JPモルガン・チェース
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概説
合併と公的資金
2000年にケミカル(チェース・マンハッタン)とJPモルガン・アンド・カンパニー(JPM)との経営統合で誕生した。その後、アラバマ州で地方債を発行し手数料を稼いだ。賄賂が多方面に支払われていたので事件化した。JPモルガン・チェースは、自治体の財政にとって危険な債務債券化協定を結んでいた。
2002年、メリルリンチやシティグループ同様、エンロンの財務状態を知っていたことが報じられた。
2004年、当時米国6位の商業銀行バンク・ワン[注釈 3]を買収。2006年4月7日、法人信託部門をバンク・オブ・ニューヨークへ譲渡し、代わりにBNYのリテール部門を取得した。さらに、2007年以降の世界金融危機で経営状態の悪化した銀行を買収し規模を拡大した。2008年5月に当時米国5位の投資銀行ベアー・スターンズ[注釈 4]を買収。このベアー・スターンズがリビア投資庁(Libyan Investment Authority)へ2億ドルを貸し付け、600万ドル以上の賄賂をカダフィ政権に供与して2007年7月に融資を成約させたという。この疑いでリビア投資庁は2018年9月にJPモルガン・チェースを訴えた[2]。ソジェンも同ファンドに賄賂で損失を与えた事件で罰金を課されている。2008年9月JPモルガン・チェースは当時米国最大の貯蓄貸付組合 ワシントン・ミューチュアル[注釈 5]を買収。2008年10月13日 アメリカ財務省長官、連邦準備理事会議長、通貨監督局、連邦預金保険公社、ニューヨーク連邦準備銀行に不良債権救済プログラム(TARP)実施について同意を求められた。 2007年の金融危機以降、連邦準備制度のベイルアウトを受けていた。2009年3月、JPモルガンの組んだ合法的インサイダー取引スキームをウィキリークスが公開した[3]。
アメリカ最大の銀行
投資銀行部門であるJPモルガンは、2006年3月に東京支店が、TOPIX先物の約定指数を操作したことに対して業務停止処分を受けた[4]。また、JPモルガンは同年4月1日設立の年金積立金管理運用独立行政法人から委託されて、2014年10月現在まで日本株式のアクティブ運用を行っている。JPモルガンは投資銀行業務のグローバル総合リーグテーブルにおき、2009~2012年の4年連続でゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー等を上回り、首位であった[5]。2013年、JPモルガンは電力価格操作により、アメリカ合衆国エネルギー省から4.1億ドルの制裁金を課された[6][7]。この価格操作はスマートメーター普及中のカリフォルニアで行われた。親会社の前身であるJPモルガン・アンド・カンパニーは、戦間期にトーマス・エジソンと電力事業を寡占していた。この独占体はゴールドマンの投信ピラミッドに連結して世界恐慌を大衆化させた。
2011年10月にバンク・オブ・アメリカを抜き、アメリカ最大の資産を擁する銀行となった[8]。それまでグループ企業だけでなく自社の資本調達にまでミューチュアル・ファンドを活用していたものとみられる。同年、アメリカン・センチュリーがJPMファンド販売の役割を全うしたのでCIBCに41%買収され、そのうちおよそ10億ドル分が野村証券に転売された。
2013年12月4日、JPモルガン・チェースはカルテルを使ったLIBOR等不正操作により欧州委員会から制裁金を課された。
2014年1月、バーナード・L・マドフ受刑者による巨額詐欺事件に関し、米当局などに約26億ドルを支払うことに合意した。銀行秘密取引の報告等に関する法律(Bank Secrecy Act of 1970)による不審取引報告を怠った疑い。検察官は、受刑者の犯行には過去にないほど十分な兆しがあったにもかかわらず、同行は見逃したと主張している[9]。
同年11月、ルクセンブルク・リークスで租税回避が発覚した。
ビッグビジネス
2015年3月、先の電力価格操作は親会社のJPモルガン・チェースに対するクラスアクションにまで発展していることが報じられた[10]。9月15日、ブロックチェーン開発コンソーシアムR3CEV LLC を発足させた。
2016年11月、ドナルド・トランプの顧問らがジェームズ・ダイモンを財務長官に推挙する一方[11]、JPモルガン・チェースは中国での事業獲得のために政府高官の親族採用で便宜を図ったとされる問題で、2億6400万ドルの制裁金を支払うことで当局と合意した[12]。採用の事実そのものはこれまで数回報道されている。また、制裁金は連邦準備制度にも支払われる。
JPモルガンの中国進出は今に始まったことではない。1915年にフランク・ヴァンダーリップがAmerican International Corporation を創設した。資本金は5千万ドル。AIC はビジネスを目的に中露・南米へ資金と銀行と役人を送り出した。JPモルガンはAIC 三代目の副会長ウィラード・ストレート(Willard Dickerman Straight)を働かせてイギリスを懐柔した。AIC 子会社のSiems-Carey Company は、中国政府から京広線武昌~長沙間の敷設を認可された。AIC は日本興業銀行と協力関係にあるといわれたが、それらしく1917年三井物産と京杭大運河プロジェクトに合意した。三井物産はゼネラル・エレクトリック、アメリカン・ロコモティブ、バキューム・オイル、Swift & Company の総代理人であった。[13]
