遺族補償年金・遺族年金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:21 UTC 版)
「労働者災害補償保険」の記事における「遺族補償年金・遺族年金」の解説
業務災害又は通勤災害により労働者が死亡した場合、遺族(労働者の収入によって生計を維持していた(労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りる。したがって共稼ぎ等もこれに含まれる。昭和41年1月31日基発73号)受給資格者のうち最先順位者が受給権者となる)に年金、遺族(補償)年金の支給対象となる遺族がいない場合(受給権者の権利が消滅した場合を含む)は一時金が支給される(第12条の8第2項)。 対象となる遺族(受給資格者)の順位は次のとおりである。ここでいう「障害の状態」とは、労働者の死亡当時に障害等級5級以上または傷病が治らないで身体の機能もしくは精神に労働が高度の制限を受けるか、もしくは労働に高度の制限を加えることを必要とする程度以上の状態をいう。遺族(補償)年金・遺族補償一時金を受ける権利を有する者が2人以上あるときは、これらの者は、そのうち1人を、遺族補償年金の請求及び受領についての代表者に選任しなければならない。ただし、世帯を異にする等やむをえない事情のため代表者を選任することができないときは、この限りでない(規則第15条の5、第16条、第18条の9)。 配偶者(妻は年齢等の要件なし。夫は60歳以上又は障害の状態にあること) 子(18歳の年度末までの間にあるか、障害の状態にあること)労働者の死亡当時胎児であった者が出生した場合は、将来に向かってその子は労働者の死亡当時にその収入によって生計を維持していた子とみなされるが、障害の状態で出生したとしても障害の状態にあったものとはみなされない。なおこのとき、胎児の母が労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していたかどうかは問われない。 遺族基礎年金、遺族厚生年金とは異なり、「現に婚姻をしていないこと」は要件とされていない。したがって既婚者であってもその他の要件を満たす限り受給権者となる(孫、兄弟姉妹も同様)。 父母(60歳以上又は障害の状態にあること) 孫(18歳の年度末までの間にあるか、障害の状態にあること) 祖父母(60歳以上又は障害の状態にあること) 兄弟姉妹(18歳の年度末までの間にあるか、60歳以上又は障害の状態にあること) 上記太字の者(55歳以上60歳未満の者で障害の状態にないもの。ただし受給権者となっても60歳に達する月までの間は支給が停止される(若年支給停止)また60歳になっても順位は繰り上がらない) 18歳の年度末までにある子・孫・兄弟姉妹は18歳の年度末に、障害の状態にあるものはその事情がなくなった場合に、受給権は消滅する(失権)。なお労働者の死亡当時に18歳の年度末までにある子・孫・兄弟姉妹が障害の状態にあった場合、子・孫・兄弟姉妹が18歳の年度末に達してもその事情がなくならない限り失権しない。 年金額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている受給資格者(若年支給停止者を除く)の人数により、1人の場合は給付基礎日額の153日分(55歳以上又は障害の状態にある妻については175日分)、2人の場合は201日分、3人の場合は223日分、4人以上の場合は245日分である。平成28年1月からは、遺族(補償)年金の申請には、申請者の個人番号の記載が必要である。 遺族の数に増減を生じたときは、その翌月から年金額が改定される。遺族(補償)年金を受けている者が老齢厚生年金を受けるようになっても年金額は減額されない。受給権者が死亡、婚姻等により失権した場合、後順位者がいれば次順位者に支給される(転給)。また、労働者の死亡当時に遺族(補償)年金の受給資格者がないときは、所定の受給権者(生計を維持していない配偶者等)に給付基礎日額の1000日分の遺族(補償)一時金が支給される。遺族(補償)年金の受給権者が失権した場合において既に受給した遺族(補償)年金が給付基礎日額の1000日分に満たない場合はその差額が所定の受給権者に遺族(補償)一時金として支給される。 当分の間、年金を受ける権利を有する遺族(若年停止者を含む)は、請求により1回に限り遺族(補償)年金前払一時金の支給を受けることができる(附則第60条)。前払一時金支給額は、給付基礎日額の200〜1000日分の範囲で受給権者が選択する。この請求は、年金の支給決定通知日の翌日から起算して1年以内に行わなければならない。 遺族補償年金・遺族年金は、労働者の死亡の日の翌日から起算して5年(前払一時金は2年)の時効にかかる(第42条)。 その他、社会復帰促進等事業としての遺族特別支給金、遺族特別年金(一時金)がある(後述)。なお労働者が平成28年3月26日までに石綿による業務上の疾病により死亡した場合、石綿救済法により、要件を満たせば平成34年3月27日までに請求することにより、死亡から5年経過後であっても遺族特別支給金が支給される。
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