劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 17:44 UTC 版)
劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト | |
---|---|
MASKED RIDER 555 PARADISE LOST | |
クライマックスシーンのロケ地となった さいたまスーパーアリーナ | |
監督 | 田﨑竜太 |
脚本 | 井上敏樹 |
原作 | 石ノ森章太郎 |
製作 | |
ナレーター | 鈴木英一郎 |
出演者 | |
音楽 | 松尾早人 |
主題歌 | ISSA「Justiφ's -Accel Mix-」 |
撮影 | 松村文雄 |
編集 | 長田直樹 |
製作会社 | 仮面ライダー555製作委員会 |
配給 | 東映[注釈 1] |
公開 | 2003年8月16日 |
上映時間 |
|
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 15億円[1] |
前作 | 劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL |
次作 | 劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE |
キャッチコピーは「戦闘は最高潮へ。帝王のベルトをめぐる救世主伝説。」、「真・救世主伝説。ライダー部隊出現。いよいよ聖戦開始。」。
概要
特撮テレビドラマ「平成仮面ライダーシリーズ」『仮面ライダー555』の映画化作品である。本作品はテレビシリーズとはリンクしないパラレルワールドの作品となっている。これは前作『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』がテレビシリーズとの連動を重視した内容であったため、本作はテレビシリーズとは異なる、独立した1本の映画として成功させようという意図があった[2]。独立性を高めるため、テレビシリーズでの衣装やセットなどはほとんど使用されていない[3][4]。また、本作品で着用している衣装は、仮面ライダーシリーズや過去の石ノ森作品のテイストを織り交ぜている[3]。
配役では、初の外国人ライダーとして注目された[4]ピーター・ホーの他、ブレイク前の速水もこみちが映画初出演となった。シリーズOB・OGの再出演では、津田寛治、角替和枝、田口主将など平成シリーズの名脇役に加え、納谷悟朗、加藤精三、飯塚昭三ら昭和仮面ライダーシリーズで活躍した俳優・声優が本作品では黒幕として顔出し出演している。
終盤のクライマックスの場面では、観衆が控えた巨大ドーム闘技場で決戦に挑む、そのエキストラが映画『十戒』の如く主人公が歩む道を開けるなど、古代ローマ神話を
前年までと同様に、仮面ライダーファイズのブラスターフォーム、ウルフオルフェノク、ホースオルフェノク(激情態)、ライオトルーパーといった新フォーム、新キャラクターの先行登場も踏襲されている。特に、ウルフオルフェノクはテレビシリーズに先行して巧の正体が判明するものであったが、撮影に参加していた後述の1万人のエキストラたちにもその時点では知らされていなかったため、実際にそれを目の当たりにしたことによってどよめきが起こったといい、試写の段階でも同様にどよめきが起こったという[6]。
オートバジンはフルCGで表現する予定であったが[注釈 2]、テレビシリーズでオートバジンのスーツアクターを務めていた押川善文はそのことを伝えられずに現場で待機していたため、田﨑の配慮によりワンカットだけスーツで撮影された[7]。
撮影には前作『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』同様、スローモーションと画の調子のメリットのため、カメラにはバリカムが使用されているほか、ラジコンヘリや簡易モーションコントロールヘッドが使用されている[3]。
企画書での仮題は『仮面ライダー555NEXT』と付けられており、重要な役回りとして勇治に共鳴して行動を共にするオルフェノクの少年「小倉ひろみ」が登場する予定だったが、上映時間の関係からなくなったと思われる[3]。
井上敏樹は本作品の脚本をグランドプリンスホテル新高輪の一室で2週間缶詰になった末に完成させている[出典 1]。
エキストラロケとギネスブック認定
本作品の大きな見所として、クライマックスシーンに登場する1万人の観客役の公募エキストラ出演が挙げられる。さいたまスーパーアリーナで行われた1万1千人のエキストラロケ・ファイナルシーンは、マスメディアや特撮雑誌でもクローズアップされ話題となり、一作の映画における出演者としては当時史上最高としてギネス・ワールド・レコーズに公認された。応募総数は90,000人[9]・関係者の話によれば99,000人まで応募総数は伸びたという[10]。
エンドクレジットでは出演した代表者[9]が紹介されており、その名前の字間を使って、「THANK YOU !」[注釈 3]と書かれている。またエキストラの中には声優の真田アサミ、福山潤、間島淳司も参加している。
2016年の上映イベントにて、監督の田﨑や主演の半田はエキストラの演技力や意識の高さを評価し、特撮監督の佛田洋も動きがうまくいっていたため合成がやりやすかったことを述懐している[11]。
あらすじ
