情報提供者 情報提供者の概要

情報提供者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/17 16:39 UTC 版)

アメリカ国務省代表者の謝意と懸賞金を受け取る情報提供者。敵対者に察知されるのを避けるためか顔を覆っている。
彼/彼女のもたらした情報によりフィリピンテロリストアブ・サヤフのメンバーであるカダフィ・ジャンジャラニ[1]及びジャイナル・アンテル・サリ・ジュニア英語版両名の殺害に成功した[2]

日本語では情報屋連絡員協力者タレ込み屋などとも言われる。英語ではその他informerインフォーマー)やcontact man(連絡員)やassetと呼ばれたり、stool pigeon(元の意味は猟師が使う囮の鳩、すなわち「原義の」デコイ)など様々なスラングもある。

また、これを密告者内通者と呼ぶ場合は、情報を漏らされた側の立場から、批判的なニュアンスが込められているともいえる。さらにはスパイ呼ばわりされる場合もある。

一方、内部告発者という表現もあるが、これに相当する英語のホイッスルブローワーは、内部の人物が、その所属する企業(非営利活動団体、等)がおこなう不正や犯罪を是正してもらいたいがためにやむなくおこなう、いわば善意的な告発を主にさす。

概要

この用語は通常、法執行英語版の範疇で用いられ、その場合公式の用語としてはconfidential informants秘密情報提供者[3]またはcriminal informantsCI, 犯罪・刑事事件に関する情報提供者)として知られる。加えて、悪意を持って利益を得るため、個人的な利得のため、または金銭的利益を得るために他の当事者の承諾を得ることなく組織外部の人間に情報提供することを揶揄する用語として用いられる場合もある[4]。しかしながら、この用語は政治、経済産業、及び学術分野でも用いられる[5][6]アメリカ合衆国では「秘密情報提供者の使用に関する司法省指針」("Department of Justice Guidelines, Regarding the Use of Confidential Informants")という運用基準が存在する。これは「情報提供者の利用に関する司法長官指針」("Attorney General's Guidelines on the Use of Informants in Domestic Security, Organized Crime, and Other Criminal Investigations")[7]等以前存在した複数の指針を1つにまとめ直したものである。この指針ではある一定の条件下での情報提供者の犯罪関与を許容することが認められている[7]

犯罪に関する情報提供者

情報提供者は通常、組織犯罪に関連する人物、もしくはその組織内部の人物である。組織犯罪というものは、まさしくその性質により、多くの人間を、互いに罪の意識を承知で様々な違法行為に関与させるものである。秘密情報提供者(CI)が自らは寛大な処置をしてもらうことを目的に情報を売り渡すことはかなり頻繁にあり、金銭を得ることや警察に自身の犯罪行為を見逃してもらう代償として、長期間に渡り組織内部に潜入し情報を提供することもある。また組織の人物が逮捕された後に一部が情報提供者に成り変わることもしばしばある。殺人事件の捜査や麻薬取締を含め、警察の捜査手法として情報提供者を利用することはごく一般的なことである。警察に有力な情報を提供することにより捜査を援護するいかなる市民も原義的には情報提供者である[要出典][8]

CIA薬物売買の元締英語版: Drug lord, ドラッグ・ロード)[9]や殺人犯[10]などが、今後有力な情報提供者として何の疑いもなく犯罪組織に溶け込めるよう、情報提供者が行う数々の犯罪行為に目をつぶり[10]、そしてある意味においては責任の所在が明確ではない情報源確保の目的で彼らに何十億ドルもの資金を提供する[4]。このため情報提供者として振る舞う彼らに対しCIAが寛大な措置や便宜を図ることについて批判がある。

情報提供者は以前所属していた犯罪組織の仲間からは裏切り者と見なされることが常である。組織の種類・規模がどのようなものであろうとも、情報を捜査機関に提供した者に対しては強い敵意が向けられるのはもっともなところである。彼らは組織から脅威と見なされ、様々な処罰が下される。すなわち、絶縁に始まり肉体的暴力または処刑、もしくはそれら全てというような悲惨な末路に彼らは至る可能性がある。このため、通常情報提供者は保護、隔離される。その方法としては、監獄へ収監し隔離する、または仮に収監しない場合、新たな身分個人情報を与えどこか別の場所に引っ越しさせる、かのいずれか一方を選ぶことになるが、前者の場合、既に収監されていた犯罪組織の関係者から報復されるリスクがあるため、後者を選ぶことが多い。

謝礼

情報提供者は提供先の捜査機関から「謝礼」を受けることがある。対テロリズムの一環として全世界的に展開している米国務省外交保安部英語版(DSS)による「正義への報酬プログラム」(Rewards for Justice Program[11]は有名な例である。

金額の大きい事例としては次が挙げられる。2008年、リヒテンシュタインの複数の銀行[注釈 1]欧米の多数の資産家の脱税資金が存在することが報じられた[12]。事件の端緒を開いたのは、LGTのIT部門に勤めていたハインリヒ・キーバードイツ語版[注釈 2]なるインフォーマントであり、彼が口座の電磁記録をドイツ連邦情報局(BND)に渡したことから事件が発覚。この情報に基づいて同年2月14日、当時のドイツ郵便CEOクラウス・ツムヴィンケルが100万ユーロもの脱税の疑いで逮捕[13]。さらにキーバー及びBNDから情報提供を受けたアメリカ合衆国[14]、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランスの税財務当局が該当する資産家の取り調べを行った[15][16]。その他アイルランド、フィンランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ギリシャ、スウェーデン、チェコ、スペインの財務当局も関心を示した。デンマーク政府はこのデータが窃盗によるものであるため(日本の司法原則では排除法則に該当する違法な証拠であるといえる)当初は情報の受諾を固辞したがその後態度を翻した[15][16]。インド政府のみ、インド人資産家の口座が確認されているにもかかわらずドイツ政府の情報提供の申し出を拒絶している[17]。キーバーはドイツ政府より情報提供の見返りとして460万ユーロを受け取っている。だがその金の一部には定率10%で税金が課せられた[18]。事の詳細は記事"2008年のリヒテンシュタインにおける脱税スキャンダル英語版ドイツ語版"を参照。


  1. ^ この中にはリヒテンシュタイン侯爵家が経営権を握る同国最大のプライベート・バンクLGTグループが含まれている。
  2. ^ 英名化したヘンリー(Henry)という偽名を持つ。
  3. ^ レイバー・スパイ。産業スパイとは異なる。
  4. ^ "rhyming slang", 「ライミング・スラング」





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