四十口径八九式十二糎七高角砲 四十口径八九式十二糎七高角砲の概要

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四十口径八九式十二糎七高角砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/23 07:54 UTC 版)

四十口径八九式十二糎七高角砲
種類 艦砲/高射砲
原開発国 大日本帝国
運用史
配備期間 1932年2月〜1945年
配備先  大日本帝国海軍
関連戦争・紛争 太平洋戦争
開発史
開発期間 1929年1931年
製造数 1,306門
諸元
重量 20.3トン(A1型)
要員数 11名

砲弾 通常弾, 三式弾, 照明弾
弾薬包全長: 970.8 mm
砲弾重量 23.00 kg
34.320 kg(弾薬包)
口径 127mm口径 / 40口径長
砲尾 横鎖栓式
仰角 -8°/+90°
俯仰速度: 12°/s(人力の場合3度/秒)
旋回角 旋回速度: 6度/秒(人力の場合3度/秒)
発射速度 14発/分
初速 720 m/s
最大射程 14,622 m
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概要

日本海軍は対空兵器として45口径三年式12cm砲を対空砲(いわゆる高角砲)として改設計した四十五口径十年式十二糎高角砲を配備していた。だが、航空機の発達や対空砲として設計されたわけではない十年式は性能不足が生じることが予想されたため、高角砲(対空砲)として設計した砲を開発することとなった。

設計に当たっては、

  • 発射速度を大とする。1門あたり毎分14発を目標とした。
  • 弾の威力を大きくする。既存の12 cm高角砲より径を0.7 cm大きくし、被害半径を拡大させた。
  • 弾薬包の重量を35 kg以下に抑える。砲員の体力消耗により発射速度が低下することを抑えるため。
  • 砲架はなるべく軽量化し、動作速度を上げる。特に、急降下爆撃に対応するため旋回速度より俯仰速度を重視した結果、俯仰速度は12度/秒となった。
  • 信管は自動調定とする。これも発射速度の低下を抑えるため。

とされた。

尾栓は閉鎖速度の速い横鎖栓式とされた。以後日本海軍で開発された高角砲は全てこの尾栓方式を採用している。

1929年(昭和4年)より設計が開始され1931年(昭和6年)に第1号機が完成し、翌年2月に四十口径八九式十二糎七連装高角砲架とともに制式採用[1]された。

評価

射撃速度はカタログ上では最大毎分14発を発射可能となっているが、1933年(昭和8年)の『砲術年報』には「訓練すれば毎分12発で撃てる非常によい砲」と記され、1939年(昭和14年)に実施された対空演習の実績によれば、本砲は1分間に7、8発発射できればよい方と報告されている[2]

また本砲の時限信管は装填時に自動的に調定されるが、この調定器の開発は難航した[2]。当初は誤差が許容範囲内(±0.2秒)に収まらず、一説では1935年(昭和10年)にようやく安定した精度が出るようになったと言われているが、1939年の演習でも信管調定機の誤差について触れられている。

アメリカ軍の苛烈な航空攻撃に直面した1944年(昭和19年)のレイテ沖海戦の参加艦からは下記のような報告がされている[2]

  • 砲の射程や威力に不満はないものの、砲が重すぎるため高速機への対応が不十分
  • 九八式十糎高角砲程度のものを両舷2群ほど増設してほしい
  • 発射速度が遅く弾幕を形成できない

戦争末期に建造された松型駆逐艦では、主砲として従来の駆逐艦が装備した50口径三年式12.7センチ砲に代わって、本砲の電動機出力を増強したものを装備した。対空戦闘・対水上艦戦闘の双方に対応できるため、用兵側は好評価を与えている[3][4]

形式

連装砲架

A1型
初期の開発型
A1型改1
重巡洋艦用。波よけ盾付き
A1型改2
航空母艦用。煤煙よけ盾付き
A1型改3
大和型戦艦用。爆風よけ盾付き
A2型
大量生産用
A3型
照準器の変更
A4型
照準器の変更
B1型
松型駆逐艦2番砲用。電動機を10kWから15kWに強化し、旋回・俯仰速度が上昇している。
B2型
高射装置搭載艦用

単装砲架

B1型改4
松型駆逐艦1番砲用。

  1. ^ a b 昭和7年2月6日付 海軍内令兵 第6号。四〇口径ではない。
  2. ^ a b c 秋元78-82頁
  3. ^ #S1906第30駆日誌(4)p.37「(二)兵装ハ十分備ハレリ 現装備ノ主砲ハ對空對水上戰斗共射程並ニ威力ニ於テ十分ノモノト認ム 今次作戰行動中三回ニ亙ル對空戰斗並ニ「オルモック」湾内ニ於ケル對駆逐艦夜間戰斗ニ於テ實認シ得タリ 又発射管ハ四聯装一基ニテ十分目的ヲ達シ得ルモノト認ム」
  4. ^ 海軍兵科将校139-140頁


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