世界的な評価、海外進出の頓挫の数々
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「内山高志」の記事における「世界的な評価、海外進出の頓挫の数々」の解説
『ノックアウト・ダイナマイト』の異名通りのハードパンチャーぶりに加えて豊富なアマチュア経験に裏打ちされた巧みな試合運びとディフェンス・テクニックにスピードを兼ね備え、世界王座の11度連続防衛に成功した。リングマガジンのパウンド・フォー・パウンドランキングにて、山中慎介に続いて日本人史上二人目となるランク入りを果たした。 しかし、その一方で日本国内だけでしか戦ったことがないため、海外のファンの間での知名度は低く、内山の名前を知っていても「ああ、日本からは決して出ていかない王者だろ」という認識にとどまった。内山本人は「ボクシングの聖地であるアメリカのラスベガスか、アジアのビッグマッチが開催される場所になってきた中国のマカオで試合がしたい」「メジャー4団体世界王座を統一するために他団体世界王者と対戦したい」「ニコラス・ウォータース、ミゲル・アンヘル・ガルシア、ユリオルキス・ガンボア、ワシル・ロマチェンコらアメリカを主戦場とするスター選手と対戦したい」と海外進出を希望する発言を度々繰り返したが、謙虚な人柄ゆえに海外進出のためのマッチメイクを強く自己主張することは少なく、所属するワタナベボクシングジムの渡辺均会長にマッチメイクを全権委任した。そのため、渡辺会長に対して「宝の持ち腐れだ」といったファンからの批判の声が後を絶たない。また、内山の防衛戦を中継してきたテレビ東京との放送日程の兼ね合いもアメリカ進出が実現しない一因となった(後述)。 2014年3月12日、世界的なボクシング・プロモーターであるトップランク社の社長ボブ・アラムは、5月17日にロサンゼルスで予定していたミゲル・アンヘル・ガルシア対ユリオルキス・ガンボア戦が、高額なファイトマネーをガンボアが要求したことによって交渉が決裂したことを発表すると共に、ガルシアの新たな対戦相手候補として内山の名前を挙げた。この試合の放映を予定するアメリカのボクシング中継の最大手テレビ局HBOはアメリカでの知名度が低い内山がガルシアの相手となることに難色を示しているものの、アラムは「ウチヤマはベリー、ベリー・グッドファイター。彼は4年間チャンピオンに君臨している。私は彼とガルシアの試合を実現させたい。おそらくマカオが候補地だ」、「私がプロモーターとして望むのはマイキーと、恐らくは世界一の130ポンド(スーパーフェザー級)であろう日本人王者との一戦だ。HBOが興味を持つかは知らない。彼らに聞いてくれ。マイキーは内山との試合を望んでいる。これに勝てば彼は世界中から最高の130ポンドだと認められるだろう。内山陣営は一週間後に私に会いにやって来る。彼らは戦いたがっているよ」とコメントした。ところが2014年4月15日にガルシアがトップランク社に対し、「2000年に設定された選手とプロモーターやマネジャーとの関係を規定する『モハメド・アリボクシング改革法』にトップランク社が違反している」と主張して契約の無効を訴える法廷訴訟を起こし、結局この裁判が決着する2016年4月まで丸2年間も試合ができなくなり、さらに訴訟が決着した後は階級をスーパーライト級に上げて復帰することを表明したため、内山との対戦は消滅した。 2015年5月7日、これまで内山はインタビューで海外進出を希望する発言こそしてきたものの、渡辺会長の立場を配慮して過去の防衛戦のマッチメイクは会長に全権委任してきたが、前日に世界王座10連続防衛に成功しての一夜明け会見にて、2桁防衛という区切りを迎えたのを機に渡辺会長に初めて海外進出させてほしいと直談判すると明言し、「海外で名前のある選手とやってみたい。この機会に会長とじっくり話すつもり。WBO王者ローマン・マルチネス、ニコラス・ウォータース、ユリオルキス・ガンボアなどとの見たことがない対戦カードがいい」とコメント。それを受けて渡辺会長も「今まで文句を言わず、試合を受け入れてくれた。海外でやるメリット、デメリットを説明し、希望を実現できる方向で動く」と秋頃の11度目の防衛戦での海外進出を目指すとコメントした。しかし、ワタナベジムはテレビ東京中継の元で内山の防衛戦をメインイベントとした大晦日興行を2011年から毎年開催しており、内山が秋に試合をすると日程的に大晦日への参戦は難しくなり、テレビ東京が難色を示したため、次戦は大晦日に国内開催となった。 2015年12月21日、大晦日の11度目の防衛戦を10日後に控えた公開練習にて、渡辺会長が「2016年の春にアメリカでニコラス・ウォータースとの対戦実現に向けて、ウォータースのプロモーターであるトップランク社と既に交渉を行っている」「今回の試合で怪我をしなければ決まるのではないか。可能性は高い」と明言。さらに、内山は2011年1月の3度目の防衛戦で右拳を負傷して以来、右の強打を全力で打つことが出来ないまま戦い続けてきたが、その右拳も2014年の年末に回復し、さらに長年苦しんできた左肘の怪我も2015年5月に手術を受けたことで痛みが消え、「どこにも痛みのない状態で戦えるのは5年ぶり」と内山がコメントしたことを受けて渡辺会長は「これまで内山の海外進出を躊躇していたのは怪我の影響。今回の試合で強さを証明して次の話に入りたい。態勢は整っている」と説明した。そして10日後に内山はほぼノーダメージの3回KO勝ちで11度目の防衛に成功。遂に海外進出を阻む障害は無くなった。 