ゾンバルト:ユダヤ的資本主義とドイツ的社会主義
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「反ユダヤ主義」の記事における「ゾンバルト:ユダヤ的資本主義とドイツ的社会主義」の解説
ドイツ歴史学派の経済学者・社会学者のヴェルナー・ゾンバルトは社会主義に影響され初期には資本主義を批判していたが、やがて「資本主義の精神」のうち冒険的企業家的要素はドイツ人に、打算的ブルジョワ精神はユダヤ人に属するとした。1911年の『ユダヤ人と経済生活』で中世の封建制のキリスト教共同体は、近代資本主義に移行し、ユダヤ的な利益社会となったとし、人格的で自然なドイツ経済のなかにユダヤ人は嵐のように侵入し営利の優位を掲げたとした。ゾンバルトによれば、国際的なネットワークを持つユダヤ人は地域的な伝統よりも経済合理性を重んじ、また市民権が剥奪されていたので政治でなく経済に注目し、近代資本主義の重要な担い手となった。ユダヤ人は地域的でなく普遍的であり、国民的ではなく国際的で、具体的でなく抽象的である。資本主義制度の創始者である砂漠の民族ユダヤ人は放浪的で抜け目がないのに対して、森の民族ゲルマン人は心がひろい。ユダヤ教は悟性の宗教であり、感性と情感に欠けるため、自然の世界や有機的な世界とは対立し、合理主義と主知主義はユダヤ教と資本主義の特色である。したがって、近代合理主義を推進したのはヴェーバーのいうようなプロテスタンティズムでなくユダヤ教であるとした。資本主義とユダヤ教の本質は、貨幣によって表現され、貨幣と流通は社会関係を抽象化し、抽象化の精神はユダヤ人に具体化される。彼はユダヤ世界と資本主義を同一視するという、ブルーノ・バウアーやマルクスらの考え方を再利用して「太陽のようにイスラエル(ユダヤ人)はヨーロッパを飛翔した。そして彼らが来るところに新しい生命が生い立ち、彼らが退くところでは、今まで咲き誇っていたものはすべて荒廃に帰する」と述べた。ゾンバルトのこの著書は友人のマックス・ヴェーバーから批判され、またヒトラーが資料として用いた。 翌1912年の小冊子『ユダヤ人の未来』では、聡明で器用なユダヤ人はドイツの芸術と新聞を支配しているが、このユダヤの優位性は放置すると取り返しのつかないことになる「人類最大の問題」であると主張した。また、スペイン、ポルトガル、フランスもユダヤ人追放後の後遺症に悩み、またユダヤ人とヨーロッパ人との同化や融合も自然の法則に反しており、ユダヤ人種と北方民族の血の融合は不吉である、しかしドイツはユダヤ人なしにはやっていけないと論じた。ポリアコフは、こうしたゾンバルトの主張をアパルトヘイト政策だとする。1915年の『商人と英雄』では英雄の国ドイツと商人国家イギリスを対置し、戦争の近代化においてテクノロジーの意味は、義務、犠牲、共同体、名誉、勇気、権威といった崇高な美徳からその真価を引き出すようになったとした。ゾンバルトは第一次世界大戦を、ドイツを商業主義に陥れようとする営利的エートスに対するドイツ的理想主義の戦いであると称賛した。1927年の『高度資本主義の時代における経済生活』ではゲルマン民族が前向きの推進力、ファウスト的意志、忍耐力、粘り強さに貢献したのに対し、ユダヤ人は勤勉、投機的敏感さ、計算力、進歩への願望を持つと対置し、商人と金融業者によって非合理主義的で情緒的で自発的な企業家が消滅する危険にさらされたと論じた。 ナチス政権以後の1934年の『ドイツ的社会主義』においてゾンバルトは、ユダヤ的な国際的社会主義・国際的資本主義に対して、ナショナリズムと社会主義が融合した国民的社会主義としてのドイツ的社会主義を主張した。これによれば、19世紀には経済がその他の領域(強さ、善良さ、賢明さ、芸術、家族、伝統、人種)を支配したため、知性化と即物化によって魂と人格が剥奪され、またマルクス主義も魂のない近代工場を進歩として歓迎した。これに対してドイツ的社会主義は、経済時代と資本主義を放棄し、現在の「文明」状態をなくして以前のような「文化」状態に到達し、ドイツ国民を経済時代の砂漠からドイツの森へ戻す。しかし、ユダヤ精神はドイツのすみずみまで浸透しており「たとえ最後のユダヤ人とユダヤ人家族を絶滅したとしても」存続するだろうから、反資本主義闘争であるドイツ的社会主義はユダヤ精神との闘争であるとされた。同年の国民投票で、ゾンバルトは哲学者のハイデッガーやハルトマンや生化学者アブデルハルデンと連名でヒトラー総統を支持する学者声明をナチ党機関紙フェルキッシャー・ベオバハターに発表した。
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