過酸化アセトンとは? わかりやすく解説

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TATP

別名:過酸化アセトン、トリアセトントリペルオキシド
英語:acetone peroxide

過酸化水素水アセトン塩酸硫酸などによって生成される有機過酸化物

TATPは、炎や熱などを加えることで爆発するという特徴がある。また、衝撃によっても爆発する。TATPの成分入手比較的容易で、テロ使用されることもある。過去には、2005年ロンドン同時多発テロ2015年パリ同時多発テロ用いられとされる

かさんか‐アセトン〔クワサンクワ‐〕【過酸化アセトン】

読み方:かさんかあせとん

アセトン過酸化物。ふつう三量体であるトリアセトントリペルオキシドTATP化学式C9H18O6)を指す。高性能爆薬として知られアセトンのほか、過酸化水素水塩酸硫酸などの容易に入手可能な物質から製造できる


過酸化アセトン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 22:49 UTC 版)

過酸化アセトン
識別情報
CAS登録番号 17088-37-8
PubChem 536100
ChemSpider 3582942 
E番号 E929 (その他)
特性
化学式 C6H12O4 (dimer)
C9H18O6 (trimer)
モル質量 148.157 g/mol (dimer)
222.24 g/mol (trimer)
外観 白色結晶固体
融点

91 °C, 364 K, 196 °F

沸点

97–160 °C

への溶解度 不溶
危険性
主な危険性 爆発性
爆発性
衝撃感度 非常に高い / 湿気で低下
摩擦感度 非常に高い / 湿気で低下
爆速 5300 m/s
17,384 ft/s
3.29 miles per second
RE係数 .83
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

過酸化アセトン(かさんかアセトン、acetone peroxide)は有機過酸化物の一種。高性能爆薬として使用される。

一般的にジメチルジオキシランの三量体であるトリアセトントリペルオキシド(略称TATP化学式 C9H18O6)を示す場合が多いが、広義には二量体や四量体の混合物をいう。

特徴

アセトン過酸化水素水塩酸硫酸などの物質から製造できる爆薬である。このため、アマチュア化学者や爆弾マニアによって合成されて事故が起こったり、時にはテロリストによって製造・使用されることがある。2005年のロンドン同時爆破事件や、2015年11月13日パリ同時多発テロ事件、2016年3月22日ブリュッセル連続テロ事件などでも使用された。国内では2016年12月22日に自宅にて57グラムの過酸化アセトンを製造、2018年3月19日に名東区内の公園でこれを所持するなどした疑いにより、愛知県警捜査1課が2018年8月20日に爆発物取締罰則違反(製造、所持)などの容疑で名古屋市内の19歳の大学生を逮捕している[1][2]。簡単に作ることができ、殺傷能力の高い過酸化アセトンは、別名「サタン(魔王)の母」とも呼ばれる[3]

過酸化アセトン(以下、略称AP)はアマチュア爆弾愛好家により雷管信管)として使用されることがある。APは、衝撃、炎、熱などを加えられると容易に爆発する。爆発させる時、少量でしかも非密閉下における場合の爆発は大きな炎の塊になるだけである(爆燃)。しかし、密閉下か、多量に存在した場合は炎を一切出さず、爆発する(爆轟)。威力はトラウズル値TNTの70-80%ほどである。

過酸化アセトンにはいくつかの種類がある。二過酸化物(二量体)、三過酸化物(三量体)、そして四過酸化物(四量体)である。一般に低温の方が四過酸化物を生成しやすい。

製法

過酸化水素とアセトンとが酸触媒の存在下で反応すると、ケタールあるいはヘミケタールである過酸化アセトンは容易に生成する。このとき、単量体(ヘミアセタール体)はさらに過酸化水素あるいは他の過酸化アセトンとアセタール体を形成するので反応溶液中ではジヒドロペルオキシプロパンや過酸化アセトンのオリゴマーの平衡混合物として存在する[4]。特に三量体は結晶性が良いために結晶(純物質)として単離しやすい。また結晶性が良いために、生成した結晶をそれとは知らず不用意に取り扱うことで過去にも実験室で爆発事故を起こし指肢の切断や失明などの重大事故を数多く招いている。結晶として単離しなくても室温のカラムクロマトグラフ管の中で濃縮されて爆発した例すら存在する。

反応

二量体および三量体の環状過酸化アセトンはメタノールあるいはベンゼン溶液中で熱分解ないしは光分解して、単環アルカンラクトンなどを生成する[5]。通常、過酸化アセトンの光分解または熱分解はO-O結合が切断されるかC-C結合が切断されて分解する。酸または塩基が共存する条件での熱分解は主にO-O結合が解裂する。過酸化アセトンの重合体は、ヨウ化水素酸、酸性条件下の亜鉛またはスズ還元、触媒による水素化反応、水素化アルミニウムリチウムや還元試薬に対してジアルキルペルオキシド類に比べて容易に還元されると考えられる[6]

用途

稀に小麦粉の漂白剤として食品添加物に使用される

他の有機過酸化物

類似化合物には、メチルエチルケトンペルオキシド (MEKPO) などのケトン過酸化物、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン (HMTD) や過酸化ベンゾイル (BPO) などの有機過酸化物がある。特にHMTDは過酸化アセトンの代用として用いられることがある。

関連項目

外部リンク

脚注

  1. ^ 「高性能爆薬「悪魔の母」製造容疑」 ロイター 2018年8月20日 7:25
  2. ^ 高い殺傷能力の過酸化アセトン製造か 大学生逮捕 NHK NEWS WEB 2018年8月20日 18時04分
  3. ^ ISが好んで使う自家製の爆薬「TATP」”. 朝日新聞 (2016年3月24日). 2016年3月24日閲覧。
  4. ^ Milas, N. A.; Golubovic, A. J. Am. Chem. Soc., 1959, 81, 5824.; Barton and Ollis, Comprehensive Organic Chemistry, 1, 936.
  5. ^ P.R. Story, D.D. Densom, C.E. Bishop, B.C. Clark and J.C. Farine, J Am. Chem. Soc., 1968, 90, 817.; Barton and Ollis, Comprehensive Organic Chemistry, 1, 937.
  6. ^ Barton and Ollis, Comprehensive Organic Chemistry, 1, 937.

過酸化アセトン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 13:56 UTC 版)

火薬」の記事における「過酸化アセトン」の解説

過酸化アセトン(かさんかあせとんAcetone Peroxide)は有機過酸化物1種高性能爆薬として使用される過酸化水素水日本ではオキシドールなどと呼ばれる)とアセトン触媒として塩酸もしくは硫酸)といった比較容易に手に入る材料製造可能かつ大掛かりな設備不要であることから、アマチュア科学者危険物マニアなどに密造されることが多い。日用品製造できる手軽さ秘匿性十分な威力併せ持つことからテロリスト悪用されることもあり、最近ではロンドン同時多発テロパリ同時多発テロ2016年ブリュッセル爆発事件使用された。

※この「過酸化アセトン」の解説は、「火薬」の解説の一部です。
「過酸化アセトン」を含む「火薬」の記事については、「火薬」の概要を参照ください。

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