閏年 太陽暦

閏年

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 14:38 UTC 版)

太陽暦

太陽暦では、季節に暦を一致させるため、暦年の平均の長さを平均回帰年(365.242 189 44日≒365日5時間48分45.168秒[注 2])になるべく一致させる。

太陽暦では、平年は365日であり、閏年は閏日が挿入されて366日である。現在広く採用されているグレゴリオ暦では、閏年は400年間に97回ある。

古代エジプト

古代エジプトの暦には閏年はなく、1暦年は常に365日であった。そのため、4.129年に1日の割合で暦と季節がずれた。当時すでに回帰年は365.25日という観測値が得られていたが、暦に反映されることはなかった。農民は暦ではなく恒星シリウスの動きを頼りに農作業のスケジュールを決めた。

ユリウス暦

ユリウス暦は、紀元前46年古代ローマで採用され、4年に1回を閏年としていた。但し、導入直後は混乱が見られ、3年に1回を閏年としたり、暫く閏年を置かない期間があった(詳細はユリウス暦を参照)。

ユリウス暦では、閏年には2月の日数を1日増やして29日とする。閏日を2月に挿入したのは、ローマ暦の初期にはMartius(後の3月)が年初でFebruarius(後の2月)が年末だったからである。厳密には共和政初期にIanuarius(後の1月)を年初とするように変更されたが、まだ古い慣習が残っていた。

ユリウス暦の置閏法では1暦年は平均365.25日となり、約128年に1日の割合で暦と季節がずれるが、これでも閏年を置かない場合に比べれば大きな進歩であった。しかし、1500年以上に亘って使われていくうちに、次第に暦と天文学上の現象がずれてきた。ローマ・カトリック教会では325年ニカイア公会議春分3月21日と定めてそれを基に復活祭の日付を決めることにしたが、日数が多いが故に、16世紀には天文学上の春分が暦の上では3月11日となってしまい、問題視されるようになった。

グレゴリオ暦

ユリウス暦では春分日がずれる問題を解決するため、ローマ教皇グレゴリウス13世は、当時を代表する学者たちを招集して委員会を作り、暦の研究を行わせた。こうして、1582年グレゴリオ暦が制定された。グレゴリオ暦はその後数百年かけて各国で採用され、現在に至っている。

グレゴリオ暦では、次の規則に従って400年間に97回の閏年を設ける。

  1. 西暦年が4で割り切れる年は(原則として)閏年。
  2. ただし、西暦年が100で割り切れる年は(原則として)平年。
  3. ただし、西暦年が400で割り切れる年は必ず閏年。

理解しづらければ閏年 § コンピュータシステムと閏年も参照するとよい

この置閏法によると、400年間における平均1暦年は、365+97/400=365.2425日(365日5時間49分12秒ちょうど)となり、平均回帰年との差は、1年当たり26.832秒(2015年における値)となって、かなり誤差が小さくなる。この誤差による暦と季節とのずれは約3320年で1日となる。上記の但し書きを1回で表すと、「400年に3回、100で割り切れるが400で割り切れない年は、例外で平年とする」ということになる。

グレゴリオ暦では、ユリウス暦と同じく、閏年には2月が29日まである。従って、現在のグレゴリオ暦では2月29日閏日である。しかし、西洋の古い伝統を引き継ぐ地域では、2月24日が閏日とみなされる。詳細は「閏日#欧州における歴史」(欧米で2月24日が閏日であることの由来)を参照。

日本における閏年の根拠法

日本においては、閏年の判定は西暦ではなく皇紀(神武天皇即位紀元)によって行うことが法令(明治31年勅令第90号(閏年ニ関スル件))により定められ、現在でも効力を有する[1]

明治三十一年勅令第九十号(閏年ニ関スル件)

神武天皇即位紀元年数ノ四ヲ以テ整除シ得ヘキ年ヲ閏年トス但シ紀元年数ヨリ六百六十ヲ減シテ百ヲ以テ整除シ得ヘキモノノ中更ニ四ヲ以テ商ヲ整除シ得サル年ハ平年トス

現代の表記に直すと次の通りである。

神武天皇即位紀元年数(皇紀年数)を4で割って、割り切れる年を閏年とする。ただし、皇紀年数から660を引くと100で割り切れる年で、かつ100で割った時の商が4で割り切れない年は平年とする。