2017年1月、ブラックロックの資産1兆ドル超を保管・管理するカストディアン業務契約を結んだ。JPモルガン・チェースは約2年かけてブラックロックの資産をステート・ストリートから移す。[14][15]
同年12月21日、1MDBの資金を流出させ同ファンドを破綻させた巨額取引のあつかいにおいて、JPモルガン・チェース・スイスが資金洗浄防止規則に反した事実をスイス当局(FINMA)が見つけた。ロスチャイルド、クーツ商会(現ナットウエスト・グループ傘下)、UBS、クレディ・スイスに続く摘発であった。重大な違反とされたにもかかわらず、罰金その他の制裁は一切なかった。銀行団の摘発は続いているが、当局は最後の対象について行名を明らかにしなかった。[16][17][18]
2018年3月、ユーロクリアから100億ユーロのリビア凍結資産が消失した事実をベルギー当局が見つけた[19]。
注釈
- ^ 預金、クレジットカード、住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、保険、投信、オンラインバンキング等。
- ^ 資産管理、証券業務、プライベートバンク、プライベートエクイティ。
- ^ 総資産2900億ドル。1800支店。2003年9月現在。
- ^ 総資産3945億ドル。2008年2月現在。
- ^ 総資産3070億ドル。2207支店。2008年9月現在。受け皿となっていた連邦預金保険公社から支店銀行を19億ドルで買収。
- ^ かつての水道事業に因んで、木製水道管の断面が図案化されている。
- ^ ユーロクリアにも看板がない。
- ^ 反体制派の標的ともなり、1920年には本部前でテロリストによる爆弾事件が発生。33人が死亡し400人が重軽傷を負ったこの事件では、「もはや我慢の限界だ。政治犯を解放しなければ、貴様ら全員に死が訪れる」という中身の脅迫文が無政府主義者を名乗る者から送り付けられている。FBIが捜査にあたったが、1940年に最後の事件報告書を提出し、ついに犯人は特定されなかった。
- ^ 1927年に訪日、勲二等旭日重光章を胸に天皇を拝謁している。
- ^ JPM は1979年に参入した。
出典
- ^ Barr, Alistair (2007年3月5日). “J.P. Morgan is largest U.S. hedge-fund firm”. MarketWatch. 2007年8月2日閲覧。
- ^ NewYorkBusinessJournal, JPMorgan Chase slapped with bribery allegations from Libyan fund, Sep 20, 2018, 2:40am
- ^ ウィキリークス Whistleblower exposes insider trading program at JP Morgan March 16, 2009
- ^ 金融庁 JPモルガン証券会社東京支店に対する行政処分について 2006年3月9日
- ^ Kesseler, ncent (2010年12月31日). “Global Investment Banking Review”. Thomson Reuters Data Intelligence. 2011年11月29日閲覧。
- ^ ガーディアン JP Morgan to pay $410m in penalties for manipulating electricity prices Tuesday 30 July 2013
- ^ エネルギー省 Prohibition of Energy Market Manipulation See: JP Morgan Ventures Energy Corporation
- ^ Son, Hugh (2011年10月18日). “BofA Loses No. 1 Ranking by Assets to JPMorgan as Chief Moynihan Retreats”. Bloomberg. 2011年11月29日閲覧。
- ^ ウォール・ストリート・ジャーナル電子版 JPモルガン、マドフ事件めぐり当局と和解―26億ドル支払い 2014年1月8日07:30 JST
- ^ ロイター J.P. Morgan faces suit over power market manipulation claims Mar 11, 2015
- ^ ロイター トランプ氏、財務長官にJPモルガンのダイモン氏検討=関係筋 2016/11/11
- ^ ロイター 米JPモルガンに制裁金290億円、中国高官の親族採用問題で 2016/11/18
- ^ Roberta Allbert Dayer, Bankers and Diplomats in China 1917-1925: The Anglo-American Experience, Routledge, 2013, pp.43-49.
