Wayland Waylandの概要

Wayland

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 20:22 UTC 版)

Wayland
Waylandのデモ
作者 Kristian Høgsberg
開発元 freedesktop.orgその他
初版 2008年9月30日 (15年前) (2008-09-30)[1]
最新版
Wayland: 1.21, Weston: 11.0.1 / 2022年6月30日 (20か月前) (2022-06-30)
リポジトリ
プログラミング
言語
C
対応OS 公式: Linux
非公式: NetBSD, FreeBSD, DragonFly BSD[2]
サポート状況 正式公開済み
種別 ディスプレイサーバ
ライセンス MIT License[3]
公式サイト wayland.freedesktop.org
テンプレートを表示
EGLに依存したWaylandディスプレイサーバプロトコル
Linux
Waylandコンポジタ、libwayland-client、ツールキット

Waylandは当初、Kristian Høgsberg率いるボランティアによって、フリーかつオープンソースコミュニティ主導のプロジェクトとして開発されていた。 このプロジェクトは、Linuxやその他のUnix系OSにおいて、X Window Systemをモダンで安全で[4][5][6][7]よりシンプルなものに置き換えることを目的としている。プロジェクトのソースコードは、パーミッシブ・ライセンスのひとつであるMITライセンスで公開されている[8][3]

成果の一部として、WaylandプロジェクトはWestonと呼ばれるWaylandコンポジタのリファレンス実装も開発した。

概要

  1. Linuxカーネルのevdevモジュールは、イベントを受けとり、Waylandコンポジタへ送る。
  2. Waylandコンポジタはシーングラフを見渡し、どのウィンドウがそのイベントを受け取るべきかを決定する。 シーングラフは画面に表示されているものに対応しており、Waylandコンポジタはイベントが適用されるシーングラフ内の要素との変換が分かる。そのため、Waylandコンポジタは逆変換することで、正しいウィンドウが分かり画面上の座標をウィンドウ内の座標へ変換することができる。ウィンドウに適用できる変換は、コンポジターが適用できることだけに限られ、入力イベントに対して逆変換できることに限られます。
  3. Xの場合、クライアイントはイベントを受け取ると、反応してUIを更新する。しかし、Waylandの場合、クライアントはEGLを通じてレンダリングし、コンポジタへ更新された範囲を通知するために要求を送るだけである。
  4. Waylandコンポジタはクライアントから変更箇所のリクエストを集め、スクリーンを再構成する。それからコンポジタは、KMS英語版による画面の再描画をスケジューリングするため、ioctlを直接発行する。

コンポジット型ウィンドウマネージャがアプリケーションやグラフィクスハードウェアと直接通信できる方法を、Waylandが提供する。具体的には、各アプリケーションは自身のバッファに画像を描画し、ウィンドウマネージャがディスプレイサーバとしてそれらバッファを合成して、ディスプレイ上に各アプリケーションウィンドウを作り出す。これは、コンポジット型ウィンドウマネージャとX Window Systemを一緒に使う従来の方法より効率的かつシンプルである[9]

Waylandはグラフィクス周りのみに特化しており、入力ハードウェアとの通信には他のライブラリを使用することを想定している。

Waylandディスプレイサーバプロジェクトは、Red Hatの開発者であったKristian Høgsbergによって、2008年に開始された[10]

2010年頃、Linuxデスクトップのグラフィックスは、「中心にあるXサーバとやり取りするためだけの山積みのレンダリングインタフェース」を持つ状態から、"XやWaylandのようなウィンドウシステムを脇に退けて"、Linuxカーネルやそのコンポーネント (たとえばダイレクト・レンダリング・インフラストラクチャ(DRI)ダイレクト・レンダリング・マネージャ(DRM)英語版を"間に置く"ように移行した。その結果、"グラフィックシステムはシンプルになり、より柔軟性があり、より良いパフォーマンスを発揮する"ようになった[11]

Høgsbergは、多くの最近のプロジェクトと同様にXへの拡張英語版を追加することもできたが、"クライアントとハードウェアの間のホットなパスからXを[締め出す]"ことを採用した。 その理由について、プロジェクトのFAQには以下のとおり記載されている[8]

今や異なるのは、多くのインフラストラクチャがXサーバからカーネル(メモリ管理、コマンドスケジューリング、モードセッティング英語版やライブラリ(cairo, pixman, FreeType, Fontconfig, Pango等)に移行したことだ。そして中央サーバプロセスでしなければならないことは、ほとんど残っていない。一方、[Xサーバ]は、Xプロトコルで会話することをサポートしなければならず、膨大な量の機能がある。それらの機能はもはや誰も使わない...。 それらの機能は、コードテーブル、グリフのラスタライズとキャッシング、XLFD (マジでXLFD!)、コアレンダリングAPI全体がある。コアレンダリングAPIは、点線、ポリゴン、大きな円弧、その他多くの1980年代スタイルの原始的なグラフィックを描くためのものである。

