希土類元素
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21 | Sc | スカンジウム | |
39 | Y | イットリウム | |
57 | La | ランタン | ラ ン タ ノ イ ド |
58 | Ce | セリウム | |
59 | Pr | プラセオジム | |
60 | Nd | ネオジム | |
61 | Pm | プロメチウム | |
62 | Sm | サマリウム | |
63 | Eu | ユウロピウム | |
64 | Gd | ガドリニウム | |
65 | Tb | テルビウム | |
66 | Dy | ジスプロシウム | |
67 | Ho | ホルミウム | |
68 | Er | エルビウム | |
69 | Tm | ツリウム | |
70 | Yb | イッテルビウム | |
71 | Lu | ルテチウム |
概要
希土類元素は化学的性質が互いによく似ている。性質を若干異にするスカンジウムおよび天然に存在しないプロメチウム以外の元素は、ゼノタイムやイオン吸着鉱などの同じ鉱石中に相伴って産出し、単体として分離することが難しい。そのため、混合物であるミッシュメタルとして利用されることも多い。
「希」の名がつくものの、金や銀などの貴金属に比べて地殻に存在する割合は高く、特にセリウム 58Ceは銅に匹敵するほどの量が存在する[2]。しかし、単独の元素を分離精製することが難しく、流通価格が貴金属並みに高価となることがある。この意味で2012年現在でも希少(英: rare)な元素[3]であり、レアメタルに分類される。ただし、アメリカ地質調査所によれば、レアアースの世界の埋蔵量はおよそ9900万トンであり、全世界の年間消費量約15万トンから比較すれば、資源の枯渇はあまり危惧されていない。
温泉にも微量のレアアースが含まれているものがある。強酸性の玉川温泉からはジスプロシウムやユーロピウムなど14種類のレアアースが含まれていることが確認されている[4]。
スカンジウムを除く、イットリウム及び希土類元素を主成分とする希土類鉱物は、同形鉱物に共通の根幹名(ルートネーム、root name)とハイフンで繋いで括弧内に最卓越(predominant)した希土類元素の元素記号を配する命名規約(レビンソン則、Levinson rule)に基づき命名される[5]。ただし、日本語では最卓越した元素を冒頭に持ってくるのが一般的である。ガドリン石を例に挙げると、セリウムが卓越した"gadolinite-(Ce)"とイットリウムが卓越した"gadolinite-(Y)"は、それぞれ「セリウムガドリン石」、「イットリウムガドリン石」と表記される。ただし、「ランタンランタン石(Lanthanite-(La))」[6]などのように、鉱石名に元素名が入っていると表記が重複して煩雑になる問題がある。
分類
希土類元素のうちスカンジウムとイットリウム以外の 15元素はランタノイドである。ランタノイドの中で、Gdよりも原子量が小さい元素 (La-Eu) を軽希土類元素(英: light rare-earth element、LREE)、重い元素 (Gd-Lu) を重希土類元素(英: heavy rare-earth element、HREE)と呼ぶ[7]。また、中間のものを中希土類と呼ぶこともある。
元素ごとに分離されたものを分離希土、分離されていないものを混合希土(ミッシュメタル)と呼ぶ。
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- ^ 水銀フリー自動車前照灯用 HID ランプ - 東芝
- ^ a b セラミックスアーカイブズ LED照明 (1996年〜現在)
- ^ 全国初!使用済み蛍光管からレアアースを回収・再資源化 福岡県 2011年9月6日
- ^ レアアース回収急げ 中国生産減 各社は家電廃棄物から“採掘” MSN産経west 2012年8月26日
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- ^ “U.S. GEOLOGICAL SURVEY MINERALS YEARBOOK”. 2021年9月閲覧。
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- ^ 「ロシアのレアメタル・レアアース戦略について」 (PDF) 平成25年6月20日 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構モスクワ事務所 大木雅文
- ^ 日本近海に高濃度レアアースを発見、南鳥島沖 AFP
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- ^ 産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 『レアメタル技術開発で供給不安に備える』 工業調査会、2007年、65-88頁。
- ^ 足立 吟也 監修 『希土類の材料技術ハンドブック 基礎技術・合成・デバイス製作・評価から資源まで』 NTS、2008年、ISBN 978-4-86043-194-5。
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- ^ “中国のレアアース特許申請数は中国以外を合わせた2倍、レアアース関連技術がはるかに進んでいると専門家が警鐘を鳴らす”. GIGAZINE (2019年7月24日). 2019年8月14日閲覧。
- ^ 経済産業省2011年版不公正貿易報告書244~254頁掲載
- ^ a b c “レアアース禁輸 中国のジレンマ”. エコノミスト (2019年6月18日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ 『トコトンやさしいレアアースの本』128ページのコラム「中国の環境問題」にて筆者の体験談として、見学したレアアース工場にて研究者の手が白く被曝していた、当時のレアアース工場としては当たり前だったようだ、と書いている。放射能物質の処理もずさんで、普通はドラム缶に詰めて地下に埋めるところをテーリングポンド(尾鉱貯蔵池)にそのまま保管するのが当たり前、と書いている。中には鉱山に直接ぶっかけてリーチング(湿式冶金)し、レアアース濃縮物を得る鉱山もあると書いている。『トコトンやさしいレアアースの本 (今日からモノ知りシリーズ)』日刊工業新聞社 2012年8月21日出版。ISBN 978-4526069284 西川 有司 (著), 藤田 豊久 (著), 亀井 敬史 (著), 中村 繁夫 (著), 金田 博彰 (著), 美濃輪 武久 (著), 藤田 和男 (監修)
- ^ 『レアアースに手を焼く中国』日経エコ・ジャパン 2010年12月3日 2010年12月9日閲覧。
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- ^ 大西孝弘『レアアース、代替技術は有望』日経ビジネス 2010年11月15日 2010年12月9日閲覧。
- ^ 『誰も知らないレアアースの現実』日経エコ・ジャパン 2010年11月15日 2010年12月9日閲覧。
- ^ レアアース:中国規制せず…日本の調達先分散で効果薄れ 毎日新聞 2012年10月3日
- ^ ピーク時は危機時の20分の1
- ^ 2013年秋に双日がオーストラリアから出荷開始、豊田通商がインドで2014年度中に生産予定。住友商事のカザフスタンから輸入する計画は未出荷。
- ^ “南鳥島近海にレアアース-東大・三井海洋開発、国産化にらみ技術開発”. 日刊工業新聞. (2012年7月2日) 2012年9月4日閲覧。
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