金属器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/22 04:15 UTC 版)
資料特性
金属器の遺物(考古資料)としての特性は、先史時代と歴史時代を通じて、何度も繰り返し鋳直されリサイクルされてきたことである。使用されなくなれば通常は廃棄される土器、石器、陶磁器などとは、この点が異なる。
特に利器としての鉄器は、使用頻度の高い実用品であり、損耗や腐食の度合いの著しい生活必需品であったことから、その都度リサイクルされたものと考えられる。したがって、威信財などとして墓に副葬されたものを除くと、実際には、遺跡からの出土量を使用量が大きくうわまわっていたことが指摘できる。遺跡によっては金属器がまったく出土しないこともあるが、それはそこで金属が使用されなかったことを意味しない。出土量が実際に用いられた量にくらべ格段に少ないため、金属器そのものの型式学的研究や編年作業は遅れており、金属器による遺構・遺跡の年代決定はなおのこと難しい。逆に言えば、製鉄遺跡をはじめとする生産遺跡の営まれた時期の年代特定も、土器や陶磁器の出土がなければ難しいことを意味している。
なお、金属器のうち、工芸品的価値の高いものは伝世するものが多く、墳墓への副葬品や硬貨も含め、文字や年代の記されたものも少なくない。これらは、金石文研究の対象となる。
鋳造品と鍛造品
金属器の多くは、土などでつくった鋳型に溶解した鉱石や金属を流しこんでつくる鋳造品である。しかし、特に鉄器に関しては、最終段階で鍛冶の作業をおこない、たたき上げによってつくる鍛造品がある。日本刀やドイツのゾーリンゲンのナイフは鍛造品のなかでも特に利器としての品質に優れたものとして世界的にも知られている。ともに中世の徒弟制度のもとで発展し、こんにちまで伝えられてきた技術をベースとして生産されている。
参考文献
- 潮見浩『図解 技術の考古学』有斐閣 有斐閣選書、1988年4月、ISBN 4-641-28029-0
- ピエール・ミケル「金属はすべて貴重品」『カラーイラスト 世界の生活史2 ナイルの恵み』18–19頁、東京書籍、1984年11月
- ジョバンニ・カセリ「青銅器時代の北方民族」『カラーイラスト 世界の生活史20 古代文明の知恵』24–27頁、東京書籍、1986年4月
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