多くのことに対して、我々はXRandRXRenderCOMPOSIT英語版といった拡張を追加することでX.orgサーバをモダンにし続けてきた...。Waylandによって、我々はXサーバとすべてのレガシーテクノロジーをオプションへと移行できる。Xサーバがコアなレンダリングシステムから互換性のあるオプションに置き換わるまでは長い時間がかかるが、計画しなければ達成はできないのだ。

Waylandの初期バージョンでは、ネットワーク透過性英語版を提供していなかった。 しかし、Høgsbergは、2010年にネットワーク透過性が可能であることを記した[12]。 それは、2011年のGoogleサマーコードプロジェクトとして挑戦されたが成功しなかった[13]。 Adam Jacksonは、(VNCのような)"ピクセルスクレイピング"や (RDPSPICE英語版 X11のように)ネットワーク越しに"レンダリングコマンドストリーム"を送る方法で、Waylandアプリケーションへのリモートアクセスを目論んだ[14]。 2013年初頭、Høgsbergは、本物のコンポジタへ圧縮画像を送るプロキシWaylandサーバーを使ってネットワーク透過性の実験を行った[15][16]。 2017年8月、GNOMEはWayland下で最初のピクセルスクレイピングVNCサーバの実装を提示した。

ソフトウェア アーキテクチャ

プロトコル アーキテクチャ

Waylandプロトコルのアーキテクチャでは、クライアントとコンポジタがリファレンス実装ライブラリを使用して、Waylandプロトコルで通信する。

Waylandプロトコルはクライアントサーバモデルである。クライアントはピクセルバッファを画面上へ表示するよう要求するグラフィカルアプリケーションであり、サーバ(コンポジタ)はこれらのバッファの表示を制御するサービスプロバイダである。

Waylandリファレンス実装は、2層のプロトコルとして設計された。すなわち[17]

  • 下位レイヤあるいはワイヤプロトコル: 関係する2つのプロセス—クライアントとコンポジタ—の間のプロセス間通信と、それらが内部で変えるデータのマーシャリング (英語版) を扱う。
  • その上の高位レイヤ: クライアントとコンポジタがウィンドウシステムの基本機能を実現するために交換する情報を扱う。このレイヤは、"非同期オブジェクト指向プロトコル"として実装された[18]:9

下位レイヤはCで手作業で書かれたが、高位レイヤはXMLフォーマットで書かれたプロトコルの記述から自動生成された[19]。 このXMLで書かれたプロトコルの記述が変更されたときは、いつでもプロトコルを実装したCのソースコードを再生成できる。これによって、非常にフレキシブルで、拡張性が高く、エラーを防止したプロトコルになる。

Waylandプロトコルのリファレンス実装は、2つのライブラリ、すなわち、Waylandクライアントによって使われるlibwayland-clientライブラリと、Waylandコンポジタによって使われるlibwayland-serverライブラリである[18]:57

プロトコルの概要

Waylandプロトコルは、"非同期オブジェクト指向プロトコル"として記述されている[18]:9オブジェクト指向とは、コンポジタによって提供されるサービスが、同じコンポジタ上に存在する一連のオブジェクトとしてもたらされることを意味する。 各オブジェクトはインタフェースを持つ。インタフェースは、名前と、いくつかのメソッド(リクエストと呼ばれる)、いくつかの関連したイベントを持つ。それぞれのリクエストとイベントは0以上の引数を持ち、それぞれに名前とデータ型がある。プロトコルが非同期とは、リクエストが、同期した返信やACKを待つ必要がないことを意味する。これによりラウンドトリップタイムを避け、パフォーマンスが改善する。

Waylandクライアントは、あるオブジェクトがサポートしているリクエストを、そのオブジェクトへリクエストできる(メソッドを呼び出せる)。クライアントは、必要とされるデータをリクエストの引数として提供しなければならない。これが、クライアントがコンポジタからサービスを要求する方法である。次に、コンポジタは、イベントを(おそらく引数付きで)発行するため、オブジェクトによって情報をクライアントへ返す。これらのイベントは、あるリクエストに対する反応や、あるいは非同期の (入力デバイスからのイベントといった)内部イベントや状態変化としてコンポジタによって発行される。エラー状態もコンポジタによってイベントとして通知される[18]:9

