ベンチュリ形式の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 01:55 UTC 版)
「キャブレター」の記事における「ベンチュリ形式の種類」の解説
固定ベンチュリ式 スロットル操作によらずベンチュリの開口面積が常に一定の方式である。 自動車用としては高性能エンジン用のウェーバーやソレックスをはじめ、多くのアメリカ車と日本車の一部のダウンドラフトキャブレターにみられる。今日ではこのタイプのキャブレターを製造するメーカーは少なくなっているが、日本国内ではオーイーアール(OER)が旧式のソレックスなどの更新向けにこのタイプのキャブレターの製造販売を続けている。オートバイにおいては、ハーレーダビッドソンが1989年までこの形式のキャブレターを使用し続けていた。また、戦前から戦後間もなくにかけて使用されたリンカート(Linkart)キャブレターは、日本製の陸王でも日本気化器のライセンス生産品が搭載されていた。しかし、陸王が倒産した1960年代からは、日本製オートバイではこの形式のキャブレターが採用されることはなくなった。(四輪では固定ベンチュリー式、二輪では可変ベンチュリー式が一般的) 可変ベンチュリ式 詳細は「en:SU carburetter」を参照 ベンチュリの開口面積を自動で変化させる方式で、エンジン回転の全域にわたって適切な吸気流速が得られる。今日まで残るものではVM型とCV型の2方式に大別される。 自動車においては、日立、ゼニス・ストロンバーグを始めとするサイドドラフト・SUキャブレターが最も一般的に使用された。 ピストンバルブ式(VM型) VM (Villiers Monoblock または Variable Manifold)型では ピストンバルブがスロットルとなり、空気の流量調整と同時にベンチュリの開口面積を変化させる。鋭いエンジンレスポンスが得られる一方、エンジンが求める混合気吸入量を超えてスロットルバルブを開けると空気の流速が低下してジェットからの燃料吐出量が少なくなる。このため、運転者の技能によってエンジン性能が左右される。なお、負圧式に対して、ピストンバルブ式を強制開閉式と通称する事が一般的となっているが、本来の強制開閉式はスロットルを開き側だけでなく、閉じ側もケーブルで引く2本引きスロットルの事であり、むしろ負圧式で一般的である。しかし現在ではピストンバルブ式を指す用語とされることが多い。 負圧式(CV型) CV(Constant Velocity または Constant Vacuum)型ではスロットルは固定ベンチュリー式と同じく、空気の流量を調整するバタフライバルブを操作する。ベンチュリはバキュームピストンによって開口面積が自動的に変化し、その下端には穴が開けられている。バキュームピストンにはダイアフラム式では膜が付いており、膜の片側には吸気管に生じる負圧がかかり、反対側は大気に開放されている。バキュームピストンはばねで支持され、ばねの力と負圧のバランスでベンチュリの開口面積が流量に応じて自動的に決まり、流量が変わらなければ流速がほぼ一定になるように自動調節される。この仕組のため吸入負圧の小さな2ストロークエンジンには適さない。ベンチュリの開口面積はスロットル操作に直接的に影響を受けないため、エンジン出力のスロットルに対するレスポンスはほかの方式よりも緩やかである。 過渡特性が操縦性に大きく影響するオートバイにおいては、インジェクションが普及するまでは2ストローク車、競技用車、および原付など小排気量車を除けば一般的な存在であった。 その他 上記の2形式に該当しない物として、フォードの開発したVV(Variable Venturi)型が挙げられる。この形式は固定ベンチュリ型ダウンドラフトキャブレターをベースに、スロットルポジションセンサーでスロットルバルブの開度を監視しながら、メータリングロッドの付いた可動式ベンチュリをサーボモーターで動かしてベンチュリ径を常時変化させていく。「MOTORCRAFT.VV」の商品名で知られ、1977年から1991年まで、主にピックアップや大型トラックを中心に搭載された。ステージド・マルチバレルキャブレターが主流であったアメリカでもフォードの一部車種のみの採用で終わった。
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