嘉陽炭鉱鉄道 沿線概況

嘉陽炭鉱鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 07:10 UTC 版)

沿線概況

芭溝 - 黄村井の一帯は深い谷底にあり、近年に至るまで周囲の崖に阻まれ道路建設が実現しなかった。そのため半世紀前の炭鉱街が当時に近い姿で残る。周囲の炭鉱が次々と閉山したため、過疎化が進み観光に頼らざるを得ないという一面もある。その他の区間は沿線のほとんどが農地とまばらな雑木林で占められ、特に竹が目立つ。二毛作が行われる棚田、狭い土地を活用した段々畑といった農村風景が車窓に広がる。ただし近年は過疎化の影響か、休耕田が急増している。
河川による浸食地形の斜面に張り付くように建設され、見通しの悪い急カーブが多い。躍進駅から最も標高の高い仙人脚駅までは、10.2kmの標高差が224mと、平均勾配は22パーミルに及ぶ。トンネルが6か所存在するが、橋梁は存在しない。

駅一覧

★印は躍進発の観光列車のみが停車する撮影地。

駅名 営業
キロ
(km)
海抜
(m)
日本語 簡体字中国語 英語
石渓駅 石溪站 Shixi 0.00 364
躍進駅 跃进站 Yuejin 4.40 378
月亮田駅 月亮田站 Yueliangtian 7.40
蜜蜂岩駅 蜜蜂岩站 Mifengyan 9.40 484
段家湾★ 段家湾景点 Duanjiawan
菜子壩駅 菜子坝站 Caiziba 12.60 567
仙人脚駅 仙人脚站 Xianrenjiao 14.60 602
亮水沱★ 亮水沱景点 Liangshuituo
蕉壩駅 蕉坝站 Jiaoba 16.84 585
芭溝駅 芭沟(芭蕉沟)站 Bagou(Bajiaogou) 18.24 572
黄村井駅 黄村井站 Huangcunjing 19.84 565

この他、2015年に躍進駅 - 月亮田駅間に信号所が新設されている[9]。また、石渓 - 躍進間にはかつて停車場があり、希望する沿線住民は乗降することができた[5]

車両

歴史の項で述べたように、当初は手押しトロッコのみが使用されたが、後に蒸気機関車を導入した[10]。四川嘉陽集団は傘下に機械修理製造会社をもち、1972年以降は蒸気機関車のボイラーをも製作する能力を保有し、更新を行っている。2016年時点に於いて走行している蒸気機関車のうち2両は内製であるとしている[11][注釈 8]

蒸気機関車

改軌後はより大型なZM16-4-C2(以下、C2形と略す)蒸気機関車が導入され、今も主力として使用されている。
2011年には07、08、09、10、14号機の稼働が確認された。[13]
2016年には07、10、16、17、18号機が確認された。[14]
2018年には 08、16、17、18、19号機が確認されている。[15]

  • 8号機 - 彭白線(2003年運転停止)[注釈 9]で使用されたC2形を2006年導入。
  • 16号機 - 8号機と同様の元彭州機。なお、8号機・16号機と共に複数導入されたスロープバックテンダー車が、既存機の箱型テンダー車を置き換えている[16]
  • 17-18号機 - 2015年に追加。ボイラーは系列企業による新製。登場時より彭州機由来のスロープバックテンダー仕様。
  • 19号機 - 2017年に追加された。ボイラーと台枠は新製、前照灯ケースが六角形と特徴的である[9]

電気機関車

21世紀初頭に導入された凸型機関車の他、後述する猿児車を牽引するバッテリーロコが存在している[17]

  • ZL14-7電気機関車 - 躍進 - 石渓間における石炭輸送を担うべく2000年に3台購入された。2016年末以降は運転を停止している[2]

内燃機関車

  • SJ380A型ディーゼル機関車 - 1991年に2両就役。故障が続発し1996年に引退。蜜蜂岩駅と芭溝駅構内に廃車体が展示されている。
  • C2形蒸気機関車を模したディーゼル機関車[注釈 9]1両が新製、2017年12月より導入された[3]。今後も増備が計画されている。

貨車

開通当初に使用されたトロッコは、簡単なフレームの上に竹籠を載せたもので、のちに木製のものを経て鋼製の5トン二軸車に代わった。現在見ることができるのは全て鋼製ホッパー車である。 その他に、3軸の無蓋車とフラットカーが存在する。

旧型客車

どちらも下降窓を備えるがガラスが無く、閉じると視界が完全に遮られる。各車両とも中央片側(石渓駅基準で岷江側)にのみ手動ドアを備える。妻面は完全に封鎖されており、車両間を移動することはできない。濃緑色で塗装されているが、近年になってドア側に黄色の帯が入るようになった。

  • 二軸車 - 観光鉄道化まで当鉄道の主力車で、窓の大きさなどに若干の個体差がみられる。車内はいわゆるロングシートで、ドア横の車掌席には手動ブレーキのハンドルが装備されている。
  • 荷物車 - ボギー台車装備の4軸車。豚などの家畜が積み込まれる場合に備え、車内には簡単な仕切りがある。

観光客車

観光鉄道化に伴い導入された。製造時期によって形態が異なるが基本的な仕様は概ね共通している。
いずれもボギー車で、車内はクロスシート。バス用を転用したとみられる透明窓が装備され、横方向に開けることもできる。妻面は非貫通であるものの、開閉可能な窓が装備されている。導入当初は塗色がまちまちであったが、現在は濃緑色に黄色の帯を巻いた出で立ちである。(中国国鉄客車の新標準色に近い)
以下に用いる〇次車という表現は説明の便宜上のもので、正式な区分名称ではない。

  • 1次車 - 登場時の塗色は茶色で、非冷房。車端部側面のドアから乗車するタイプと、開放デッキから乗車するタイプがある。座席数37[18]
  • 2次車 - 車端部の独立電源により空調を装備。デッキ仕様は存在しない。登場時は明るい青色。
  • 3次車 - 2016年に新製。登場時より緑色であるが、従来車よりも色調が明るい[9]
  • 4次車 - 2018年に発表された。車内には案内用液晶モニターが設置されている[19]

猴児車(猴儿车)

観光列車が芭溝駅折り返しとなり、代わりに末端区間の観光客輸送用に導入された[17]。簡易な柵で囲われた2軸車で、座席は無い。楽山市沙湾区に存在した沫江煤電の通称鳥かご列車に近い。

霊柩車

沿線道路が開通するまで、本鉄道には沿線住民の遺体を当鉄道で輸送する習慣が存在した。そのために車番0の霊柩車が存在し、普通列車の最後尾に連結される。通常の二軸車より一回り小さく、車端に設けられた遺族乗降用ドアの他、側面中央部に横長の開口部をもち、遺体を寝かせた姿勢のままで安置することができる。遺族は発車時に駅ホームで爆竹を鳴らし、走行中は道教の習俗に従って車窓から紙銭を撒いた。

その他

長らく朝顔型連結器が使用されていたが、2017年から自動連結器を装備した車両が登場している[20]


  1. ^ 2016年をもって石炭の鉄道輸送が終了し、当初の鉱山鉄道としての役割は失われた[2]
  2. ^ a b ただし2017年末の新製ディーゼル機関車導入後、この限りでなくなった[3]
  3. ^ 中国本土にも轻便铁路という語彙は存在するが、香港軽鉄(軌間1435mm)に代表されるように、日本でいうLRTを指す場合が多く、日本での用例とはやや異なっている。
  4. ^ 中国の狭軌路線としてはメーターゲージ昆河線(現存)が代表的であるが、かつては河南省黒竜江省において広大なナローゲージ路線網が広がっていた。更に、当鉄道のような小規模産業鉄道に至っては全土に数多く存在したが、道路網の発達に伴い激減した。
  5. ^ 第一坑口は駅から南に向かった方向の川べりにあり、ウィンチ設備などの施設跡が今も残る。
  6. ^ 馬辺河は鉄道の南方に位置する岷江の支流で、犍為市街地南方で岷江に合流する。馬廟は芭溝からみて東南東、河の合流点に位置する集落。後年、下流に建設されたダムによりせき止められ、馬廟周辺は桫欏湖(桫椤湖)と称するダム湖となっている。遊覧船が就航し、鉄道を含めた周遊観光コースに組み込まれている[4]
  7. ^ a b c 2018年夏からは平日も昼の普通列車が運休し、2往復に減便されている模様[2]。観光列車、休日ダイヤは不明。
  8. ^ 2015年に導入された17、18号機とみられるが、これらは完全な内製ではなく新製ボイラーに在庫部品を組み合わせたリビルドではないかとの指摘がある。[12]
  9. ^ a b 彭州では廃線跡の一部を転用した観光鉄道丹景山小火車(全長3.2km)が2017年に開業したが、機関車、客車とも完全に新製された車輛を使用しており、特に機関車は当鉄道の新型機関車と同型とみられる。
  1. ^ 公司简介 2016.
  2. ^ a b c d John Raby:SY-country news
  3. ^ a b 嘉陽BBS 2017c(2017年12月27日)
  4. ^ 嘉阳桫椤湖旅游景区-Ctrip
  5. ^ a b BaShi Railway. Archived 2007-06-30 at the Wayback Machine. auf: railwaysofchina.com
  6. ^ 嘉陽BBS 2018a(2018年1月2日)
  7. ^ China’s last steam train”. BBC Travel. British Broadcasting Corporation. 2018年3月6日閲覧。
  8. ^ 嘉陽BBS 2017b(2017年11月17日)
  9. ^ a b c d 鬼頭、和田『Rail Magagine No.405【芭石鉄路最新消息】』 2017.
  10. ^ R. N. Pritchard: Industrial Locomotives of the People's Republic of China. Industrial Railway Society, Melton Mowbray 2008, ISBN 978-1-901556-48-3.
  11. ^ 公司概况 2016.
  12. ^ John Raby:A Day at Mifeng with the chickens
  13. ^ Ameling Algra: Steam in China, October 2011.
  14. ^ John Raby: "China Real Steam Tour February - March 2016"
  15. ^ John Raby:China Narrow Gauge Tour April 2018
  16. ^ Rob Dickinson: "Shibanxi GOLD,2008"
  17. ^ a b 嘉阳桫椤湖:周末应该这样过——嘉阳小火车游记 - 搜狐
  18. ^ 芭石(バセキ)鉄道・「嘉陽SL」蒸気機関車 - 中国重慶黄金假期国際旅行社
  19. ^ 嘉陽BBS 2018b(2018年1月18日)
  20. ^ 嘉陽BBS 2017a(2017年10月17日)





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