病原性クロストリジウム属菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/26 10:04 UTC 版)
「クロストリジウム属」の記事における「病原性クロストリジウム属菌」の解説
次のクロストリジウム属5種はヒトに対する病原性を有する。 C. botulinum(クロストリジウム・ボツリヌム) ボツリヌス菌。土壌中などの自然環境中に広く存在。ソーセージや真空パックの食品中や傷口内で、ボツリヌス中毒を引き起こすボツリヌストキシンを産生する。蜂蜜などにC. botulinumの芽胞が入り込んだ場合、1歳未満のヒト(乳児)に対するボツリヌス中毒(乳児ボツリヌス症)の感染源となる。その場合、最終的に乳児の呼吸関連の筋肉を麻痺させる。ある程度以上の年齢なら、他の細菌が消化器官に生息するようになりその細菌との競合にC. botulinumは生育速度の差で勝てないために、C. botulinumで汚染された蜂蜜を食べても問題はない。このような毒性の一方で、C. botulinumは商業上も利用されている。 C. tetani(クロストリジウム・テタニ) 破傷風菌。土壌中に芽胞の形で多く存在する。傷口から感染し、テタヌストキシンを産生して破傷風の原因になる。名前の由来は、破傷風が激しい痙攣を伴うことから、ギリシャ語で「筋肉の緊張」を意味する古代ギリシア語: τέτανοςおよび「伸びる」を意味するτείνεινである。 C. difficile(クロストリジウム・ディフィシル) ヒトや動物の腸内に生息。抗生物質に比較的抵抗性で、抗生物質大量投与時に、他の腸内細菌が死滅したときに過剰に増殖して(菌交代症)、偽膜性大腸炎[ 英: Clostridium difficile colitis ]の原因になる。 C. perfringens(クロストリジウム・パーフリンゲンス) ウェルシュ菌。以前ではC. welchiiと呼称されていた。ヒトや動物の腸内に生息する常在菌の一種だが、一部の菌種は毒素を産生して、食中毒の原因になる。また傷口に感染して、重篤なガス壊疽を起こす事もある。また、羊とヤギにおいては、エンテロトキセミア(過食症または髄様腎臓病)の原因となる。C. perfringensはまた、酵母の代替としてソルトライジングブレッド[ 英: salt rising bread ]の発酵に用いることができる。クロストリジウム属の中では例外的に、鞭毛を持たない。 C. sordellii(クロストリジウム・ソルデリ) 中絶後に非常にまれに致命的な感染症を引き起こす。2000年以降、年間一件未満で報告されている。また、中国料理の珍味のアナツバメの巣で見出されることがある。このため、アメリカ合衆国に輸出する前にアナツバメの巣は亜硫酸で殺菌処理される。 このほか、C. novyiやC. septicumなどのガス壊疽菌群は傷口に感染して、重篤なガス壊疽を起こす。ガス壊疽が発生した際に、外科的な切除、抗菌薬の投与に加えて、クロストリジウム属が偏性嫌気性であることを利用して高気圧酸素治療が試みられることもある。
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