熱力学ポテンシャル 概要

熱力学ポテンシャル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/12 20:54 UTC 版)

概要

「熱力学的性質の情報を全て持つ」とは全ての状態量がこの関数から(偏微分等の組み合わせにより)与えられるという意味である。言い換えれば、完全な熱力学関数が与えられればそこから状態方程式や熱容量などの系の性質が決まる[3]。熱力学からは関数形に制約(凸性など)を与えるが、具体的な関数形は実験的に決められるか、統計力学から導出するなど、熱力学以外から与えられる[4]

熱力学ポテンシャルの一つである内部エネルギー U は、エントロピー S体積 V、各成分の物質量 N = {Ni}、あるいはその他の示量性状態量[5] X を変数に持つ関数 U(S, N, V, X) として表されたときに完全な熱力学関数となる。このことはエネルギー表示と呼ばれることがある[6]。このとき、各変数による偏微分は

となり、熱力学温度 T圧力 p、各成分の化学ポテンシャル μ = {μi}、及び X に対応する示強性状態量[7] x が得られる。これらはエネルギー表示の示強性状態量[6]と呼ばれる。これらの状態量から熱容量圧縮率なども計算される。内部エネルギーの全微分

となる。

エネルギー表示の U の全微分の式を変形すれば

となり、エントロピー S は内部エネルギー U、体積 V、物質量 N、及びその他の示量性状態量 X を変数にもつ関数 S(U, V, N, X) として表されたときに完全な熱力学関数となる。このことをエントロピー表示と呼ぶ場合がある[6]。この表示でも熱力学的性質の情報としてはエネルギー表示と等価であり、各変数による偏微分を求めることによりエントロピー表示の示強変数[6]、たとえば

などが得られる。しかし統計力学との関係からこの表示は重要である。ボルツマンの原理により分配関数と直接的に関係づけられるのはエントロピー表示の熱力学ポテンシャルである。


  1. ^ 田崎『熱力学』 p.120
  2. ^ 田崎『熱力学』 p.17
  3. ^ 佐々真一 著、兵頭俊夫 編 『熱力学入門』共立出版、2000年、76頁。ISBN 4-320-03347-7 
  4. ^ a b 久保『熱学・統計力学』 p.88
  5. ^ 例えば分極 P磁化 M など。
  6. ^ a b c d 清水『熱力学の基礎I』pp.94-98
  7. ^ 例えば分極 P に対応する外部電場 E や磁化 M に対応する外部磁場 H など。
  8. ^ 清水『熱力学の基礎II』p.2
  9. ^ a b c d β=1/Tα=μ/T を表す。
  10. ^ a b 久保『熱学・統計力学』 p.90
  11. ^ 久保『熱学・統計力学』 p.97





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