裸子植物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 07:27 UTC 版)
下位分類
近年の分子系統解析の結果から、現生裸子植物は単系統であることは確実視されている[13][14][15][16][17][89][11][12]。そして現在では現生裸子植物の系統関係は、ソテツ類とイチョウ類は姉妹群となり[90]、残るマツ目、グネツム目、ヒノキ目がクレードをなし[14]、それら2つの系統が姉妹群をなすとする系統関係が有力である[16][17][89][12][91]。
初期の裸子植物はシダ種子類(シダ種子植物、シダ状種子植物[92]、Pteridospermatophyta、英: seed ferns)と呼ばれるが、これは人為的にまとめられた群で、現生種子植物、現生裸子植物、被子植物のそれぞれの祖先群を含む多系統群である[6][93][35]。石炭紀からペルム紀にかけてのシダ種子類はカラモピティス目、ブテオキシロン目、リギノプテリス目、メズロサ目、カリストフィトン目の5群が認識されているが、これも人為分類である[93]。シダ種子類はほかに Dicranophyllales, Nilssoniales, Fredlindiales, Matatiellales, Hamshawviales, Alexiales, Hlatimbiales、そして Axelrodiales といった目を含むこともある[94]。このうち、Hamshawviales、Axelrodiales、Fredlindiales の3目は生殖器官や葉の構造がイチョウ目、グネツム目、ベネチテス目などと類似していることから類縁性が指摘されているが、他の群については類縁性を示す特徴は不明である[94]。また、歴史的にはグロッソプテリス類、ペルタスペルマ類、コリストスペルマ類、カイトニア類もシダ種子類として扱われていたが[95]、現在は生殖器官や栄養器官の特徴が明らかになっているものに関しては独立した分類群として扱われることが多い[96]。
以下に McLoughlin (2020) および 西田 (2017)によって挙げられる裸子植物の化石目を示す[注釈 7]。
現生裸子植物
現生裸子植物を構成する目および科は以下の通りである[23]。McLoughlin (2020) では、ヒノキ類はマツ目に内包され、この場合針葉樹目 Coniferales と同義とされる[142][注釈 18]。また、ナンヨウスギ目 Araucariales はヒノキ目に内包されることもあるが、Christenhusz et al. (2011) や海老原, 嶋村 & 田村 (2012:319)、Earle (2023) では分離して扱われている。ヒノキ科は旧スギ科を内包するが、これはヒノキ科に対して旧スギ科が側系統となるためである[143]。
分類史
ジョン・リンドリーが著書 An Introduction to the Natural History of Botany (1830) で、第I綱 維管束植物 Vasculares(=顕花植物)のうちの第I亜綱 Exogenae(=双子葉植物)の第II族として裸子植物 Gymnospermae を名付けた。その中に針葉樹類 Coniferae とソテツ類 Cycadeae が含められた。アドリアン・アンリ・ロラン・ドゥ・ジュシューもそれを引き継ぎ、『自然史学の基礎』(Cours élémentaire d'histoire naturelle; 1852)の中で双子葉植物を同様に「裸子植物 Gymnospermes」と「被子植物 Angiospermes」の2群に分け、裸子植物を「ソテツ類 Cycadées」と「針葉樹類 Coniféres」に区分した[215]。この裸子植物の範囲は今日の裸子植物とほぼ一致するが、当時は双子葉植物のうちの一群として扱われていた[215]。
Chamberlain (1935) は裸子植物を大きく2つの進化群、ソテツ植物 cycadophytes と針葉樹植物 coniferophytes に分類した[22]。ソテツ植物は現生ソテツ類に加え、化石植物であるベネチテス類とシダ種子類が含まれた[22]。針葉樹植物には現生にも残るイチョウ類と針葉樹類に加え、化石群であるコルダイテス目およびボルチア目が含まれた[22]。これは材や葉の特徴に基づいている[40]。グネツム類は系統的位置が不明瞭であり、どちらにも含まれない謎の多い分類群として扱われた[22]。
裸子植物のそれぞれの大系統は、葉の形、葉序、樹形など性質が大きく異なるため、それぞれ別門に分けるべきと考えられたこともあった[216]。例えば、ギフォード & フォスター (2002) では裸子植物はシダ種子植物門 Pteridospermophyta、ソテツ門 Cycadophyta、キカデオイデア門 Cycadeoidophyta、イチョウ門 Ginkgophyta、針葉樹門 Coniferophyta、グネツム門 Gnetophyta に分けられている[217]。
注釈
- ^ 長谷部 (2020) ではヒノキ類はヒノキ目 Cupressales として扱われるが、Christenhusz et al. (2011)や海老原, 嶋村 & 田村 (2012:319)、Earle (2023) など裸子植物を扱う多くの文献でナンヨウスギ目を分けるのが普通であるため、本項ではそちらに従う。
- ^ a b 化石植物のみからなる群には†を付した。
- ^ 二重線で示されている部分は側系統。
