等濃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 13:23 UTC 版)
カントールの定理
カントールの定理からは、任意の集合がその冪集合(部分集合全体の成す集合)と等濃でないことがわかる[1]。このことは、無限集合に対しても成り立っている。特に、可算無限集合の冪集合は非可算無限集合になる。
自然数全体の成す無限集合 ℕ の存在と、任意の集合の冪集合の存在を認めれば、次々に冪集合をとることで得られる無限集合の無限の系列 ℕ, 𝔓(ℕ), 𝔓(𝔓(ℕ)), 𝔓(𝔓(𝔓(ℕ))), … を作ることができる。カントールの定理により、この系列の各集合の濃度は直前の項の濃度よりも真に大きいから、どんどん濃度は大きくなっていく。
カントールの仕事は同時代の一部の数学者からは痛烈な批判を受けることになった(例えば、数学の哲学として有限の立場に強く立脚したレオポルト・クロネッカー[8]は、そのような無限の数の概念(実無限)を真っ向から否定した)が、ほかの数学者(例えばリヒャルト・デーデキント)によって擁護され、最終的には大いに受け入れられ、ダフィット・ヒルベルトによる強固な支持を受けた(カントール理論をめぐる論争の項を参照)。
ツェルメロ–フレンケル集合論の枠組み内では、冪集合公理が任意の集合の冪集合の存在を保証し、また無限公理が少なくとも一つの無限集合(これは自然数全体の成す集合を含む)の存在を保証する。冪集合公理や無限公理を意図的に除外した代替集合論(例えば、GST, PK、PST など)もあり、その枠組みのなかでは上記のカントール提示した無限集合からなる無限階層は定義することができない。
無限系列 ℕ, 𝔓(ℕ), 𝔓(𝔓(ℕ)), 𝔓(𝔓(𝔓(ℕ))), … の各集合に対応する濃度はベート数 ב0, ב1, ב2, ב3, … で表される。最小のベート数 ב0 は可算無限濃度 ℵ0 に等しく、その次のベート数 ב1 は連続体濃度 𝔠 に等しい。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l Suppes, Patrick (1972) [originally published by D. van Nostrand Company in 1960]. Axiomatic Set Theory. Dover. ISBN 0486616304
- ^ Enderton, Herbert (1977). Elements of Set Theory. Academic Press Inc.. ISBN 0-12-238440-7
- ^ ベルマン 2016, p. 357, 定義 7.1.1.
- ^ 松坂 1968, p. 61.
- ^ 瀬山士郎 (2013), 数学記号を読む辞典, 技術評論社, ISBN 9784774160672
- ^ cardinaity - PlanetMath.(英語)
- ^ a b c d Jech, Thomas J. (2008) [Originally published by North–Holland in 1973]. The Axiom of Choice. Dover. ISBN 978-0-486-46624-8
- ^ Tiles, Mary (2004) [Originally published by Basil Blackwell Ltd. in 1989]. The Philosophy of Set Theory: An Historical Introduction to Cantor's Paradise. Dover. ISBN 978-0486435206
- ^ Herrlich, Horst (2006). Axiom of Choice. Lecture Notes in Mathematics 1876. Springer-Verlag. ISBN 978-3540309895
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