2016年1月15日、東京スポーツのインタビューにて渡辺会長は、2000年代~2010年代における世界のボクシング界最大のスーパースターであるマニー・パッキャオの引退試合が行われる2016年4月9日のトップランク社主催興行のセミファイナルで内山vsウォータース戦が行われるという破格の待遇でのビッグマッチが行われる可能性があることを明かしたものの、渡辺会長は「パッキャオと同じ興行とかは避けたい。内山の後援会の人達が応援に行きたくても、チケットが取れなくなってしまうから」とコメントしたことで、日本ボクシング史上最大規模のビッグマッチの機会を後援会のためだけに潰すことに対してバッシングが起きた。 パッキャオ引退興行での実現はなくなったものの、ウォータースとの対戦交渉は継続され、「かなりの段階まで進展していた」と渡辺会長は強調していたが、試合を放送する米国最大手のテレビ局HBOが内山vsウォータース戦に難色を示し、加えてHBOのスポーツ部門の責任者が交代したばかりで予算も年々縮小されていっている最中にウォータースが高額なファイトマネーをトップランクとHBOに要求したことによって交渉は難航。そして最終的には1月28日、WBAからWBA世界スーパーフェザー級正規王者ハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)と統一戦を行うよう指令され、30日以内に交渉がまとまらなければ入札を行うと通達されたため、仮にウォータースとの対戦交渉が成立したとしてもフォルトゥナとの統一戦を拒否してウォータースとの対戦を強行した場合、WBAとの交渉次第ではあるが世界王座を剥奪される可能性も有り得るため、ウォータースとの対戦は消滅した。なお、ウォータースは内山との対戦が消滅した後は同じくトップランク傘下のワシル・ロマチェンコとの対戦が浮上したが、ここでもウォータースはファイトマネー100万ドルを要求したため、交渉は決裂している。 ウォータースとの対戦こそ一旦消滅したものの、代わりに浮上したハビエル・フォルトゥナは地味ながらテクニシャンとして知られており、2016年2月12日に行われた2015年年間表彰式にて年間MVPを受賞した際に内山も「フォルトゥナと先にやって、次にウォータースがいい。フォルトゥナはテクニシャンでやりづらい。ウォータースはかみ合うと思うけど、身体能力が高いし、野性的な動きが読みづらい。比較できないが、うまさと強さ、両方撃破すれば海外での評価も上がると思うし今年中に二人と戦いたい。やれるのならラスベガスで。ビッグマッチをやりつつ、具志堅さんの持つ日本人世界王座最多防衛記録の13度を超えられれば最高」と前向きに捉え、渡辺会長は「フォルトゥナとの交渉を優先している。内山の夢を叶えられるなら、ファイトマネーが多少安くてもアメリカで防衛戦を行えるよう努力したい」と日本開催にこだわらない考えを示したが、その一方で「フォルトゥナ側が再提示するファイトマネーが一定条件を満たさなければ、試合は日本開催となる可能性が高い」と矛盾する姿勢も示した。また、フォルトゥナのプロモーターであるサンプソン・ボクシング社のサンプソン・リューコーイッツは、WBAが内山vsフォルトゥナの対戦指令をまだ出していなかった2015年10月1日の時点のインタビューにて自身が長年プロモートしたアンセルモ・モレノが山中慎介に挑戦した試合を例に挙げて「明らかにモレノが勝っていたにも関わらず酷い地元判定でモレノの勝利が盗まれた事に失望した。フォルトゥナを内山と対戦させることに問題は無いが、絶対に日本ではやりたくない。やるならアメリカ国内であればどこでも戦う。ドミニカ人のフォルトゥナと日本人の内山が中立国のアメリカで戦うのが一番だ」とコメントしていた。 その後、アメリカで対戦することを前提に交渉を進めたものの、交渉は決裂。渡辺会長は具体的な内容は明かさなかったものの、こちらもテレビ局のハードルをクリアできなかったとコメントした。そのため日本開催に切り替えて再交渉したものの、日本のジャッジに強い不信感を抱くフォルトゥナ陣営が「ジムが潰れるような高額ファイトマネーを要求された」(東スポの報道では35万ドル=約4千万円)ため、再び交渉決裂。両陣営による通常であれば興行権の入札が行われるが、渡辺会長は内山を先に暫定王者ジェスレル・コラレスと対戦させ、コラレス戦後に再度フォルトゥナと対戦交渉を行う事をWBAに申請し、許可されたため、日本でコラレスと対戦することになった。 ボクシングマガジン2016年3月号の巻頭インタビューにて「今回もアメリカ進出を逃したら、ちょっともう何を目指して練習したらいいのか分からない」とまで吐露していた内山は、世界的にも全く無名のコラレスとの日本での12度目の防衛戦が発表された会見でも「正直、モチベーションが下がった」と初めて公の場で自身のマッチメイクへの不満を露わにした。また、内山の世界戦を中継してきたテレビ東京は、具志堅用高の持つ最多連続防衛記録更新が懸かった14度目の防衛戦を大晦日に日本国内で実現させたいと意向であるため、2016年内のアメリカ進出のチャンスはコラレス戦に勝利した後の9月頃までの4カ月程度しか残されておらず、11月には37歳となり肉体の衰えと引退の時は近づいている。これまでマッチメイクに文句を言わずに戦ってきた義理人情に厚い内山に対して「コラレスに勝利した後は念願のアメリカ進出のために我が侭を通してもいいのではないか」と指摘する声もある。 2016年12月29日、同年4月27日のジェスレル・コラレスとの間で行われたWBA世界スーパーフェザー級王座統一戦がファイトニュース・ドットコムの2016年度のアップセット・オブ・ザ・イヤーに選出された。
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