ノロウィルス
英語:norovirus
感染性胃腸炎の原因となるウィルス。感染すると激しい腹痛と共に嘔吐・下痢の症状を引き起こす。下痢便や吐瀉物が乾燥して微量の塵となり、空気中に飛散することで、空気感染する。
ノロウィルスに罹患すると急激な下痢・嘔吐に襲われ、2日前後続くが、その後は回復に向かう。普通は後遺症も残らない。長期間の激しい下痢によって脱水症状に陥ったり、体力を消耗したりする場合があるため注意が必要となる。
ノロウィルスは、特別な治療を行わなくても回復するが、他方で効果的な抗ウィルス薬も発見されていない。
ノロウィルスと同様に感染性の胃腸炎を引き起こすウィルスをとして、ロタウィルスも知られている。
関連サイト:
ノロウイルスに関するQ&A - 厚生労働省
ノロウイルス感染症 - 愛媛県立衛生環境研究所
ノロウイルス【Norovirus】
ノロウイルス
<特徴>手指や食品などを介して感染し、おう吐、下痢、腹痛などを起こす。ノロウイルスによる食中毒事例では、原因食品の判明していないものが多く、その中には食品取扱者を介して二次的に食品が汚染されることが多いのも特徴。その他の原因としては、貝類(二枚貝)がある。少量のウイルスでも発症し、通常の殺菌・消毒に使用されるアルコールなどはあまり効果がない。
<食中毒症状>潜伏期は 24~48 時間。主症状は、下痢、嘔吐、吐き気、腹痛、38 ℃以下の発熱。
<過去の食中毒原因食品>貝類(二枚貝等)。調理従業者からの二次汚染によるサンドイ ッチなど。感染事例は近年増加傾向にあり、食品を原因とするものに加え、食品を介さない感染(ヒト―ヒト感染)も報告されている。
<対策>二枚貝は中心部まで充分に加熱する(85 ℃、1 分以上)。野菜などの生鮮食品は充分に洗浄する。手指をよく洗浄する。食品を取り扱う際は十分に注意し、手洗いを徹底する。調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 200 ppm)で浸すように拭くか、あるいは熱湯(85 ℃以上) で1分以上の加熱が有効。
ノロウイルス
(Norovirus から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 04:50 UTC 版)
ノロウイルス(英語: Norovirus)は、もっとも一般的な胃腸炎の原因である[1][6]。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛が特徴である[2][3]。発熱や頭痛も発生する可能性がある[2]。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である[2]。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある[2]。ノロウイルス属による集団感染は世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生している。「NV」や「NoV」と略される。俗称は「冬の嘔吐虫(Winter vomiting bug)」[1]。
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