オブジェクトへリクエストを発行できるクライアントのために、最初に、オブジェクトを識別するために使うID番号をサーバに伝える必要がある[18]:9。コンポジタには2種類のオブジェクトがある。グローバルオブジェクトと、非グローバルオブジェクトである。グローバルオジェクトは、生成時(そして廃棄時)にコンポジタによってクライアントへ通知される。一方、非グローバルオブジェクトは、通常、すでに機能の一部として存在している他のオブジェクトによって生成される[20]

インタフェースとその要求およびイベントは、Waylandプロトコルを定義する中心となる要素である。プロトコルの各バージョンは、どんなWaylandコンポジタにもあると期待されるインタフェースと、その要求およびイベントの集合を含んでいる。オプションとして、Waylandコンポジタは新しいリクエストとイベントをサポートする独自のインタフェースを定義して実装するかもしれない。それによって、コアプロトコル以上の機能へ拡張することができる[18]:10。プロトコルの違いを管理するため、それぞれのインタフェースは名前に加えて"バージョン番号"属性を持っている。この属性により、同じインタフェースの派生版を区別できる。 各Waylandコンポジタは、どのインタフェースが使用可能かだけでなく、それらのインタフェースがサポートしているバージョンも公開する[18]:12

Waylandコアインタフェース

現在のバージョンのWaylandプロトコルのインタフェースは、Waylandソースコードにあるprotocol/wayland.xmlで定義されている。これはXMLファイルであり、現在のバージョンに存在するインタフェースが、リクエスト、イベント、その他の属性と共にリストアップされている。このインタフェース集合は、どのWaylandコンポジタも最低限必要とされるインタフェースである。

いくつかのWaylandプロトコルでの最も基本的なインタフェースは、以下のとおりである[18]

  • wl_display – コアグローバルオブジェクト。Waylandプロトコル自身をカプセル化した特別なオブジェクトである。
  • wl_registry – グローバルレジストリオブジェクト。すべてのクライアントが利用できるよう、コンポジタがすべてのグローバルオブジェクトを格納する。
  • wl_compositor – コンポジタを表すオブジェクト。異なるサーフェイスを1つの出力へと結合することを担当する。
  • wl_surface – 画面上の四角形の領域を表すオブジェクト。位置、サイズ、描画内容(ピクセル)によって定義される。
  • wl_buffer – wl_surfaceに貼り付けたとき、表示する内容を提供するオブジェクト。
  • wl_output – 画面の表示可能領域を表すオブジェクト。
  • wl_pointer, wl_keyboard, wl_touch – ポインタキーボードといった入力デバイスを表すオブジェクト。
  • wl_seat – 1台のコンピュータを複数人で同時に使うシステム(英語版)において、1つのシート(入出力デバイスの集合)を表すオブジェクト。

標準的なWaylandクライアントセッションは、wl_displayオブジェクトを使ってコンポジタに接続することで開始する。これは接続を表す特別なローカルオブジェクトであり、サーバー内には存在しない。このインタフェースを使うことで、クライアントはコンポジタからwl_registryグローバルオブジェクトを要求できる。wl_registryオブジェクトには、すべての名前があり存在しているグローバルオブジェクトが格納され、クライアントは望むオブジェクトを紐付ける。通常、クライアントは最低限1つのwl_compositorオブジェクトを紐付ける。アプリケーションの出力をディスプレイに表示するため、wl_compositorオブジェクトから、1つ以上のwl_surfaceオブジェクトを要求する[20]

Wayland拡張インタフェース

Waylandコンポジタは、自身の追加インタフェースを定義して公開することができる[18]:10。この特徴によって、コアインタフェースによって提供される基本機能を超えてプロトコルを拡張できる。そしてこれは、Waylandプロトコル拡張を実現する標準的な方法になった。コンポジタは、特化したあるいはユニークな特徴を提供するために、カスタムインタフェースを追加できる。WaylandリファレンスコンポジタであるWestonは、新しいコンセプトやアイデアのためのテストベンチとして、あたらしい実験的なインタフェースを実現するためにカスタムインタフェースを使用した。それらのコンセプトやアイデアは、その後にコアプロトコルの一部になった(たとえばwl_subsurfaceインタフェースは、Wayland 1.4で追加された)[21]

コアプロトコルの拡張プロトコル

XDG-Shellプロトコル

XDG-Shellプロトコル(XDGについてはfreedesktop.orgを見よ)は、Waylandコンポジタ(Westonに限らず)でサーフェイスを管理するための拡張手段である。サーフェイスを操作(最大化、最小化、フルスクリーンなど)するための伝統的な方法は、wl_shell_*()関数を使用することだった。この関数は、Waylandコアプロトコルの一部で、libwayland-clientにある。対して、XDG-Shellプロトコルの実装は、Waylandコンポジタによって提供される。そのためxdg-shell-client-protocol.hヘッダがWestonソースツリーに含まれる。それぞれのWaylandコンポジタは自身の実装を提供することを想定している。

