百鬼夜行絵巻 (松井文庫)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/28 04:51 UTC 版)
概要
百鬼夜行とは、妖怪たちが集団で跳梁する様子のことであり、室町時代に描かれた『百鬼夜行絵巻』などはその通り妖怪の集団が行列をしている様子を描いたものだが、本項の『百鬼夜行絵巻』はそれとは異なり、妖怪を描いた個々の絵1点1点に名称を添えて紹介しており、図鑑またはカタログに近い様式をとって製作されている(ただし、2体に名称が添えられていない)。題は多数の妖怪が描かれていることを示して「百鬼夜行」と名付けられたと考えられている[3]。
冒頭には行灯を取り囲んでいる人々の絵が描かれており、これは百物語を行っている人々の様子を描いたものであろうと見られている[4]。
収録されている妖怪の数は58体で、同様の様式の妖怪絵巻である佐脇嵩之『百怪図巻』(1737年)の倍近くにのぼり[5]、豊富に作例を見ることが出来る。収録されている妖怪には河童・ろくろ首・雪女などといった説話や民間伝承でその存在が知られているもの。ぬらりひょん・赤舌・黒坊などといった詳細は未確認ながら『百怪図巻』などの絵巻物に描かれているもの。後眼・胴面・いそがし・五体面など『百怪図巻』の系統に無いが他の妖怪絵巻にも類例が見られるもの。海座頭・牛鬼・手目坊主などのように鳥山石燕による『画図百鬼夜行』の模倣と見られるものなどがある[5][6][7]。
収録された妖怪例の豊富さや、『百怪図巻』の系統に見られない妖怪を数多く含むことから、21世紀初期において、本作品は、図鑑様式の妖怪絵巻を研究するうえで重要な資料[5]と評価されている。また、その後になってあたらしく確認された『ばけ物つくし帖』[1]や『百物語化絵絵巻』[8]などの存在によって、従来独自に描かれた妖怪と見られていた妖怪の多くが他の妖怪絵巻の類にも前後して描かれている事実も確認されている[7]。
注釈
出典
- ^ a b 湯本豪一『妖怪あつめ』角川書店、2002年、70頁。
- ^ 八代市立博物館・未来の森ミュージアム 1991, p. 105.
- ^ 湯本 2003, pp. 163-164.
- ^ 八代市立博物館・未来の森ミュージアム 1991, pp. 46, 86.
- ^ a b c 湯本 2006, p. 154.
- ^ 京極・多田 2000, pp. 130-138.
- ^ a b 湯本 2002, p. 70.
- ^ 湯本豪一『かわいい妖怪画』東京美術、2015年、19頁。ISBN 978-4-8087-1005-7。
- ^ 八代市立博物館・未来の森ミュージアム 1991, pp. 105-110.
- ^ 松原洋一[1] (2019年7月21日). “矢野派の再興者・矢野雪叟”. UAG美術家研究所. 2020年1月23日閲覧。
- ^ 八代市立博物館・未来の森ミュージアム 1991, pp. 82-83.
- ^ 谷川 1987, p. 4.
- ^ 湯本 2002, pp. 57-59.
- ^ 八代市立博物館・未来の森ミュージアム 1991, p. 83.
- ^ たばこと塩の博物館 2002, pp. 105-110.
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