葬儀
『お葬式』(伊丹十三) 中年男の佗助は、妻とともに俳優として東京で働いている。妻の父が急逝し、通夜・告別式を伊豆の別荘で行なうこととなる。初めての経験で、僧侶に渡す香典の額も相場がわからず、葬儀屋に教えてもらわねばならない。集まった親族の中には、納棺等の手順にあれこれ口をはさむ者がいる。佗助の愛人が「葬儀の手伝い」と称して現われたので、やむなく佗助は裏の林へ入って、立位で愛人と交わる。いろいろ大変な思いをしながら、どうやらこうやら葬儀万端を無事に済ませ、佗助夫婦は火葬の煙を感慨深く眺めた。
★2.葬儀の焼香。
『信長公記』(太田牛一)首巻 織田信長が10代後半の頃、父信秀が病死した。葬儀の席に現れた信長は、茶せん髪に結い、大刀・脇差を縄で巻き、袴なしの姿であった。彼は仏前に進むと、抹香をわしづかみにして投げかけ、帰って行った(弟・信行は肩衣に袴姿で、礼儀正しくふるまった)。参列者たちは信長を「大うつけ」と嘲った。ただ、筑紫から来た客僧1人が、「あれこそ国を持つ人よ」と言った。
『太陽の季節』(石原慎太郎) 英子は竜哉の子を妊娠し、中絶手術に失敗して死んだ。葬式に出かけた竜哉は、焼香しようとして、英子の遺影を見る。彼女の笑顔の中にある挑むような眼差しを見て、竜哉は知った。英子は死ぬことによって、一番残酷な復讐を竜哉にしたのだ。竜哉は香炉を写真に叩きつけ、「馬鹿野郎っ!」と叫ぶ。驚く参列者たちに、「貴方達には何もわかりゃしないんだ」と言い捨てて、竜哉は出て行った。
『狗張子』(釈了意)巻2-2「死して二人となること」 ある男が病死した時、死者と瓜二つの男がやって来て、死者の枕頭に坐して泣いた。すると死者が起き上がり、男とつかみ合い殴り合った。やがて2人はともに倒れ、どちらがどちらとも見分けがつかなかったので、同じ塚に埋められた〔*→〔自己視〕2aの『夢を食うもの』(小泉八雲)と類似する〕。
『古事記』上巻 天若日子が死んだ時、友人の阿遅志貴高日子根(アヂシキタカヒコネ)が弔いに来た。2人はよく似ていたので、遺族は「天若日子は生きていたのだ」と喜んで、彼に取りすがった。阿遅志貴高日子根は、「私は親友だから弔いに来たのだ。それなのに穢(きたない)い死人と間違えるとは」と怒り、喪屋を破壊して天に飛び去った〔*『日本書紀』巻2神代下・第9段本文・一書第1に類話〕。
『通夜』(つげ義春) 3人の盗賊が、一軒家に雨宿りを請う。老婆が「今、倅(せがれ)が死んだばかりじゃ」と言って断るが、3人は強引に上がり込む。彼らは退屈しのぎに、死体の足の裏や脇の下をくすぐり、さらに死体を蒲団から引きずり出し、抱いて踊る。やがて雨があがり、3人は家から出て行く。彼らは「愉快だったなあ」「あの死体め。必死だったぞ」「ババァめ。つまらぬ嘘をつくからさ」と笑い合う。
『金枝篇』(初版)第2章第2節 ビルマのカレン族は、葬列が家の傍を通り過ぎる時には、子供たちを特殊な紐で家の特定の場所に縛りつける。子供たちの魂が身体を離れて、葬列の遺体に入らないようにするためである。遺体が見えなくなるまで、子供たちは縛られたままでいる。
★6.陽気な葬儀。
『夢』(黒澤明)第8話「水車のある村」 「私(中年の男)」は水車の回る村を訪れ、103歳の老人から話を聞く。老人の初恋の女性が99歳で死に、今日は葬式だ。「よく生きてよく働いて、『ご苦労さん』と言われて死ぬのはめでたい」と老人は語る。その一方で、「生きるのは苦しいとか何とか言うけれど、それは人間の気取りでね。生きてるのはいいもんだよ」とも言う。男たちが棺をかついで、葬式の行列がやって来る。年配の男女が楽器をにぎやかに演奏し、若い娘たちが笑顔で踊る。子供たちが花びらをまく。
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