2014年6月 (2014-06)現在, XDG-Shellプロトコルはバージョン管理されておらず、まだ変更する可能性がある。

xdg_shellは、長期的にはwl_shellを置き換えることを目指したプロトコルである。しかし、現状ではxdg_shellは、Waylandコアプロトコルの一部ではない。xdg_shellは、開発版のAPIとして始まり、当初は開発用に使われた。これらの特徴がいくつかのデスクトップシェルによって要求されるとなれば、最終的には安定版へ移行できる。xdg_shellは、主に2つの新しいインタフェース:xdg_surfaceとxdg_popupを提供する。xdg_surfaceインタフェースは、動かせ、サイズ変更ができ、最大化等ができるデスクトップスタイルウィンドウを実現する。xdg_surfaceインタフェースは、親子関係を生成するためのリクエストを提供する。xdg_popupインタフェースは、デスクトップスタイルのポップアップとメニューを実現する。xdg_popupは、常に別のサーフェイスのための一時的なものであり、暗黙的なグラブを持つ[22]

IVI-Shellプロトコル

IVI-Shellは、Waylandコアプロトコルの拡張で、車内エンターテインメント (IVI) デバイス[23]をターゲットにしている。

レンダリングモデル

Waylandコンポジタとそのクライアントは、フレームバッファに直接描画するためにEGL(英語版)を使用する。X.Orgサーバは、XWayland(英語版)とGlamor(英語版)で動かしている。

Waylandプロトコルは、レンダリングAPIを含んでいない[18]:7[8][24][25]。その代わり、Waylandはダイレクトレンダリングモデルを採用している。ダイレクトレンダリングモデルでは、クライアントはウィンドウコンテンツをコンポジタと共有できるバッファへ描画しなければならない[18]:7。そのため、クライアントはCairoOpenGLなどのライブラリを使って、自分自身ですべてをレンダリングすることも選択できる。あるいは、QtGTKといった、Waylandをサポートする高位のウィジェットライブラリのレンダリングエンジンに頼ることもできる。クライアントは、特定のタスクをこなすために、オプションとしてその他の特化したライブラリを使用することもできる。たとえばフォントレンダリング(英語版)のためにFreeTypeを使用できる。

レンダリングされたウィンドウコンテンツの結果(バッファ)は、wl_bufferオブジェクトに格納される。このオブジェクトのデータ型は、実装依存である。コンテンツデータがクライアントとコンポジタとの間で共有可能でなければならないことだけが唯一要求される。もしクライアントがソフトウェア(CPU)レンダラを使用し、その結果がシステムメモリに格納されるなら、クライアントとコンポジタは、バッファ間のやり取りを余分なコピーなしに実現するため、共有メモリを使用できる。Waylandプロトコルはすでにこの種の共有メモリバッファに何も追加することなしに対応している。共有メモリバッファは、wl_shmおよびwl_shm_poolインタフェースによって実現できる[18]:11, 20-21。この方法の欠点は、コンポジタはそれを表示するために追加の作業(通常、共有データのGPUへのコピー)を必要とする可能性があることである。これにより、グラフィックパフォーマンスは低下する。

最も一般的なケースでは、クライアントがOpenGLOpenGL ESVulkanといったハードウェア(GPU)アクセラレーションのためのAPIを使って、ビデオメモリバッファへ直接レンダリングする。クライアントとコンポジタは、このGPU空間のバッファを参照するための特別なハンドラを用いて共有できる[26]。この方法は、コンポジタに余計なデータコピーをしないようにする。結果として、グラフィックパフォーマンスは向上し、よりよい方法である。コンポジタはAPIクライアントとして、同じハードウェアアクセラレーションAPIを使って、ディスプレイへ描画する最終的なシーンのコンポジションをかなり最適化できる。

レンダリングが共有バッファ内で完成したとき、Waylandクライアントはバッファのレンダリングされたコンテンツをディスプレイに表示するため、コンポジタを導くべきである。そのために、クライアントはレンダリングされたコンテンツを格納するバッファオブジェクトをサーフェイスオブジェクトに紐付ける。そして"commit"リクエストをサーフェイスに送り、バッファの制御をコンポジタヘ転送する[17]。それから、クライアントは、もしまた別のフレームをレンダリングするためにバッファを再利用するなら、コンポジタがバッファを開放するのを待つ(イベントによって通知される)あるいは新しいフレームをレンダリングするため別のバッファを使用し、レンダリングが完了した時にこの新しいバッファをサーフェイスに紐付け、そのコンテンツをコミットすることもできる[18]:7。数個の関連するバッファやその運用を含めて、レンダリングに使用される方法は、全体的にクライアントの制御下にある[18]:7


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