その他の類型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 14:52 UTC 版)
その他の類型は以下に列挙する。 「林立(りんりつ、línlì)」などの語は「林(はやし)立(た)つ」のように主述構造に訓読できるが、「林のようにそびえたつ」と比喩の意味で解釈することの方が多く、修飾構造に分類される。また、「口授(こうじゅ、kǒushòu)」は「口(くち)でもって授(さづ)く」のように訓読する。このように手段・道具・資格などを表すものも修飾構造に分類される。 「毎事(まいじ、měishì)」は「事(こと)毎(ごと)に」と返読するが、この「毎」は「逐指語」と呼ばれる一種の指示語であり、修飾構造に分類される。 「持久(じきゅう、chíjiǔ)」などの語は「持(ま)つこと久(ひさ)し」のように動詞を主語にもつ文として訓読でき、主述構造に分類できる。 「多少(たしょう、duōshǎo)」が単に「多い」という意味になることがあるように、対義語を並列させた漢語の中には、一方の意味を強調するために相反する文字を並べるものがある。 「年年(ねんねん、niánnián)」のように同じ字を重ねた畳語は、並立構造とすることもあるが、多くは後述の連綿語の一種であるとされる。 「矯正(きょうせい、jiǎozhèng)」、「征服(せいふく、zhēngfú)」は、それぞれ「矯(た)めて正(ただ)す」、「征(う)ちて服(したが)はす」のように訓読される。このような熟語は並列型に分類されることもあるが、専門的には前の字が原因、後ろの字が結果となる因果関係、あるいは述語・補語関係を示すものと分析されており、「動補構造」と称することがある。 「借用(しゃくよう、jièyòng)」(訓読は「借(か)りて用(もち)いる」)のように、複数の動詞句が連なっているとみなせるものは「連動構造」と呼び、並列構造と区別することがある。 「所得(しょとく、suǒdé)」は「得(う)る所(ところ)」と訓読する。特殊な補足構造の一種、あるいは認定構造の一種と解釈される。 「降雨(こうう、jiàngyǔ)」、「多雨(たう、duōyǔ)」などは、それぞれ「雨(あめ)降(ふ)る」、「雨(あめ)多(おほ)し」と訓読できるように、「述語+主語」のような構造になっているが、補足型に分類されることが多い。このように存在・出現・消失などを表す熟語を「存現構造」などと分類することもできる。 否定語が前についた、「不動(ふどう、bùdòng)」、「不詳(ふしょう、bùxiáng)」、「未開(みかい、wèikāi)」、「非常(ひじょう、fēicháng)」、「無類(むるい、wúlèi)」、「勿論(もちろん、wù lún)」などは、それぞれ「動(うご)かず」、「詳(くは)しからず」、「未(いま)だ開(ひら)かず」、「常(つね)に非(あら)ず」、「類(たぐひ)無(な)し」「論(あげつら)ふ勿(な)かれ」と訓読され、いずれも補足構造(存現構造)もしくは認定構造のどちらかに分類可能である。逆に「成否(せいひ、chéngfǒu)」、「安否(あんぴ、ānfǒu)」のように否定語が後にくる例もある。「否」は疑問を表す助辞なので、訓読は「成(な)るや否(いな)や」「安(やす)きや否(いな)や」のようになる。 後ろに文法的な虚辞のついた「決然(けつぜん、juérán)」、「欠如(けつじょ、qiànrú)」、「確乎(かっこ、quèhū)」、「卒爾(そつじ、cùěr)」などは訓読しづらい。後述の「附加型」とみなすこともできる。同様に「昔者(せきしゃ、xīzhě)」の「者」、「冷却(れいきゃく、lěngquè)」の「却」なども虚辞とみなされることがある。 故事において象徴的な字を抽出してできた「矛盾(むじゅん、máodùn)」、「助長(じょちょう、zhùzhǎng)」、「白眉(はくび、báiméi)」などのいわゆる成語は特定の意味を持った俚諺や格言として引用されることが多い(#俚諺や格言としての熟語を参照)。またこれに関連して「演繹(えんえき、yǎnyì)」、「経済(けいざい、jīngjì)」など、近代に新漢語として造語された一部の熟語にも古い漢籍に出典がみられるものがある(#和製漢語と新漢語を参照)。一般にこういった語は熟合度(イディオム性)が高く、字面から意味を推測することが難しい。このような語こそが真の熟語であるという見方もある。
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