貧血 治療

貧血

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 20:50 UTC 版)

治療

  1. 原因の除去。貧血を招いている基礎疾患の治療が基本である。特に出血が原因であるならば急いで出血を止める必要がある。鉄欠乏性貧血ならば鉄分の摂取、行軍ヘモグロビン尿症ならば運動量の削減や靴の改善など治療の方法はそれぞれの原因次第である。ただし治療が困難な血液疾患は原因疾患の治療と平行して、対症療法として輸血を行う。
  2. 除去可能な原因の場合でも、貧血の程度が重い場合には輸血で赤血球を補給する必要がある。
  3. 食事療法、赤血球の増産に必要な栄養を十分に補給する[9]

逆利用

多くの病原体はその増殖に多量の鉄を要するため、血清鉄濃度を低下させることは炎症の原因となる菌の増殖を抑制して抗菌作用も発揮することになるが、臨床的には弱い作用であり実際に利用され無い[10]。ヘプシジン(en:Hepcidin)は肝臓で産生される一種のペプチドホルモンであり、腸からの鉄の過剰な吸収を抑制する作用を有し、抗菌作用も指摘されている[10]ラクトフェリンは、母乳唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンは、強力な抗菌活性を持つことが知られている。グラム陽性グラム陰性に関係なく多くの細菌は、生育に鉄が必要である。トランスフェリンと同様、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで、細菌の増殖を抑制する[11][12]

通常、貧血は健康ではない状態であるが、これを他の症状の治療に利用することがある。ウイルス性肝炎を含む肝炎では、肝臓細胞分が蓄積される。これはアポトーシスを引き起こすことで、傷付いた肝細胞を排除しようとする免疫機能の働きで、この肝臓細胞内の鉄分が活性酸素を細胞内に呼び込んでアポトーシスが起こされる訳だが、肝炎ではこれらアポトーシスが過剰に機能し、放って置けば肝硬変を引き起こす。これを食い止めるために、食事制限などによって人為的に鉄分欠乏状態を起こさせる。

しかし既に鉄分が肝臓細胞に過剰に蓄積されている場合には、早急に鉄分を消費させる必要が出てくる。この際、瀉血によって人為的に貧血状態を引き起こさせ、ヘモグロビン合成に鉄分を消費させるという除鉄療法と呼ばれる治療法や鉄キレート療法が行われる[13]

その他

  • 生理的貧血と言って、ヒトの乳児期において一時的に生ずる貧血が存在する。
  • ウマ類にのみ発症する疾病として、高熱と貧血症状を起こして衰弱死する馬伝染性貧血という病気がある。ただし、これはウイルスの吸血昆虫を媒介とした感染により起きる伝染性の疾病であり、症状は本項の貧血と類似するものがあるが、発病の成立については大きく異なる。
  • 1990年代の日本において、朝食を食べない小中学生の貧血が社会問題化していた。
  • 小児期の貧血症状を呈しない程度の鉄欠乏は、発達遅延や学習障害の要因となっている可能性が指摘されている[14][15]

  1. ^ a b c 浅野『三輪血液病学』p952
  2. ^ a b c 小川『内科学書』 p64
  3. ^ 外来語”. 一般社団法人 東京都病院薬剤師会. 2017年12月30日閲覧。
  4. ^ 業界用語辞典”. 日研メディカルケア. 2017年12月30日閲覧。
  5. ^ 杉本『内科学』pp1602
  6. ^ 中尾『血液診療エキスパート・貧血』p2
  7. ^ a b c 小川『内科学書』 p64-66
  8. ^ a b 浅野『三輪血液病学』p955
  9. ^ 浅野『三輪血液病学』p958-959
  10. ^ a b 友杉直久、2.ヘプシジンの発見とその後の発展 『日本内科学会雑誌』 2010年 99巻 6号 p.1180-1187, doi:10.2169/naika.99.1180
  11. ^ 島崎敬一「ミルクのラクトフェリン」『乳業技術』第51巻、日本乳業技術協会、2001年、 1-21頁、 ISSN 13417878NAID 40005107444
  12. ^ 金完燮、島崎敬一 著「ラクトフェリンと微生物の攻防 その多様性」、第2回ラクトフェリンフォーラム実行委員会編 編 『ラクトフェリン2007 :ラクトフェリン研究の新たな展望と応用へのメッセージ』日本医学館、東京、2007年、9-17頁。ISBN 978-4-89044-632-2 
  13. ^ 日野啓輔、仁科惣治、是永匡紹、慢性肝障害における鉄代謝異常と除鉄療法 『日本内科学会雑誌』 99巻 (2010) 6号 p.1248-1254, doi:10.2169/naika.99.1248
  14. ^ Oski, Frank A and Honig, Alice S and Helu, Brenda and Howanitz, Peter (1983). “Effect of iron therapy on behavior performance in nonanemic, iron-deficient infants”. Pediatrics (American Academy of Pediatrics) 71 (6): 877-880. doi:10.1542/peds.71.6.877. https://doi.org/10.1542/peds.71.6.877. 
  15. ^ 北島晴夫「古くて新しい問題,鉄欠乏」『日本小児血液学会雑誌』第14巻第2号、日本小児血液・がん学会、2000年、 51-59頁、 doi:10.11412/jjph1987.14.51ISSN 09138706NAID 10029308883


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