これは、西暦年数から閏年を判定する方法と同値である。

なお、西暦何年が閏年であったかについては、 下2桁が4の倍数かつ400を割り切れない100の倍数を除いた年、 「[]曜日から始まる閏年」の項目を参照。

グレゴリオ暦の閏年に関するトピックス

近代オリンピック夏季オリンピック1896年以来、4年に1回、西暦年が4で割り切れる年に開催される(非公式扱いの1906年アテネ大会、例外的に延期された2020年東京大会は除く)。そして、1924年に開始された冬季オリンピックも、1992年アルベールビル大会までは夏季と同じ西暦年が4で割り切れる年に開かれていた。このため、閏年はスポーツ関係を中心にしばしば「オリンピックイヤー」という名称で呼ばれている。しかし、オリンピック憲章における開催年規定には閏年との関連は言及されていない上、第2回パリ大会が開催された西暦1900年は、閏年ではなく平年であった(100で割り切れるが400で割り切れない)ので、この呼称は正確とは言えない。なお、西暦2100年も、100で割り切れるが400で割り切れない年数なので、夏季オリンピックが開かれる年であるが、平年である。

アメリカ合衆国大統領選挙も、最初の1789年の選挙を除き、西暦年が4で割り切れる年に実施されてきたが、それらの年は閏年とは限らない[注 3]

閏年の西暦年は必ず4で割り切れるので、閏年の十二支のいずれかである。また、400年に3回の例外が来ない限り、同じ曜日2月29日は28年周期で繰り返される(→日)。

西暦2000年は、3番目のルールに該当する400年に1回の閏年であった。しかし、2番目までのルールをもって、2000年を平年と誤解する者もいた。これは2000年問題の一因でもあった。次回の4で割り切れる平年は西暦2100年である。

グレゴリオ暦の閏年に関する規則より、グレゴリオ暦では400年周期で同一パターンが繰り返されることになる。この400年の総日数(365日×400+97日=146 097日)は7で割り切れるため、曜日も400年周期で繰り返すことになる。そのため、特定の日が特定の曜日(例えば3月1日月曜日)になる割合は、厳密にいうと7分の1にはならない。また、3番目のルールに当てはまる400年に1回の閏年(いわゆる「世紀末閏年」)の2月29日の曜日は、必ず火曜日になる。この例の発生は、次回は2400年の予定である。

  • 2000年から2399年までの間に1月1日が日曜日になる割合は58/400、土曜日になる割合は56/400である。
  • 不吉とされる13日の金曜日であるが、13日が金曜日となる割合は7つの曜日の中で最も高い(688/4800=0.14333...)。

修正ユリウス暦

1582年グレゴリオ暦への改暦後も正教会ユリウス暦を使用し続けていたが、1923年ギリシャ正教会などいくつかの正教会修正ユリウス暦と呼ばれる暦を採用した。この暦の導入にあたって、日付をグレゴリウス暦と合わせた上で、置閏法を以下の様に改めた。

  1. 西暦年が4で割り切れる年は閏年。
  2. ただし、西暦年が100で割り切れる年は平年。
  3. ただし、西暦年を900で割った余りが200または600になる年は閏年。

規則の3番目がグレゴリオ暦と異なる。この置閏年では、1暦年は平均365.242 222日となり、暦と季節が1日ずれるまでに約4万3500年を要する。これはグレゴリオ暦より精度がいい。

100で割り切れる年のうち閏年となるのは、グレゴリオ暦では1600年2000年2400年、2800年、3200年、3600年…であるが、修正ユリウス暦では2000年2400年、2900年、3300年、3800年…である。

2800年2月28日までは両方の暦は一致している。しかし、2800年がグレゴリオ暦では閏年なのに対し、修正ユリウス暦では平年になり、そこで日付が1日ずれる。2900年は逆に修正ユリウス暦だけが閏年となり、日付は再び一致する。それ以後は断続的にこのようなずれが生まれ、5200年2月28日を最後に日付が一致することはなくなる。

閏週

太陽暦の置閏法には、閏週を挿入する方法もあり得る。

平年を364日とするもの

余日及び閏日を廃止し、1暦年を週の整数倍にする方法で平年は年52週(即ち364日)・閏年53週(即ち371日)とする方法である。ただし、現行のグレゴリオ暦よりも暦と季節のずれが大きくなる点が問題点としてあげられている。これまでに以下の方法が提案された[2]

  • 西暦年数が5の倍数であって40の倍数でないとき、および400の倍数のときは閏週年とする。1暦年の平均の長さは365.242 500日になる。
  • 西暦年数が5の倍数のときは閏週年とする。ただし、25の奇数倍および400倍数のときは平年とする。1暦年の平均の長さは365.242 500日になる。
  • 62年を1周期として計11回、すなわち6・6・5・6・6・5・6・6・5・6・5年目を閏週年とする。1暦年の平均の長さは365.241 935日になる。

平年を365日とするもの

約29年毎に閏年を設け、その年に1週間の閏週を挿入するという置閏法も可能であり、そのような暦が提案されたこともある(en:Leap week calendar)。この暦の根拠は次の通りである。

 7日/(365.242 1892日 - 365日) = 28.903年 (365.242 1892日は2019年の太陽年

したがって、29年間ごとに7日の閏日(つまり1週間の閏週)を挿入すればよい。1235年につき1日の差が出る。








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