山内一也
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/23 23:31 UTC 版)
山内 一也 | |
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![]() 山内 一也 | |
生誕 |
1931年7月17日(92歳)![]() |
国籍 |
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研究分野 |
ウイルス学 実験動物学 人獣共通感染症学 |
研究機関 |
国立感染症研究所 日本生物科学研究所 東京大学医科学研究所 |
出身校 | 東京大学農学部獣医学科 |
プロジェクト:人物伝 |
北里研究所所員、国立予防衛生研究所室長、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員などを歴任。日本ウイルス学会名誉会員、ベルギー・リエージュ大学名誉博士。
人物
国立予防衛生研究所室長などを経て東京大学医科学研究所教授。天然痘と牛疫という二大感染症の根絶に貢献[1]。牛疫根絶計画では、国際獣疫事務局(OIE)学術顧問、国連食糧農業機関(FAO)顧問を務めた。また、2000年初頭の牛海綿状脳症問題(BSE問題)にからみ、食品安全委員会プリオン専門調査会の委員を務めた[2]。
医科研時代は、実験動物研究施設長、組換えDNA委員会委員長や倫理委員会委員長などを務めた。医科研の前は国立予防衛生研究所麻疹ウイルス部で麻疹ウイルス、トリ白血病ウイルス(鶏白血病)の研究を、その前は北里研究所でワクチンを研究。 またカリフォルニア大学デービス校(UCデービス校)に留学時代はブタのポリオウイルスの研究もしていた。スローウイルス感染症(遅発性ウイルス)、組換え牛疫ウイルスワクチン開発、麻疹、イヌジステンパーウイルス(CDV)といったモービリウイルス(モルビリウイルス属)の研究を通じ、現代のウイルス研究に大きな貢献を果たしている。2000年代初頭より発生した、牛海綿状脳症(BSE)に関する一連の問題では、感染症研究の第一人者として衆議院にて参考人を務めるなど、オピニオンリーダー的な役割を果たした[3][4]。モービリウイルス研究で日本農学賞を授与されている[5]。
主な著書に『エマージングウイルスの世紀』(河出書房新社、1997年)『ウイルスと人間』(岩波書店、2005年)『史上最大の伝染病 牛疫 根絶までの四〇〇〇年』(岩波書店、2009年)『ウイルスと地球生命』(岩波書店、2012年)『近代医学の先駆者―ハンターとジェンナー』(岩波書店、2015年)『はしかの脅威と驚異』(岩波書店、2017年)『ウイルス・ルネッサンス』(東京化学同人、2017年)『ウイルスの意味論―生命の定義を超えた存在』(みすず書房、2018年)などがある。
2018年に出版した「ウイルスの意味論―生命の定義を超えた存在」は、各界からの反響を呼び、『ダ・ヴィンチ』(2020年7月号)の人気連載コーナー「この本にひとめ惚れ」でも「コロナウイルスについて様々な議論が交わされているが、ウイルスをずっと見つめてきた科学者の言葉をこそ読みたい。」と紹介されるなど[6]、重版となっている[7]。
また、新型コロナウイルスについても、ウイルス学が専門で感染症の歴史や新興感染症に詳しい第一人者として、メディアから取材を受けている[8][9]。半世紀以上にわたりウイルス研究と感染症対策にたずさわってきた山内は、「(ウイルスは)脅威ではあるが、敵対するものではない」とウイルスと人類の関係とに独自の考えを持っている[10]。新型コロナウイルスの流行は、野生動物と接触する機会が多い現代社会の環境が背景にあると指摘し、ウイルスと人類の関わりを考え直すべきだと提言している[11][12]。
経歴
略歴
- 1956年 - 1979年 北里研究所所員
- 1961年 - 1964年 カリフォルニア大学獣医学部留学
- 1965年 - 1986年 国立予防衛生研究所麻疹ウイルス部室長
- 1978年 - 1979年 京都大学ウイルス研究所神経ウイルス病部門助教授(併任)
- 1979年 - 1992年 東京大学 医科学研究所実験動物研究施設 教授
- 1980年 - 1981年 京都大学ウイルス研究所神経ウイルス病部門教授(併任)
- 1992年 - 2007年 日本生物科学研究所 主任研究員
- ^ 『理系という生き方 東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』ポプラ社、2018年2月13日。
理系という生き方 東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか, p. PT31, - Google ブックス - ^ “全頭検査は本当に「不要」なのか?”. 農業協同組合新聞 (2004年6月14日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “会見レポート「山内一也・東京大学名誉教授「人畜共通感染症」」”. 記者クラブ (2004年1月26日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “衆議院農林水産委員会におけるBSEに関する北村直人議員の参考人質疑”. 日本獣医師会 (2005年5月20日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “山内先生の紹介”. 一般社団法人予防衛生協会 (2015年4月17日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “山内一也”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA. 2022年10月16日閲覧。
- ^ “ウイルスの意味論 山内一也著 広がる定義と驚くべき能力”. 日経新聞. 日本経済新聞社 (2019年2月2日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ 嘉幡久敬 (2020年2月12日). “新型肺炎 「グローバル化で拡大」 山内一也さんに聞く”. 朝日新聞. 2022年10月16日閲覧。
- ^ 久知邦 (2020年5月11日). “未知の脅威に人類の備えは ウイルス学の権威・山内一也さん”. 西日本新聞. 2021年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月16日閲覧。
- ^ “ウイルスと共に生きる ウイルス学者・山内一也さんに聞く(前編)”. NHK (2020年7月3日). 2020年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月16日閲覧。
- ^ “コロナと私たち”. しんぶん赤旗 (2020年6月21日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “知は語る コロナ”. 産経新聞 (2020年6月28日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ “昭和17年度~平成30年度 日本農学賞受賞者”. 日本農学会 (1992年12月1日). 2022年10月16日閲覧。
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