大脳動脈輪 大脳動脈輪の概要

大脳動脈輪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 22:45 UTC 版)

動脈: 大脳動脈輪
英語 Circle of Willis
ラテン語 circulus arteriosus cerebri
グレイの解剖学 書籍中の説明(英語)
MeSH Circle+of+Willis
テンプレートを表示

解剖学的特徴と機能

構成する動脈は内頸動脈、前大脳動脈、前交通動脈、後交通動脈、後大脳動脈の5つである。中大脳動脈は前大脳動脈を分枝した後に名前がつくので含まれないことに注意するべきである。内頚動脈の枝は前大脳動脈、左右の前大脳動脈を連絡する前交通動脈、椎骨動脈の枝は後大脳動脈、中大脳動脈と後大脳動脈を連絡する後交通動脈で、視神経交叉、下垂体漏斗部、乳頭体、後有孔質などを取り囲む動脈輪を形成、大脳動脈はすべてこの動脈輪を介して出る。中大脳動脈は含まれない。大脳動脈輪は、脳の様々な場所へ血液を均等に分配するともいうが、正常では血圧が等しいので大脳動脈輪の左側と右側との間で血液の交換はほとんど行われてはいない。

大脳動脈輪と主要な大脳動脈から2種類の枝である中心枝と皮質枝が出る。

中心枝は、大脳動脈輪と主要な大脳動脈の近位部から出て脳の実質内に入り込んで、脳の深部組織に血液を供給、前脈絡叢動脈と後脈絡叢動脈は、それぞれ内頚動脈の枝、後大脳動脈の枝として出るも、共に中心枝に入れられている。脳内に侵入した血管である中心枝は、他の動脈と吻合しないと言われており、終動脈と呼ばれる。人間では終動脈は存在しないが、大きい血管に突然閉塞が起こると、これらの小動脈の吻合だけで必要な血液供給を充分に維持することができない。

皮質枝は、それぞれの主要な大脳動脈から分枝し、軟膜内を通り大脳皮質の広い領域に多数の枝を出しながら、脳表面で自由に吻合し動脈叢を形成する。動脈叢より分枝した小さな動脈は、大脳表面から皮質内にほとんど直角に入り込み、いろいろな深さに達し、動脈輪の各部の発達には個体差が著しく、完全な輪が形成されないこともある。

脳虚血時に受ける脳の打撃との関係

既述のように、大脳動脈輪には、その形状に個体差が見られ左右非対称例も多い[2]。例えば、心肺停止状態に陥った際などに発生する、脳の低酸素状態によって脳が受ける打撃の程度は、この大脳動脈輪の状態によっても変化することが知られている[3]。ただし、大脳動脈輪の状態だけで脳の低酸素状態による悪影響が決まるわけではないし、むしろ低酸素状態の程度や持続時間の方がファクターとしては重要である[3]

参考文献

外部リンク

]


  1. ^ 冨永悌二, 鈴木則宏, 宮本享, 小泉昭夫, 黒田敏, 高橋淳, 藤村幹, 寶金清博「もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版)」『脳卒中の外科』第46巻第1号、日本脳卒中の外科学会、2018年、 1-24頁、 doi:10.2335/scs.46.1ISSN 0914-5508NAID 130006350165
  2. ^ 隅田.瀧村 2003.
  3. ^ a b 岡本ほか 2004, p. 872.


「大脳動脈輪」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「大脳動脈輪」の関連用語

大脳動脈輪のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



大脳動脈輪のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの大脳動脈輪 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS