Winny事件
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刑事裁判
裁判の経過
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2004年5月31日、Winnyの開発・配布者である金子は、京都地方検察庁によって京都地方裁判所に起訴された。起訴するにあたっては、正犯である2人(愛媛県松山市の少年A・群馬県高崎市の男性B)の著作権侵害行為への幇助行為が、起訴事実として挙げられた。
また、京都府警察の事情聴取に対して、金子が「インターネットが普及した現在、デジタルコンテンツが違法にやり取りされるのは仕方ない。新たなビジネススタイルを模索せず、警察の取り締まりで、現体制を維持させているのはおかしい」などと供述していたことから、京都地検はコンピュータプログラム自体の違法性などの是非には言及せず、そのアプリケーションソフトウェアを作成・配布した金子の行為に幇助の故意を認め、雑誌などにより違法に使われている実態が既に明らかになった後も開発を続けていたことから、悪質であると断じた。これらの起訴事実について、金子は正犯A・Bとの面識がないことなどを挙げて全面否認し、以後、検察側と弁護側が全面的に争うこととなる。
2004年6月1日に保釈され、2006年7月3日に検察側は論告求刑において、金子に対して懲役1年を求刑した。第1審は、2006年9月の弁護側最終弁論の後に結審した。
控訴へ
2006年12月13日、京都地方裁判所(氷室眞裁判長)は、著作権法違反の幇助により、罰金150万円の有罪判決を言い渡した[31]。判決では著作権侵害に広く利用される現状を認識しながら不特定多数の者が入手できるようにしたことをもって幇助罪が成立するとした上で、「利用者の多くが著作権を侵害することを、明確に認識、認容しながら公開を継続した。影響は大きいが、自身は経済的利益を得ていない」と量刑の理由が述べられた[32]。
京都地方検察庁の新倉明次席検事は「罰金刑は想定外で、非常に軽い」と不満を表し[33]、同日、検察・被告人双方が、判決を不服として、大阪高等裁判所に控訴した。
2009年10月8日、大阪高等裁判所は、一審の京都地裁判決を破棄し、金子に無罪を言い渡した。小倉正三裁判長は「悪用される可能性を認識しているだけでは、幇助罪には足りず、専ら著作権侵害に使わせるよう提供したとは認められない」と、無罪の判決理由を述べた。
2009年10月21日、大阪高等検察庁は判決を不服として、最高裁判所に上告した。
無罪確定
2011年(平成23年)12月19日、最高裁判所第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は、上告を棄却し、金子の無罪が確定した[34]。最高裁は「例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難である」との判断を下した。
判決は4対1の多数決で、大谷剛彦裁判官は「被告人に侵害的利用の高度の蓋然性についての認識と認容も認められると判断する」として多数意見に反対した。大谷は「Winnyは、侵害的利用の容易性といったその性質、不特定多数の者への無限定の提供というその態様などから、大量の著作権侵害を発生させる素地を有しており、現にそのような侵害的な利用が前述のように多発もしていたのであって、法益侵害という観点からは社会的に見て看過し得ない危険性を持つという評価も成り立ち得よう」「侵害的利用の抑制への手立てを講ずることなく提供行為を継続していたのであって、侵害的利用の高度の蓋然性を認識、認容していたと認めざるを得ない」などの理由を挙げ、「幇助犯が成立する」との反対意見を述べた[35]。
注釈
出典
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- ^ ““Winny事件”題材の映画「Winny」、本編映像を一部公開 公開は3月10日”. ITmedia NEWS. 2023年2月14日閲覧。
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