家内労働法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 07:35 UTC 版)
罰則
委託禁止命令違反、最低工賃違反、安全衛生基準違反、家内労働手帳の不交付、工賃不払、委託状況届不提出、申告者に対する不利益取扱是正命令違反等について、懲役刑又は罰金刑の規定がある。なお、罰金額は、法文上は「1万円以下」ないし「5千円以下」と定められているが、これは罰金等臨時措置法により「1万円以上2万円以下」に読み替えて適用される。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第33条~第35条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する(第36条)。本法では、委託者の責任は、委託に係る事業を行なう人又は法人(事業主)にあり、事業主のために行為する者は「委託者」の範囲に含まれていないが、委託者たる法人の代表者又は委託者の代理人、使用人その他の従業者が委託者の業務に関して違反行為をしたときは、第36条により当該従業者等が罰せられるとともに、委託者にも罰金刑が科せられるものである(昭和45年12月28日基発第922号)。
他の法令との関係
本法は民法の請負に関する規定に係る特別法であり、労働基準法等は民法の雇用に関する規定に係る特別法であるという点で対照的であるが、規制の内容には、以下のような相似的な部分がある。
共通事項 | 家内労働法 | 労働基準法、最低賃金法又は労働安全衛生法 |
---|---|---|
契約条件の通知 | 家内労働手帳の交付義務 | 労働条件通知書の交付義務 |
就業時間 | 就業時間の配慮義務 | 時間外労働の禁止等 |
契約解除の予告 | 継続委託の打切の予告の努力義務 | 解雇の予告義務 |
報酬の支払 | 工賃の支払及び最低工賃 | 賃金の支払及び最低賃金 |
災害の防止 | 危害防止基準 | 危害防止基準 |
報酬の支払の記録 | 帳簿の備付義務 | 賃金台帳の調製義務 |
申告者への不利益取扱に関する規制については対照的であり、この法律では監督機関による是正命令違反にのみ罰則が設けられているが、労働基準法等では不利益取扱そのものが罰則付きで禁止される一方で、監督機関に是正命令等の行政処分の権限は付与されていない。 また、請負に関する特別法としては、他に独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法等があり、家内労働者もこれらの保護を受けることがある。
脚注
注釈
- ^ 家内労働者たるサンダルの賃加工者について、労働組合法上の「労働者」として認めた例がある[3]。
- ^ 例えば工賃の毎月払い(第6条2項)について法案審議では「それぞれの実は慣習がございまして、決して一カ月でなくて十日払いとか、一週間払いあるいは十五日払いというようなところもあるわけでございます。そういうような慣習は、法律が一カ月以内と規定したからといって、決して変えることのないように、委託者にはそういう行政指導をやっていきたい。1条にもそういうことが書いてございますので、そういうことは行政指導をしてできるだけ早い機会に、しかも、その慣習が尊重されて行なわれるようなことに行政指導をしたい、かように考えております。」としている[4]。
出典
- ^ ベンゼン - 職場のあんぜんサイト
- ^ 上野晋「化学物質(金属・有機溶剤)の毒性学と産業医としての対応」『産業医大誌』第35巻Special_issue、学校法人 産業医科大学、2013年、 91-96頁、 doi:10.7888/juoeh.35.91、 ISSN 0387-821X、 NAID 130004640673。
- ^ 「東京ヘップサンダル工組合事件」中労委1960年8月1日労委年報15号30頁
- ^ 昭和45年5月7日参議院社会労働委員会における、和田勝美・労働省労働基準局長の答弁)
- ^ 伝票式家内労働手帳モデル様式厚生労働省
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