ping pingの概要

ping

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/23 04:34 UTC 版)

ping
作者 マイク・ムース
初版 1983年 (40年前) (1983)
プラットフォーム ほとんどのネットワークOS
種別 コマンド
テンプレートを表示

「到達性」を確認するために使え、さまざまな用途があり、たとえばホストシステム(ユーザが現に「ホスト」として使用中のシステム)がインターネットとの基本的な接続を確立しているかテストするため、また自ホストが属するノードが特定のノードと繋がっているかをテストするため、などに使われている。

IPネットワークにおける基本的なツールの一つであり、IPネットワーク機能が実装されているオペレーティングシステムや組み込みネットワーク管理ソフトウェアのほとんどで、何らかの形で用意されている。

概要

pingは、発信元のホストから宛先のコンピュータにメッセージを送信し、宛先がそれに対して返した応答が戻って来るまでのラウンドトリップタイム(RTT、往復時間)を測定する。「ping」という名前は、アクティブソナー(水中で音波のパルスを送信して反射音を聴取することで水中の物体を検出するもの)の用語に由来している[2]

pingはICMPの"echo request"パケットを対象ホストに送信し、対象ホストから"echo reply"が返って来ることで「到達性」を確認する。プログラムは、エラー、パケットロス率、結果の統計的要約(通常は最小、最大、平均のラウンドトリップタイム)を報告する。

逆に、相手システムから応答がなかった場合は、「制限時間内に応答がなかった」(Request timed out.)「指定されたアドレスやネットワークは到達可能ではない」(Destination host/net unreachable.)「経路が長すぎて到達できない」(TTL expired in transit.)など、応答がなかった理由を表示する。

用途

pingを使用してIPネットワークに関するさまざまな情報を得ることができる。たとえばホストシステムの基本的なネットワーク設定がうまくできているか、ホストシステムはそもそも物理的な回線と繋がっているか、DNS(ドメインネームサーバ)は正常に機能しているか、自分側のノードと相手ノードの経路上に何らかの不具合が生じたり過負荷が生じたりしていないか、などである。

pingで宛先から応答があったと表示される状態を日本では俗語では「pingが通る」というが(あくまで俗語。メーカーの正式な説明書などではこの表現は使わない)、「pingが通る」ということは、「少なくとも、双方向にパケットの送受信ができる」「自システムから送信したパケットは指定IPの機器に(無事に)届き、なおかつ、指定したIPの機器が送信したパケットも自システムに(無事に)届く、という状態にはある」ということを示す。ドメイン名をノード名としてパケットを送信して(俗語では送信することを「投げる」ともいう)正常に応答(リプライ)された場合は、DNSの障害もない、と判る。

pingはたとえば前日までアクセス可能だったウェブサイトが突然アクセス不能・困難になった際にも、その原因や状況を調べるために使える。ウェブサーバのドメイン名でpingを「打ち」、正常に応答があれば、IPネットワークもDNSも正常と判断されるので、より高レベルのレイヤーに属するソフトウェアつまりOSI参照モデルでより高い層を荷うソフトウェアで問題が起きているのだろうと推察できる。もしpingで指定IPアドレスから応答があるのにそのIPアドレスのウェブサイトを閲覧できないならば、たとえばhttpレベルの通信が自身か相手のファイアウォールでブロックされているかもしれないし、相手のWWWサーバソフトウェアに障害が起きているのかも知れない、と推察できるのである。

種類、仕様の違い、特殊な用途

pingユーティリティのコマンドラインオプションとその出力は、実装によって異なる。ペイロードのサイズ、試行回数、パケットを通過させるネットワークホップ数(TTL)の制限、試行間隔などをオプションとして指定できる。多くのシステムでは、IPv6ネットワークで同様のテストをするための、ICMPv6を実装したユーティリティ"ping6"を提供している。

一部のオンラインソフト[注釈 1]にもping機能を持つものがある。

オンラインゲームなどにおいて、サーバーとプレイヤー(クライアント)間の通信タイムラグをpingとして表示するものもある。また、短時間で切断されるような特殊なセッションを定期的なpingによって強制的に保持するという使い方もある。

歴史

pingは、1983年12月に、当時アメリカ陸軍弾道研究所(現 アメリカ陸軍研究所英語版)に勤務していたマイク・ムースが、自身の管理するIPネットワークでのトラブルシュート用に作成した。これは、後にNTPを開発したデイヴィッド・L・ミルズの、IPネットワークの診断と測定にICMPエコーパケットを使用することについての発言に触発されたものである[3]。ムースは、その挙動が潜水艦などで使われるアクティブソナーの発する音波(=ping)の挙動と似ていることから、このプログラムをpingと名づけた[2][4]。この事からpingを実行する事を「pingを打つ」と呼ぶ場合が多い。ムースはpingが何かの略語であることを否定しているが、ミルズにより"packet internet groper"、別の人より"packet internet gopher"[注釈 2]というバクロニムを授かっている[5]

最初にリリースされたバージョンはパブリックドメインだったが、後にBSDライセンスの下でライセンスされるようになった。pingは4.3BSDに最初から含まれていた[6]

RFC 1122 では、どのホストもICMP echo requestを処理し、echo replyを返送する必要があると規定している[7]。しかし、セキュリティ上の理由から、これはしばしば無効になっている[8]

インターネットの接続性の問題の“診断”にも有用なpingであったが、2003年末、Welchiaのようなpingをネットワークにフラッドし標的を探すタイプのコンピュータウイルスが出現したり、悪意を持ったユーザが攻撃目標の調査やネットワークに負荷をかけるなどの目的でpingの悪用を行ったため、一部のISPでICMP Type 8(echo request)パケットがフィルタリングされるようになった。


注釈

  1. ^ EditMTU等。
  2. ^ ここでのgopherはIT用語でのgopherではなく、齧歯目のgopherのことである。

出典

  1. ^ [1]
  2. ^ a b Mike Muuss. “The Story of the PING Program”. U.S. Army Research Laboratory. 2010年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月8日閲覧。 “I named it after the sound that a sonar makes, inspired by the whole principle of echo-location.”
  3. ^ "The Story of the PING Program", Mike Muuss
  4. ^ Salus, Peter (1994). A Quarter Century of UNIX. Addison-Wesley. ISBN 978-0-201-54777-1 
  5. ^ Mills, D.L. (1983). Internet Delay Experiments (英語). IETF. p. 1. doi:10.17487/RFC0889. STD 8. RFC 889. 2015年6月26日閲覧
  6. ^ http://www.manpagez.com/man/8/ping/
  7. ^ RFC 1122 - Requirements for Internet Hosts -- Communication Layers”. p. 42. 2012年3月19日閲覧。 “Every host MUST implement an ICMP Echo server function that receives Echo Requests and sends corresponding Echo Replies.”
  8. ^ a b Windows firewall: how block ICMP (echo response)”. 2019年2月27日閲覧。
  9. ^ ICMP: Internet Control Message Protocol”. repo.hackerzvoice.net (2000年1月13日). 2014年12月4日閲覧。
  10. ^ RFC 792 - Internet Control Message Protocol”. Tools.ietf.org. 2014年2月2日閲覧。
  11. ^ RFC Sourcebook's page on ICMP”. 2010年12月20日閲覧。
  12. ^ redhat linux /proc/sys/net/ipv4 parameters”. 2019年2月27日閲覧。
  13. ^ Abdou, AbdelRahman; Matrawy, Ashraf; van Oorschot, Paul (April 2017). Accurate Manipulation of Delay-based Internet Geolocation. ACM AsiaCCS. doi:10.1145/3052973.3052993






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ping」の関連用語

pingのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



pingのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのping (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS