富士登山 その他

富士登山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 12:54 UTC 版)

その他

影富士

マイカー規制

環境保護および駐車場の過剰混雑のため、登山シーズンはマイカー規制が富士スバルライン(吉田ルート)、ふじあざみライン(須走ルート)、富士山スカイライン(富士宮ルート)で行われている。五合目の駐車場が利用できなくなる。2017年は7月10日 - 9月10日が規制対象である。

規制対象日(2017年)

  • 富士スバルライン:7月10日 - 9月10日
  • ふじあざみライン:7月10日 - 9月10日
  • 富士山スカイライン:7月10日 - 9月10日

代替駐車場

  • 富士スバルライン:富士北麓駐車場
  • ふじあざみライン:須走多目的広場
  • 富士山スカイライン:水ヶ塚公園

代替駐車場から五合目まではシャトルバスが30分間隔で運行されている。

御来光と影富士

御来光とは高山で拝む日の出のことである。阿弥陀如来等、仏陀の出現に日の出を例えた表現である。富士山では御来光を頂上で見ようという登山者が多く、日の出直前の頂上付近は渋滞で動かなくなることもある。山小屋の前や登山道の途中で御来光を迎える事もある。影富士とは富士山自身の日没前や日の出の直後に、太陽の反対側の雲海や地表に投影することである。富士山は独立峰であるため、東に開けた御殿場ルートでは曇天などでなければ、登山道のどこからでも御来光と影富士を見ることができる。山頂にも、日の出直後の影富士を見ることができる地点がある。

案内標識

山梨県側の登山道(吉田ルート)の呼び方が「吉田口」と「河口湖口」の2種類が混用されていたり、標識が統一されていなかったりして分かりにくかった。そのうえ不必要な場所に標識が乱立しており、必要な標識の認識の妨げとなっていた。また、外国語表記が少なく増加し続ける外国人登山者に不親切であった。そのため2009年の山開きに間に合うよう案内標識の統一が図られ、標識の乱立も改善された。その結果、山梨県側の登山道については「吉田口」(吉田ルート。ただし五合目は「富士スバルライン五合目」)の名称で統一され[53]、標識の枚数も整理されて大きく減少した。この新標識は基本的に日本語・英語中国語韓国語の計4ヶ国語で表記されており、外国人にも分かりやすくなった[54]。また、各登山道で標識の色も統一された。

お鉢巡り

剣ヶ峰より見た富士山の八神峰(山頂の峰々)と大内院(火口)

お鉢巡りとは、富士山山頂の火口を一周することである。富士山は山頂(登山道を登りきった場所)まで登って下山する登山者が多く、お鉢巡りはあまり多くない。時間と体力があり、天候に恵まれていないと実行は難しい。残雪が多い年はお鉢巡りルートに雪があるため、途中までしか行けないことがある。

郵便

富士山頂郵便局で投函された郵便物には基本的には風景印が押印される。窓口に出された郵便物だけでなく、局前のポストに投函された郵便物でも風景印が押印される。窓口では登山証明書も発行している。

金剛杖に焼印を押す様子

金剛杖と焼印・刻印

近年は軽量な金属製のストックを使う登山者が増えているが、富士山では昔ながらの木製の金剛杖の使用も多い。この金剛杖には日章旗旭日旗などをつけて販売されることも多いほか、各山小屋では記念の焼印を有料で行っている。このため、すべての小屋の焼印を集め、杖を焼印でいっぱいにした登山者を多く見かける。金剛杖を購入した小屋や宿泊した小屋は焼印代を免除することが一般的である。雨天時は焼印を行わない所もある。

山頂の富士山本宮浅間大社奥宮および久須志神社、富士宮口山麓の富士山本宮浅間大社本宮や、吉田口山麓の北口本宮冨士浅間神社、富士スバルライン五合目の富士小御嶽神社、須走口山麓の東口本宮冨士浅間神社など、富士登山にかかわる一部の神社では金剛杖への朱肉刻印を有料で行っている。これらの神社では御朱印をいただくこともできる。

携帯電話

登山シーズン中は山小屋に臨時の基地局が置かれるうえ、多くの場所では麓からの電波も受信できるため、NTTドコモauソフトバンクなどの携帯電話が利用可能である[55][56]。全社とも LTE も対応している[57][58]。ただし、山頂の火口側など、山小屋からの電波も麓からの電波も届きにくい場所では、電波が極めて弱く、圏外になることがある。山小屋ではコンセントの数は限られ、借用は難しいため、コンセントでの充電は行えない。市販の携帯電話用充電器(マルチソーラーチャージャーなど)の持ち込みが必要になる。

荷揚げのブルドーザー

物資の運搬

五合目〜山頂の物資の輸送はブルドーザークローラーダンプにより行われている。他山域で行われているヘリコプターでの輸送よりも、悪天候に強く大量輸送ができるというメリットがあるが、多くの車両の購入費用や保守費用の他、ブルドーザー道の保守費用がかかるため、ヘリコプター輸送よりも商品に対する価格上乗せ額が大きくなる。吉田ルートではブルドーザー道は下山道としても利用されている。このブルドーザー輸送は、富士山レーダー建設を機に従来の馬方組合と強力組合が合同して始めたものである。

清掃登山

富士山の登山道や周辺には非常にゴミが多かったことなどが一因となり、富士山の世界自然遺産登録が実現しなかった[59]ことを踏まえ、富士山美化のために、NPOや企業などが毎年清掃登山活動を行っている。アルピニスト野口健も一部の活動に参加し、活動参加者が増えるとともに登山道周辺のゴミは減ってきている。[60]

「望ましい登山者数」問題

富士山の世界文化遺産登録に際しては、入山者が多いことによる「神聖な雰囲気」の維持が課題として指摘された[61]。上記のようなゴミ清掃や環境配慮型トイレの導入などが進んでも、富士登山人気の高まりによる自然環境や霊山としての雰囲気への圧力は大きい。このため山梨・静岡両県は「望ましい登山者数」(1日当たり吉田口4000人、富士宮口2000人)をまとめた。これは世界遺産を所管する国際記念物遺跡会議(イコモス)に報告される予定である[62]

新型コロナウイルスによる閉山

新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年(令和2年)の夏は感染拡大防止の観点から登山が禁止となった。山小屋の営業も行われず、事故が起きても救助が困難であるため登山道を閉鎖した。こうした措置は広く登山が解禁された近代以降では初のことになる[63]

静岡県側では富士山スカイライン、ふじあざみライン、県道152号富士公園太郎坊線を封鎖したため5合目までも行くことができなくなり、新富士駅・富士駅・富士宮駅・三島駅・裾野駅・御殿場駅などから5合目に向かう登山バスも運休となった。一方、山梨県側では6月15日から富士スバルラインを開通させ、5合目までは通行可能となった[64]

なお、閉鎖されている道路に侵入した場合、道路法違反となり処罰されることになる[65]

ウィキメディア・コモンズには、コロナで登山できなくなった富士山と感染対策をする世界遺産構成資産に関するカテゴリがあります。

登山不可告知
(両県共通文面)
封鎖中のあざみライン
富士宮5合目行きバス運休
(富士宮駅)
吉田口登山道へ至る遊歩道も閉鎖
(7月1日の山開き以降、1合目手前の大石茶屋までは開通)

注釈

  1. ^ 五合目レストセンター、宝永山荘、雲海荘、御来光山荘、富士山表口元祖七合目、池田館、萬年雪山荘、胸突山荘、頂上富士館
  2. ^ 雲上閣、五合園レストハウス、富士山みはらし、こみたけ売店、スカイパレス富士、花小屋、日の出館、七合目トモエ館、鎌岩館、富士一館、鳥居荘、東洋館、太子館、蓬莱館、白雲荘、元祖室、本八合目富士山ホテル、本八合目トモエ館、御来光館、山口屋、扇屋、東京屋、山口屋支店
  3. ^ 東富士山荘、菊屋、吉野家、長田山荘、瀬戸館、太陽館、見晴館、江戸屋、胸突江戸屋、御来光館、山口屋、扇屋、東京屋、山口屋支店
  4. ^ 富士急小屋ハーフマウンテン、大石茶屋、わらじ館、砂走館、赤磐八合館
  5. ^ 今上天皇が皇太子時代の2008年に利用したことより命名された。以降は標識にも書かれている正式名称。
  6. ^ 五合目レストセンター、宝永山荘、雲海荘、わらじ館、砂走館、赤磐八合館
  7. ^ おやすみ処、佐藤小屋、里見平・景観荘
  8. ^ 富士急小屋ハーフマウンテン
  9. ^ 山口屋支店、扇屋、東京屋、山口屋、頂上富士館
  10. ^ 五合目レストセンター

出典

  1. ^ 聖徳太子騎馬像、8合目山小屋に 富士山/山梨『毎日新聞』朝刊2017年8月12日(山梨県版)
  2. ^ 毎夏約30万人を魅了する富士登山|富士山に登ろう
  3. ^ 竹谷靱負『富士山と女人禁制』(岩田書院)
  4. ^ 富士山に初めて登った日本人女性は変装していた|富士山NET
  5. ^ 明治文化研究 4巻2号
  6. ^ ふじあざみ64号(2)|富士砂防事務所
  7. ^ 登山者が少なく警備が簡単で、多くの登山者に影響を与えることの少ないため
  8. ^ 産経ニュース 2008.8.8 08:26
  9. ^ プリンスルートで富士登山 - 御殿場市観光協会
  10. ^ 富士山登山に「通行料2000円」は高すぎる? ゲートで「弾丸登山」を阻止 4月から山小屋予約スタート”. AERA dot. 2024年3月30日閲覧。
  11. ^ a b 登山の前に必ず知っておくこと|富士登山オフィシャルサイト
  12. ^ a b c d e 富士登山における安全確保のためのガイドライン 富士登山オフィシャルサイト、2021年12月5日閲覧
  13. ^ 山梨県/富士山 御中道 通行情報
  14. ^ 富士山駅〜中の茶屋・馬返 (馬返バス) - 富士急行バス
  15. ^ 富士山年・月ごとの値(気象庁)
  16. ^ a b c 富士山頂の風や気温で、最もすごかった記録|富士山NET
  17. ^ a b c d e f g 登山ルート・山旅スポット. “富士山の登山を楽しむ6つの知識”. 山旅旅. 2020年8月20日閲覧。
  18. ^ 富士山 平均風速の月平均値(m/s)|気象庁
  19. ^ 富士山頂の測候所|富士山NET
  20. ^ 平成28年夏期の富士山登山者数の中間発表(第1回)について(お知らせ) 関東地方環境事務所
  21. ^ a b c d e 登山ルート・山旅スポット. “富士山登山ルート紹介”. 山旅旅. 2020年8月24日閲覧。
  22. ^ 富士山保全協力金富士登山オフィシャルサイト(2018年4月1日閲覧)
  23. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at 伊藤太一 2009.
  24. ^ a b c 昭文社 山と高原地図 31.富士山 御坂・愛鷹 2013
  25. ^ a b 五合目レストセンターは売店
  26. ^ 東京屋(山頂)、吉野家(下山路・砂払五合)、東富士山荘は売店
  27. ^ 富士急小屋ハーフマウンテンは売店
  28. ^ a b スカイポート水ヶ塚
  29. ^ a b c d 吉田ルート 富士登山オフィシャルサイト
  30. ^ a b c d 富士宮ルート|富士登山オフィシャルサイト
  31. ^ 静岡県/富士山マイカー規制 - 静岡県公式ホームページ
  32. ^ a b c d e f 須走ルート|富士登山オフィシャルサイト
  33. ^ a b c d e f g h 御殿場ルート|富士山オフィシャルサイト
  34. ^ 富士山における山岳遭難を防ぐために 平成25年3月 静岡県警察本部 地域部地域課
  35. ^ 平成28年夏期の富士山登山者数について(お知らせ)[関東地方環境事務所:環境省]
  36. ^ 報道発表:平成25年夏期の富士山登山者数について(お知らせ)- 関東地方環境事務所
  37. ^ 統計センターしずおか/平成24年度季節調査(夏季)
  38. ^ <その他>報道発表:平成26年夏期の富士山の中間発表(第2回)について(お知らせ) [関東地方環境事務所]
  39. ^ 富士登山者数について(9月16日掲載)- 山梨県富士吉田市
  40. ^ a b c d e f g h 山小屋情報|富士登山オフィシャルサイト
  41. ^ 山小屋のご案内|富士山ガイド.com
  42. ^ 山小屋案内|静岡県小山町
  43. ^ 御殿場ルートの大石茶屋など
  44. ^ 富士山の山小屋宿泊料金一覧|富士さんぽ
  45. ^ 吉田ルートの鎌岩館
  46. ^ 御殿場ルートのわらじ館
  47. ^ 御殿場ルートの大石茶屋
  48. ^ 富士山のトイレ|利用のための情報|富士登山オフィシャルサイト
  49. ^ a b c 富士登山における安全確保のためのガイドライン
  50. ^ a b 遭難・事故のリスク情報|富士登山オフィシャルサイト
  51. ^ a b 富士登山情報 山梨県警察
  52. ^ 「エベレスト登山歴ある大ベテランが…」4人富士山滑落で関係者|47News
  53. ^ ただし、富士山五口協議会の公式ポスターなど、麓の出発点としての吉田口、河口湖口の名称はその後も使われている。
  54. ^ 富士山:もう迷わない 乱立の標識、統一(毎日新聞)2009年6月25日
  55. ^ 地域からのお知らせ(東海) : 富士山頂でも携帯電話がご利用可能に NTTドコモ、2009年7月15日、2021年12月11日閲覧
  56. ^ KDDI、7月4日に富士山頂をLTEエリア化 無料Wi-Fiも提供”. ITmedia (2017年6月26日). 2021年12月11日閲覧。
  57. ^ 富士山において「Xi」サービスを提供開始NTTドコモ、2013年7月11日、2021年12月11日閲覧
  58. ^ 富士山頂において、iPhone 5 でLTEがご利用いただけますソフトバンク、2013年7月11日
  59. ^ 『富士山が世界遺産になる日』小田全宏(著)、PHP研究所、2006年、ISBN 4-569-64733-2
  60. ^ 『富士山を汚すのは誰か』野口健(著)、角川書店、2008年、ISBN 978-4-04-710142-5
  61. ^ 富士山:「神聖な雰囲気」維持できるか 世界文化遺産登録4年『毎日新聞』朝刊2017年6月23日(山梨県版)
  62. ^ 富士山登山者数の上限設定を了承 山梨・静岡の協議会『日本経済新聞』朝刊2018年3月28日(地域経済面)
  63. ^ 『富士山、開山できず 史上初、静岡と山梨両県登山道閉鎖へ』『静岡新聞』 2020年5月16日
  64. ^ 多和田新也 (2020年6月11日). “山梨県、富士スバルラインを6月15日7時に通行再開。五合目施設の収容人数に合わせて入場制限も”. インプレス. https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1258349.html 2021年12月5日閲覧。 
  65. ^ 富士山登山、今夏控えて 『中日新聞』 2020年6月27日





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