 小松基地所属F-15戦闘機の航跡消失について 令和4年1月31日 航空幕僚監部 (PDF)
  9. ^ 小松基地所属F-15戦闘機の航跡消失について(第2報) 令和4年1月31日 航空幕僚監部 (PDF)
  10. ^ “小松のF15墜落 2人不明、機体一部発見 基地沖5キロ、離陸直後”. 北國新聞. (2022年2月1日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/648297 2022年2月6日閲覧。 
  11. ^ “小松基地から離陸したF-15DJアグレッサー、捜索続く”. FlyTeam. (2022年2月1日). https://flyteam.jp/news/article/135656 2022年2月6日閲覧。 
  12. ^ 海上保安新聞”. (公財)海上保安協会公式ツイッター(2022年2月1日). 2022年2月6日閲覧。
  13. ^ “〈写真特集〉不明のF15戦闘機、乗員2人の捜索続く”. 北國新聞. (2022年2月3日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/650700 2022年2月6日閲覧。 
  14. ^ “捜索範囲内灘まで拡大 小松基地F15墜落 白山の海岸、機体の一部回収”. 北國新聞. (2022年2月4日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/651362 2022年2月6日閲覧。 
  15. ^ “【F15墜落】雪の海、乗員2人の捜索続く 7日で発生1週間”. 北國新聞. (2022年2月6日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/653039 2022年2月6日閲覧。 
  16. ^ “陸自ヘリ事故 目撃情報あった海上で発見物なし 防衛省、捜索作業に潜水艦救難艦「ちはや」を投入”. 琉球新報. (2023年4月9日). https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1691776.html 2023年4月14日閲覧。 
  17. ^ “陸自ヘリ捜索、レーダー消失周辺を重点的に…潜水艦救難艦「ちはや」や掃海艇投入”. 琉球新報. (2023年4月10日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20230410-OYT1T50247/ 2023年4月14日閲覧。 


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