松本治一郎 一族

松本治一郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/08 06:16 UTC 版)

一族

生涯を通じて独身であり、もちろん妻子はいなかった。博多芸者を落籍して妾宅を構え、腹心の者にも絶対の秘密にしていたが、やがて水平社同人に妾の存在が露見して話題にされ「この問題の段になると主義主張の手前、何となく恥しそうな顔をするとの話があった」[26]と伝えられる。

甥の松本英一を養子として迎え、自身が創業した土建業松本組を継がせている。英一は治一郎の没後に参議院議員となった。英一の子・松本龍は元衆議院議員。その弟・松本優三は松本組社長。

また、衆議院議員の楢崎弥之助は被差別部落出身ではなかったが治一郎の姪の長女と結婚[27]。その息子が衆議院議員の楢崎欣弥である[27]

治一郎の妹は、治一郎の片腕で全国水平社書記局長、部落解放全国委員会書記長を務めた井元麟之と結婚[28][29]野本武一の長女は井元の甥と結婚している[28]

なお、治一郎の姪は松本組支配人の山田本蔵の妻[30]。本蔵の妹が北原泰作の妻である[30]

さらに、松本吉之助(全九州水平社の指導者、福岡県議会議員)の妻の叔父は柴田啓蔵(全九州水平社創立者のひとり)の父である[31]。また松本吉之助の姉婿は花山清(全九州水平社創立者のひとりで福岡県議会議員)である[31]。花山清の親類に全九州水平社の高丘松蔵がおり、松蔵の妻は松本治一郎の実妹である[31]

語録

  • 「不可侵不可被侵(侵さず侵されず)」[32]
  • 貴族あるところ賎族あり。」[33]
  • は飲まない。タバコは吸わない。バクチをしない。妻帯しないし、女性を買わないネクタイをしない」(この五戒を若い頃は別として生涯堅持したという)[34]
    • 若い頃は酒豪かつヘビースモーカーであったが、三十代半ばの頃の拘留を機に「獄中では人間の欲望は敵である、社会運動をやる者は万年被告の心構えが必要」と禁酒禁煙に踏み切った[35]
  • 「権力と闘ってきた私を、なんと考えておるのか。天皇から叙勲式とか親授式とか、そんなことができるなら、この松本の闘争は存在しなかったはずだ。勲章を欲しがり、権威をふりまわそうとする。この考えが部落差別を残すことにつながっている」(勲一等拒否の弁)[10]
  • 「私の闘ってきた相手は君ではない。君の背後にあるものだ。君が悪かったと反省しているならそれでよい」(戦後になってわびを入れてきた元刑事に)[36]

選挙歴

当落 選挙 施行日 選挙区 政党 得票数 得票率 得票順位
/候補者数
比例区 比例順位
/候補者数
第1回参議院議員通常選挙 1947年4月20日 全国区 日本社会党 415,494 ' 4/258 - -
第3回参議院議員通常選挙 1953年4月24日 全国区 左派社会党 368,985 ' 7/234 - -
第5回参議院議員通常選挙 1959年6月2日 全国区 日本社会党 426,586 ' 22/123 - -
第7回参議院議員通常選挙 1965年7月4日 全国区 日本社会党 548,022 ' 27/99 - -
当選回数4回 (参議院議員4)

  1. ^ 【建設】松本龍氏落選の衝撃~建設業界の変化に左右された福岡1区”. ネットアイビーニュース (2012年12月20日). 2015年5月24日閲覧。
  2. ^ 徳川公爵暗殺陰謀事件の大審院判決(1926年(れ)第1974号)に「土木請負業治一郎事 松本次一郎」とある。『部落問題・水平運動資料集成』第1巻、329頁。
  3. ^ 福岡県人権研究所著『西日本人物誌(16) 松本治一郎』20頁。
  4. ^ a b c d 福岡県人権研究所著『西日本人物誌(16) 松本治一郎』21頁。
  5. ^ 高山文彦「水平記」下巻、P29、新潮文庫
  6. ^ a b c 「世界伝記大事典5 日本・朝鮮・中国編」(ほるぷ出版、1978年
  7. ^ 『正論』2011年9月号「折節の記」
  8. ^ 「松本治一郎伝」P276~278
  9. ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、24頁。ISBN 9784309225043 
  10. ^ a b 「松本治一郎」P252
  11. ^ 『松本治一郎伝』p.24
  12. ^ 金、pp.451-452
  13. ^ 「松本治一郎」P48
  14. ^ 金『水平運動史研究──民族差別批判』pp.352-353
  15. ^ 金、pp.637
  16. ^ 『特高月報』1943年6月分、pp.36-39
  17. ^ 金、pp.355-359
  18. ^ 1947年の発言。松本治一郎「荊冠旗は血に染む 水平社運動廿五年」、『政界ジープ』ジープ社、1947年9月、p.6
  19. ^ 1948年の発言。松本治一郎「衆議院より参議院へ」、松本治一郎・部落解放全国委員会『部落解放への三十年』近代思想社、1948年、p.204、p206
  20. ^ 松本治一郎「全アジア水平運動のために ビルマからインドへ」(一)、『部落』第40号、1953年2月、pp.9-10
  21. ^ 講演「『世界─民族─国家』空間と沖縄」(『敗北の構造―吉本隆明講演集』弓立社、1989年)
  22. ^ 正論』2011年9月号「折節の記」
  23. ^ グラフで見る空港別収支の内容
  24. ^ 『公安百年史: 暴力追放の足跡 : 極左・極右・暴力団総会屋資料の最新版』453ページ(公安問題研究会、1978年)
  25. ^ a b 岡映『荊冠記』第二部「黎明」232-233頁
  26. ^ 『部落問題・水平運動資料集成』第1巻、217頁。
  27. ^ a b 岩尾清治『遺言・楢崎弥之助…命ひとすじ』p.50
  28. ^ a b 丸山友岐子『解放への飛翔』(部落解放同盟埼玉県連合会)181頁
  29. ^ 井元 麟之(読み)イモト リンシコトバンク
  30. ^ a b 『賎民の後裔-わが屈辱と抵抗の半生-』286頁
  31. ^ a b c 松本吉之助『筑豊に生きる』220頁
  32. ^ 部落解放新書1・松本治一郎対談集(解放出版社)
  33. ^ 井上清/北原泰作・著『部落の歴史―物語・部落運動解放史』理論社。同文中で“人間神を作るために人間獣が作られる”と解説されている
  34. ^ 「松本治一郎」P49
  35. ^ 「松本治一郎伝」P82
  36. ^ 「松本治一郎」P200


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