さーびすけいやく

石油/天然ガス用語辞典

サービス契約

読み方： さーびすけいやく
【英】: service contract

産油国の地下資源に対する主権と資源開発にかかわる国家の排他的な権利を留保しつつ、外国の石油会社に探鉱・開発作業を行わせ、その対価として生産量あるいは利益に応じて報酬を与えるという形の石油探鉱開発契約。 所要探鉱資金および探鉱リスクは原則として外国石油会社が負担する。資源ナショナリズムの高まりのなかで、地下の石油資源に対する資源所有国の主権は恒久のものとして確立され、また鉱業権は国または国営石油会社に排他的に帰属することとなり、外国石油会社は国営石油会社が遂行する石油事業の作業請負人（コントラクター）として探鉱・開発作業に従事するとともに、所要資金の供給、事業管理ノウハウの伝達、技術の移転などを行い、産油国の経済・社会の発展に貢献することが求められるようになった。サービス契約は投下資金の回収方法およびリスク報酬の定め方で次のように分類することができる。 (1) 利益配分方式（profit sharing）：外国石油会社は探鉱・開発から原油の販売までの全過程に従事し、その販売収入から投下資金を回収する。資金回収後の利益は所得税によって産油国と外国石油会社が一定割合で分け合うこととするものであるが、実質的には石油会社側に原油処分権を認め、また、生産原油の販売利益を折半する、あるいはロイヤルティ、鉱区税などの経費を所得控除するなどの点で旧来の利権契約に近く、過渡的なものであった。例：イランにおける NIOC と国際コンソーシアムの契約（1954 年）。インドネシアにおける開発請負契約（1960 年代前半）。 (2) 生産（物）分与契約方式（production sharing）：1960 年代後半にインドネシアで開発され、その後産油各国において採り入れられた契約の一方式である。その基本となる原則は国家が石油事業の全般にわたって管理し、石油会社は探鉱・開発・生産にかかわる費用を投下し、これを生産物の一部をもって回収し、残余の生産物を一定割合で分け合う。通常、投下資金の回収は原油で行い（コスト原油と呼ばれる）、コスト回収後の原油を産油国と外国石油会社が分け合うが、コスト回収の規定がなく、全生産量を一定比率で配分し、外国石油会社は取り分原油のなかから資金回収を行う事例もある（ペルーの 1978 年、Petroperu / Occidental 社の契約）。 (3) リスク・サービス契約：1960 年代後半以降、イランおよびイラクにおいて採用され、その後中南米で定着した契約方式の一つであり、生産物の一定割合または一定割合相当額を生産水準に応じて「リスク負担の報酬」として受け取る。1966 年のイランの NIOC / ERAP 契約は、生産物の一定量を割引価格で購入することで報酬とした。投下資金は通常別途長期にわたって原油販売収入から回収する。ブラジルのリスク・サービス契約では、現金による5年均等分割払となっている（成功時のみ）。 (4) 生産物買上げ方式：アルゼンチンのリスク契約では、生産された原油は全量 YPF（国営石油会社）が買い上げ、買い取り価格は国際価格の一定割合（通常生産高に応じて段階的に増減する）によっている。外国石油会社はこの販売収入から投下資金を回収し、残余の一部をリスク報酬として取得する。 以上のタイプの諸契約では、外国石油会社は単なるコントラクターであるため、元来ロイヤルティなどは産油国の国営石油会社などが負担すべきものである。しかし、イラン国際コンソーシアム契約では、国営石油会社 NIOC は生産原油を井戸元において、コンソーシアムの 100 ％子会社である貿易会社に対し生産コストに公示価格の 12.5 ％を上乗せして売り渡し、実質的にロイヤルティを徴収していた。またマレーシアや中国（1983 年以降）における生産分与契約では、明示的にロイヤルティが課されている。法人所得税に関しては、一般的に外国石油会社がリスク報酬や投下資金の金利相当分として受け取る部分については課税されるが、多くの契約では税相当分は既に産油国側取り分に含まれていて、実質的には外国石油会社に納税の義務はない。なお、開発資金については金利つきで回収できるケースが多いが、探鉱費は通常無利子で回収、返済される。また、このタイプの諸契約にも産油国側の事業参加の例が見られる。開発移行後、国営石油会社がコントラクターの1社として事業に参加し、持分シェアに応じた費用負担を行い、当該シェア分のリスク報酬を受ける形である。石油などの地下資源に対する各国の主権が確立した現在においては、発展途上国における一般的な石油探鉱開発契約はサービス契約であるといっても過言ではない。これらの国では鉱業権は法律によって、あるいは、契約上国または国営石油会社に排他的に帰属するものであるため、外国の石油会社は国営石油会社のコントラクターとして作業せざるを得ないが、この作業する権利があたかも従来の鉱業権と同様の役割を果たすようになってきており、利権契約にみられるサイン・ボーナス、鉱区放棄義務、最低探鉱義務などの規定がサービス契約にも導入されるようになっている。上述したロイヤルティの導入もその一例といえる。（→生産（物）分与契約）