モテットとは? わかりやすく解説

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モテット【motet】

読み方:もてっと

《「モテト」とも》13世紀以来ヨーロッパで発達した聖書詩編などを歌詞にもつ多声の宗教声楽曲


モテット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/09 06:37 UTC 版)

モテット: : motet: Motette: mottetto: motetus)は、声楽曲のジャンルのひとつ。一般的に、中世末期からルネサンス音楽にかけて成立・発達した、ミサ曲以外のポリフォニーによる宗教曲を指すが主に葬式に用いられ多くが臨時に書かれる単一楽曲。

概要

モテットという言葉自体は、歴史をさかのぼると13世紀以降に発展を始めた世俗のポリフォニー歌曲に行き着くが、音楽学者は便宜上、アルス・アンティカアルス・ノーヴァの世俗ポリフォニーについてはラテン語を用いて「モテートゥス」とし、ルネサンス以降の教会ポリフォニーについては「モテット」としている。英語とフランス語は、綴りが同じだが、フランス語では「モテ」と読む。

語源

モテットの語源は、中世フランス語で“ことば”を意味する「モ mot 」という語に遡る。これは、アルス・アンティカのモテートゥスの特徴であるポリテクスト(各パートが異なる言語やテクストを併用する現象。例えば、テノール声部が文語のラテン語、それ以外のパートが世俗語である中世フランス語。あるいは、あるパートが宗教的内容を歌い、別のパートは恋愛指南や社会諷刺を歌う)のことを指している。この「モ」から創り出された中世ラテン語「モテクトゥム motectum 」が次第に崩れて、モテあるいはモテットという世俗語が生じた(古典ラテン語の動詞「モウェーレ movere 」[=動かす]が語源で、パート間のポリフォニックな動きを指すとの解釈もある)。

発展

モテットは、ルネサンス時代にミサ通常式文以外の宗教曲全体を指すようになる。バロック時代になって、地域ごとや宗派ごとの微妙な分化が始まった。ドイツプロテスタント教会では、コラールを利用したモテットが作られるようになり、シュッツシャインローゼンミュラーらがヴェネツィアから持ち帰った複合唱様式が採り入れられ、バッハもこのタイプのモテットを盛んに書いた。一方、フランスでは、室内アンサンブルや管弦楽伴奏を伴うグラン・モテ(大モテット)と、オルガン(と通奏低音楽器)のみを伴奏とするプチ・モテ(小モテット)が成立する。イングランドでは、アンセムオードと呼ばれる類似したジャンルが成立した。ルター派教会でもラテン語によるモテットが作曲されることが間々あったのに対して、イングランドでは国教会の影響のもとに、典礼音楽にも英語の使用が徹底して推し進められ、それがジャンル名にも反映されることとなった。

ルネサンス期のモテット作曲家

バロック期ドイツ作曲家のモテット

主に向かいて新しき歌を歌え Singet dem Herrn ein neues Lied (1726) BWV 225
聖霊はわれらが弱きを助けたもう Der Geist hilft unser Schwachheit auf (1729) BWV 226
イエス、わが喜び Jesu, meine Freude (?) BWV 227
恐れるなかれ、われ汝とともにあり Fürchte dich nicht (?) BWV 228
来ませ、イエス、来ませ Komm, Jesu, komm! (1730 ?) BWV 229
主を頌めまつれ、諸々の異邦人よ Lobet den Herrn alle Heiden (?) BWV 230

バッハ以後のモテット

18世紀後半から啓蒙主義ロマン主義のあおりを受けて、しだいにキリスト教が衰退する中、モテットも次第に顧られなくなる。しかしながらそのような中でも、モーツァルトアヴェ・ヴェルム・コルプスは有名かつ重要な作品となっている。その他フランクブルックナーブラームスサン=サーンスフォーレスタンフォードヴォーン・ウィリアムズディストラークレーネク[1]などがモテットを作曲している。近現代のイギリスアメリカ合衆国の作曲家は、聖公会が部分的にカトリック典礼を復興するようになると、英語だけでなくラテン語のモテットの作曲にも取り組むようになった。

脚注

注釈

出典 

  1. ^ ERNST KŘENEK (COMPOSER). “Motette zur Opferung”. www.schott-music.com. www.schott-music.com. 2023年11月9日閲覧。



モテット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 02:16 UTC 版)

ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」の記事における「モテット」の解説

(BWV118),BWV225‐BWV231 作品番号順BWV作品タイトル作曲年代編成備考225 歌え、主の御前新しき歌を(Singet dem Herrn ein neues Lied) 1727? 2重cho(8声) モテット第1番 226 御霊はわれらが弱き助け給う(Der Geist hilft unsrer Schwachheit auf) 1729 cho モテット第2番 227 イエス、我が喜びよ(Jesu, meine Freude) 1723? cho モテット第3番 228 おそるるなかれ、われ汝とあり(Fürchte dich nicht, ich bin bei dir) 1726? cho モテット第4番 229 来たれ、イエス、来たれ(Komm, Jesu, komm) 1723-32 2重cho(8声) モテット第5番 230 もろもろの国よ、主をほめ讃えよ(Lobet den Herrn, alle Heiden) ? cho モテット第6番偽作? 231 賞賛賛美栄光(Sei Lob und Preis mit Ehren) 1723-27? cho BWV28-2の改作テレマン作?

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モテット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/18 03:15 UTC 版)

ジョン・ダンスタブル」の記事における「モテット」の解説

来たれ聖霊(4声)ダンスタブル作品中、最も頻繁に演奏されている。 アヴェ・レジナ・チェロルム(3声) おお栄光の十字架(3声) 聖なるマリアよ(3声) あなたは何者にもまして美しく(4声) 祝福され御母(3声) 恵み深き救い主御母(3声)

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モテット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 09:58 UTC 版)

ジョスカン・デ・プレ」の記事における「モテット」の解説

Alma redemptoris mater; Alma redemptoris mater / Ave Regina; Ave Maria... benedicta tu (4声部); Ave Maria .... Virgo serena (ミラノ。1484/85年); Ave munda spes, Maria (部分のみ残存); Ave nobilissima creatura; Ave verum corpus natum; Benedicta es, caelorum regina; De profundis clamavi (5声部)「われ深き淵より汝を呼べり」; Domine exaudi (様式上、真作である可能性がある); Domine, ne in fuore tuo (4声部); Domine, non secundum peccata nostra (2-4声部ローマ為に); Ecce, tu pulchra es, amica mea; Factum est autem; Gaude virgo, mater Christi; Homo quidam fecit cenam magnam; Honor, decus, imperium; Huc me sydereo descendere jussit Olympo (5声部); Illibata Dei virgo nutrix; In exitu Israel de Aegypto; In illo tempore assumpsit Jesus doudecim disciplus; Iniquos odio habui (4声部。主声部のみ残存); In principio erat Verbum; Inviolata, integra et casta es, Maria「けがれなく完全で清い方、マリア」; Liber generationis Jesu Christi; Magnificat quarti toni (様式上、真作である可能性がある); Magnificat terii toni (様式上、真作である可能性がある); Memor esto verbi tui; Miserere mei Deus (フェラーラ。1504/05年)「憐れみたまえ」; Misericordias Domini in aeternum cantabo (フランス。1480/83年); Missus est Gabriel angelus ad Mariam Virginem; Mittit ad virginem; Monstra te esse matrem; O admirabile commercium (恐らく5つのモテットからなる連続演奏); O bone et dulcissime Jesu; O Domine Jesu Christe (5部からなる連続受難曲); O virgo prudentissima; O virgo virginum; Pater noster, qui es in caelis (コンデ1505年-1521年); Planxit autem David; Praeter rerum seriem; Qui edunt me adhuc (恐らく真作); Qui habitat in adiutorio altissimi; Qui velatus facie fuisti (6部からなる連続受難曲); Salve regina (4声部)「めでたし后妃」; Salve regina (5声部1502年)「めでたし后妃」; Stabat Mater悲しみの聖母」; Tu lumen, tu splendor; Tu solus qui facus mirabilia; Usquequo Domine oblivisceris me (真作かどうか未解決だが、様式上、真作である可能性がある); Ut Phoebi radiis; Veni, sancte spiritus (フォレスチェ Forestier も協力しているが、ジョスカン真作); Victimae paschali laudes; Virgo prudentissima; Virgo salutiferi (フェラーラ。1504/05年); Vultum tuum deprecabuntur (7部からなる連続受難曲).

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