- ^ ウォールストリート・ジャーナル電子版 「JPモルガン、カストディ米2位に浮上か ブラックロックと契約で」 2017年1月26日
- ^ Reuters, "BlackRock jilts State Street, moves $1 trillion in custody assets to JPMorgan", January 26, 2017.
- ^ Reuters, "Swiss find serious shortcomings at JPMorgan in 1MDB case", "Swiss find serious shortcomings at JPMorgan in 1MDB case", December 21, 2017
- ^ New York Times, "JPMorgan ‘Seriously Breached’ Money-Laundering Rules, Swiss Regulator Says", Dec. 21, 2017
- ^ TheLocalCh. Watchdog says Swiss arm of JPMorgan broke anti-money laundering rules, 22 December 2017
- ^ LibyanExpress, Belgium: 10 billion euros of frozen Libya assets disappeared from Euroclear Bank, Thursday 8 March 2018
- ^ a b c d e "Chemical Banking Corporation History", International Directory of Company Histories, Vol. 14. St. James Press, 1996
- ^ 高石末吉 『覚書終戦財政始末』第12巻 大蔵財務協会 1971年 pp.105, 280.
- ^ 市村斌「わが国の終戦後における貿易再開の経緯と外国為替公認銀行の歴史について」(『外国為替』第121号 昭和30年7月1日)p.30.
- ^ 日銀『日本銀行沿革史』第4集 第15巻 pp.385, 402.
- ^ Anthony Vice, The strategy of takeovers, McGraw-Hill, 1971.
- ^ a b Gino Cattani, An Evolutionary View of Internationalization: Chase Manhattan Bank, 1917 to 1996, The Wharton Financial Institutions Center, August 2002, pp.13-26.
- ^ Mira WILKINS、 Mira Wilkins, The History of Foreign Investment in the United States, 1914-1945, Harvard University Press, 2009, pp.283-284.
- ^ モルガン・ギャランティ・トラスト自体は1959年よりずっと早くから存在した。1920年5月25日付、および1864年4月13日付の登記を発見した。記事は、さらなる精査と見直しを要する。
- Bizapedia MORGAN GUARANTY TRUST CO. OF NEW YORK Vermont Secretary Of State Business Registration
- MORGAN GUARANTY TRUST COMPANY OF NEW YORK Maine State Department Business Registration
- ^ ジョエル・セリグマン 『ウォールストリートの変革』 下巻 創成社 2006年 466頁
- ^ 日経新聞朝刊 1983年7月5日 第一面
- ^ International Directory of Company Histories, Vol.91, pp.273-284.
- ^ “Bank subsidy for Ground Zero move”. BBC News (2007年6月14日). 2007年8月2日閲覧。
固有名詞の分類
財閥 |
三井財閥 片倉財閥 JPモルガン・チェース 鍵冨三作財閥 CPグループ |
アメリカ合衆国の金融機関 |
サーベラス・キャピタル・マネジメント ダイナースクラブ JPモルガン・チェース バークシャー・ハサウェイ ニューヨーク証券取引所 |
金融持株会社 |
かざかフィナンシャルグループ NKSJホールディングス JPモルガン・チェース ワコビア 東京海上ホールディングス |
アメリカ合衆国の銀行 |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン 第一合衆国銀行 JPモルガン・チェース ワコビア ベアー・スターンズ |
アメリカ合衆国の企業 |
Bacou USA, Inc. Advanced Power Technology JPモルガン・チェース ZEVEX International, Inc TippingPoint Technologies |
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