南沙諸島 実効支配の状況

南沙諸島

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/28 01:24 UTC 版)

実効支配の状況

国連海洋法条約において「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」と定められている。

本条約の島は「領海接続水域」に加えて「排他的経済水域及び大陸棚」を有する。

2016年7月12日の常設仲裁裁判所 (PCA) において、スプラトリー諸島(南沙諸島)には排他的経済水域、大陸棚を有する国連海洋法条約上の「島」は一つも存在せず[47][85]、「イツアバ島 (Itu Aba)、ティツ島 (Thitu)、ウェストヨーク島 (West York Island)、スプラトリー島 (Spratly Island)、ノースイースト島 (North-East Cay)、サウスウエスト島 (South-West Cay) も法的に排他的経済水域、大陸棚を有さない岩である」[86]との裁定が下された。

国連海洋法条約において「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」と定められており、本条約によれば、人間の居住または独自の経済的生活を維持することのできない岩は、領海は有するものの排他的経済水域および大陸棚を有さない。

常設仲裁裁判所は、2016年7月12日、中沙諸島スカボロー礁のほか、クアテロン礁ファイアリー・クロス礁ジョンソン南礁を含むジョンソン礁、ケナン礁ガベン礁(北礁)が排他的経済水域、大陸棚を有さない、すなわち国連海洋法条約上の「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」であるとの裁定を下した[85][86]

以下、埋め立て面積が1 km2超になっているものについては、面積を太字表示する。

名称 英語名
中国語名
実効支配 備考
ノースイースト島 Northeast Cay
北子島
フィリピン
サウスウエスト島 Southwest Cay
南子島
ベトナム
サウス礁 South Reef
奈羅礁
ベトナム
ウェストヨーク島 West York Island
西月島
フィリピン
パグアサ島 Thitu Island
中業島
フィリピン 滑走路あり
フラット島 Flat Island
費信島
フィリピン
ナンシャン島 Nanshan Island
馬歡島
フィリピン
ロアイタ島 Loaita Island
南鑰島
フィリピン
ロアイタ礁 Loaita Cay
双黄沙洲
フィリピン
ランキアム礁 Lankiam Cay
楊信沙洲
(非占拠)
太平島(イツアバ島) Itu Aba Island
太平島
台湾 滑走路あり。自然形成された陸地面積は南沙諸島最大(約0.51km2)。
サンド礁 Sand Cay
敦謙沙洲
ベトナム 1975年にベトナムが占領。2011年から2014年にかけて、埋め立てにより元の面積の50%以上にあたる約2.1ヘクタール(0.021 km2)の陸地が新たに加えられた。そこに軍事施設も建設されている[87]。2011年から2016年の間では、埋め立て面積は約0.037 km2になる[88]
ナムイエット島 Namyit Island
鴻庥島
ベトナム
ガベン礁 Gaven Reefs
南薫礁
中国 ティザード堆 (英語名: Tizard Bank, 中国名: 鄭和群礁) の一部。2014年3月以降に埋め立てられ、CSISの分析では人工島の面積が約0.14 km2となっている[87]。2016年7月12日の常設仲裁裁判所による裁定では、フィリピンの低潮高地であるとの主張に対して北礁は排他的経済水域および大陸棚を有さない岩であり、南礁は低潮高地であるとの判断が下された[85]
エルダド礁 Eldad Reef
安達礁
中国
シンコウ島 Sin Cowe Island
景宏島
ベトナム 2006年から2016年の間に約0.106 km2埋め立てがなされた[88]
ジョンソン南礁 Johnson South Reef
赤瓜礁
中国 ユニオン堆 (英語名: Union Bank, 中国名: 九章群礁) の一部。1988年3月のスプラトリー諸島海戦で中国がベトナムから武力奪取したまま実効支配。2014年初めまでは、小さなコンクリート基礎上に通信設備・駐屯兵舎・桟橋だけが浅瀬に構築された状態であったが、その周辺が約0.1 km2埋め立てられた後、11月から12月に新たな建造物の建設の主要工程が行われ、人工島の面積はCSIS(戦略国際問題研究所)の分析では約0.11 km2となっている[87]
ケナン礁 Mckennan Reef
西門礁
(非占拠)
ディスカバリーグレート礁 Discovery Great Reef
大現礁
ベトナム
ピアソン礁 Pearson Reef
畢生礁
ベトナム
ファイアリー・クロス礁 Fiery Cross Reef
永暑礁
中国 1988年3月に中国がベトナムから武力奪取。2014年8月から埋め立てが開始され、人工島の造成は11月に終了し、CSISの分析では埋め立て面積が約2.74 km2[87]。2015年1月からは3,000メートル級の滑走路の建設が開始され、港湾施設の整備も続けられている[87]。2016年1月2日、飛行場の完成と滑走路を使用した試験飛行が明らかになった[54]
クアテロン礁 Cuarteron Reef
華陽礁
中国 1988年3月に中国がベトナムから武力奪取。人工島の大部分の造成・浚渫工事については2014年夏に実施されたとみられ、CSISの分析では埋め立て面積が約0.23 km2、建物・施設の建設が続けられている[87]
セントラル・ロンドン礁 Central London Reef
中礁
ベトナム
ウエスト・ロンドン礁 West London Reef
西礁
ベトナム 1975年以来、ベトナムが実効支配。1994年5月もしくは6月に灯台を建設。以後、コンクリート製監視哨を幾つか構築した。2012年8月以降に埋め立てにより新たに人工の陸地が作られた。その埋立面積は約6.5ヘクタール(0.065 km2)である。そこに建築物を建設し、港も構築した[87]。2013年から2016年の間では、埋め立て面積は約0.285 km2になる[88]
スプラトリー島 Spratly Island
南威島
ベトナム 滑走路あり。2014年から2016年の間に約0.151 km2埋め立てがなされ、600m級の滑走路が1,000m級に延伸された[88]
アンボイナ砂堆 Amboyna Cay
安波沙洲
ベトナム
スワロー礁 Swallow Reef
彈丸礁
マレーシア 1,400m級の滑走路あり[88]
マリベルス礁 Mariveles Reef
南海礁
マレーシア
(中国=中華人民共和国、台湾=中華民国)

低潮高地

低潮高地(英語:low-tide elevation)[59]とは、低潮時には海面上に露出するが、高潮時には水没する岩礁(干出岩)・砂州のことで、国連海洋法条約上、領海排他的経済水域 (EEZ) も有さない。ただし、自国のEEZ内であればその国が建造物を建設することができる。中国は現在、南沙諸島内で3か所の低潮高地およびその周辺の珊瑚礁を大規模に埋め立て人工島を建設しているが、どれも中国のEEZ内ではない。

常設仲裁裁判所は、2016年7月12日、ヒューズ礁ガベン礁(南礁)、スビ礁ミスチーフ礁セカンド・トーマス礁が国連海洋法条約上の「低潮高地」であるとの裁定を下した[85]。またミスチーフ礁およびセカンド・トーマス礁は、フィリピンのパラワン島を起点とする排他的経済水域および大陸棚に含まれることに加え、ガベン礁(南礁)の低潮位線がガベン礁(北礁)およびナムイエット島領海基線とすることが可能であるということ、ヒューズ礁の低潮位線がケナン礁およびシンコウ島の領海基線とすることが可能であるということ、スビ礁の低潮位線がティツ堆のサンディー砂堆の領海基線とすることが可能であるという裁定も下した[85]

名称 英語名
中国語名
実効支配 備考
ミスチーフ礁 Mischief Reef
美済礁
中国 1994年までフィリピンが実効支配していたが、中国が占拠して建造物を浅瀬に構築したことを1995年2月フィリピンが公表。2015年初めから環礁の西環沿いを大規模に埋め立て、CSISの分析では埋め立て面積が約5.58 km2となり、最近は環礁の南口の拡幅をしており、環礁周辺で中国軍艦船も見受けられることから、将来的に埋め立てられたミスチーフ礁が海軍基地になると予想されている[87]。3,000メートル級の滑走路や多数の施設が建設され、完成している[89]
セカンド・トーマス礁 Second Thomas Shoal
仁愛礁
フィリピン 1999年にフィリピンが派兵して駐留[90]
スビ礁 Subi Reef
渚碧礁
中国 1988年3月に中国がベトナムから武力奪取。浅瀬にレーダーサイトを建設。2014年7月から人工島造成のために主要な埋め立てが開始され、CSISの分析では埋めて面積が約3.95 km2となっている[87]。2015年10月に着工した灯台(高さ55メートル)が完成し、2016年4月からジョンソン南礁、クアテロン礁に続いて運用を開始した[91]。3,000メートル級滑走路や多数の施設が建設され、完成している[89]
ヒューズ礁 Hugh Reef
東門礁
中国 1988年3月に中国がベトナムから武力奪取。浅瀬に建造物が構築されて軍隊が常駐。2014年夏から人工島の造成・浚渫工事が開始され、CSISの分析では面積が約0.08 km2となっている[87]。ベトナム国営紙によると、2016年4月に記者が船で近づき取材し、複数のレーダーアンテナ、通信用とみられる鉄塔型のアンテナの存在を撮影して確認した[92]
エリカ礁 Erica Reef
簸箕礁
マレーシア 1999年6月にマレーシア海軍インベスティゲーター砂州とともに建造物を構築し、兵員を駐在させた[93]

  1. ^ 行政区分は、1938年(昭和13年)12月23日外甲第116号閣議決定により、高雄州高雄市の一部とされていた。






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