- ^ Cantino et al. (2007) における Spermatophyta に当たる。
- ^ Cantino et al. (2007) における Apo-Spermatophyta に当たる。
- ^ この球果の基本構造は Florin (1951) が初めて提唱した[74]。
- ^ ただし西田 (2017)ではシダ種子類を除き綱の階級とされている。
- ^ 含まれる化石属は各脚注の出典に基づく。和名直後の脚注は和名の出典を示し、その階級の和名として書かれているものを優先しているが、高次分類群の和名の一部や~類として書かれているものも含む。
- ^ かつては針葉樹類とともにマツ目に内包されたこともある[113]。
- ^ 西田 (2017)はパリシア科を球果綱の一群として扱い、目は置かずに扱っている。Pattemore & Rozefelds (2019)でも球果綱 Pinopsida として扱っているが、独立した目 Palissyales Doweld (2001) として扱っている。
- ^ 針葉樹目 Coniferales に置かれることも[119]、ヴォルチア綱 Voltziopsida Doweld, 2001 内の独自の目 Cheirolepidiales J.M.Anderson & H.M.Anderson, 2007 または Hirmeriellales Doweld, 2001 に置かれることもある[120]。
- ^ ケイロレピス科 Cheirolepidaceae のタイプ属 Cheirolepis Schimp. (1870) はキク科の現生属 Cheirolepis Boiss. (1849) の後参ホモニム(命名法上。分類学上は Centaurea L. 内の節名として用いられる。)であるため、タハタジャンが Brachyphyllum muensteri Schenk. をタイプとして新属 Cheirolepidium Takht. (1957) を設立した。しかし、Doweld (2020) によると、Cheirolepidium müensteri (Schenk.) Takht. (1957) はICN (2018:Art. 41.5) に基づき、バシオニム Brachyphyllum muensteri Schenk.への直接かつ完全な言及を欠いているため、置換名としては有効に発表されたとみなすことができない。そのうえで、Doweld (2020) は先取権のある Hirmeriella Hörhammer (1933) を使うべきだと主張し、Hirmeriellales 目の Hirmeriellaceae 科に分類している。なお、それとは別に動物にも同名のケイロレピス Cheirolepis(ケイロレピス科 Cheirolepidae)が存在するが、こちらは別々の命名規約に準拠するため問題ない。
- ^ Cheirolepis をタイプとする Cheirolepidaceae は Cheirolepis Schenk. が Cheirolepis Boiss. (1849) の後参ホモニムであるため非合法名で、Cheirolepidiaceae Turutanova-Ketova, 1963 が有効である[120]。
- ^ かつては現生裸子植物のクレード内に位置すると考えられたこともあったが[131]、現在では被子植物のステムグループで、ペトリエラ目の側系統群であると考えられている[32]。
- ^ 広義にはコリストスペルマ類に含まれる[32]。
- ^ a b ベネチテス類・Erdtmanithecales・グネツム類はそれぞれ近縁であることが示唆され、合わせてBEG groupと呼ばれている[137][32]。ただし、Rothwell et al. (2009) のようにこれに否定的な主張もあり、Vajda et al. (2017) による赤外分光法を用いた分子的特徴のデータではベネチテス類はニルソニアと類似し、((イチョウ類+チェカノウスキア類)+ソテツ類)のクレードとクラスターを形成し、ナンヨウスギ目(針葉樹類)とは別のクラスターとなることが示されている。
- ^ かつてはシダ種子類とされた[95]。現在では被子植物と最も近縁であることが示唆されている[32]。
- ^ ただしこの体系ではマツ目がグネツム類を除く側系統となる。
- ^ 現生分類群はEarle (2023)に基づき、化石分類群は各脚注の出典に基づく。和名直後の脚注は和名の出典を示す。
- ^ 独自の Nilssoniales 目とされることもある[94]。
- ^ Epicycas を含む[145]。
- ^ スタンゲリア科[114] Stangeriaceae を内包する[23]。その他 Bowenia はボウェニア科 Boweniaceae とされたこともある[114]。
- ^ 形態属であり、所属不明。
- ^ スギ科 Taxodiaceae を内包する[23]。
- ^ イヌガヤ科[70] Cephalotaxaceae を内包する[23]。
- ^ エダハマキ科[70] Phyllocladaceae を内包する[23]。
- ^ 亜属の階級に置かれたとき、アフリカマキ亜属と呼ばれた[205]。
- ^ 亜属の階級に置かれたとき、ネッタイマキ亜属と呼ばれた[214]。
- ^ プロメテウスを参照。
出典
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裸子植物と同じ種類の言葉
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