遠くない未来、どこかの国。全世界は人類の進化形たるオルフェノクの組織であるスマートブレイン社が完全に統治し、人類のほぼ全てはオルフェノクと化していた。2,433人を残すのみとなった人間たちは廃墟のような居住区に追いやられ、オルフェノクに脅える日々を過ごしていた。そんな状況に反逆する一部の者は人間解放軍を結成していた。逆転する唯一の手段として、スマートブレイン社が持つファイズ以上の力を引き出す二つの帝王のベルトの奪取を試みるも力の差は圧倒的で、敗北を重ね続ける。
そんな中、最後まで希望を失わず、レジスタンス活動を続ける解放軍の象徴である園田真理は、人類に味方する木場勇治ら3人のオルフェノクたちと共に、行方が知れない救世主ファイズ=乾巧の帰還を信じていた。しかし、スマートブレイン社の1万人にもおよぶライオトルーパー部隊の総攻撃の前に消えた巧の消息は、いまだつかめていなかった。解放軍のリーダーである水原や、解放軍で唯一オルフェノクとまともに戦える用心棒の仮面ライダーカイザ=草加雅人たちは、もはや真理の言葉に耳を貸さず、それぞれに身勝手な行動を繰り返し、解放軍は明日の希望も見出すことのできない悲惨な状況になっていた。
真理は人々に希望を与えるため、仮面舞踏会を催すことを決意する。その準備をしながらの日々に人類解放軍は希望を見出していくものの、帝王のベルトを装着した仮面ライダーサイガ=レオとライオトルーパー部隊の強襲により、雅人を始め、多くの人々が命を落とす。中止を余儀なくされた舞踏会の会場に佇む真理の前に現れたのは、記憶を失い「隆」という靴職人として、少女・ミナと暮らしていた巧であった。真理との再会で記憶を取り戻した巧は、再びファイズに変身し、その場に現れたライオトルーパー部隊を蹴散らす。
巧は人間解放軍に合流するが、その直後に水原がファイズギア強奪を企んだことによりミナが殺され、水原自身も自滅に近い形で死亡する。これによって、水原殺害の犯人として木場ら3人が追放されてしまう。木場らは身の潔白を証明すべく、捨て身の覚悟でスマートブレイン社本社に乗り込み、帝王のベルト奪取を目論む。しかしその行動は筒抜けであり、木場は2人の仲間を失ったうえ、スマートブレイン社の策謀によって人間に裏切られたと思い込み、絶望する。また人間解放軍の居住区を再びサイガとライオトルーパー部隊が襲い、真理がさらわれてしまう。巧は人間解放軍と袂を分かち、単身真理の救出に向かう。
公開闘技場にて大観衆が真理の処刑へのカウントダウンを叫ぶなか、ファイズ=巧が乱入する。ファイズは巨大オルフェノクであるエラスモテリウムオルフェノクから間一髪で真理を救い出し、続けて現れたサイガを激戦の末に倒す。そこに、オルフェノクとして生きることを誓い、帝王のベルトを身に着けた木場が現れ、仮面ライダーオーガに変身、ファイズを圧倒する。追い詰められた巧は、ウルフオルフェノクとしての正体を晒して反撃しつつ、木場や真理と言葉を交わして救世主としての道を歩むことを決意、ファイズブラスターフォームへと変身しオーガを倒す。改心した木場は、身を挺してエラスモテリウムオルフェノクから真理を守り、自分の夢を巧に託して息を引き取る。巧は立ち塞がる観衆らを一喝して退け、真理と手を取り合い「行けるところまで行く」と決意を語りながら闘技場から去っていく。
注釈
- ^ a b c d ノンクレジット
- ^ これは、前作『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』同様、テレビシリーズで使用していたオートバジンやサイドバッシャーのデータが、精度や画像の大きさの関係から劇場のスクリーンには対応できないため作り直したことによるもの[3]。
- ^ ディレクターズカット版では「SEE YOU AGAIN !」。
- ^ レオ役のピーター・ホーは、「唯の悪役では無く、ネイティブアメリカンが闘いを聖なる物と考えるように、闘いをスポーツのように捉えており、その中で自分自身を発見している人物」と解釈している[16]。
- ^ テレビシリーズでは登場しないが、放送開始直前のジャンクションにも登場しており、ファイズ(ブラスターフォーム)・カイザ・デルタと睨み合う描写がある。
- ^ 帝王のベルトは、劇場版の前日譚『MASKED RIDER 555 EDITION - ロスト・ワールド-』では、スマートブレインに回収されたデルタのベルトを基に造られたとされている。
- ^ レオ役のピーター・ホーもこのデザインを気に入っており、「悪役には見えない」と語っている[16]。
- ^ 設定上は無限に延びる。
- ^ a b c d e f g 役名未表記。
出典
- ^ 2003年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ 「白倉伸一郎東映プロデューサーインタビュー」『仮面ライダ-555超全集』 上巻、小学館〈てれびくんデラックス愛蔵版〉、2003年8月、87頁。ISBN 4-09-101491-7。
- ^ a b c d e f g h i j k 公式アルバム 2003, pp. 68–75, 「STAF INTERVIEW」
- ^ a b テレビマガジン特別編集 2004, p. 91
- ^ 白倉伸一郎(総合監修)『仮面ライダーマガジン』 Summer '10、講談社〈講談社MOOK〉、2010年、66頁。ISBN 978-4-06-379461-8。
- ^ a b 超解析 2016, p. 77, 「INTERVIEW 田﨑竜太[監督]」
- ^ a b 仮面俳優列伝 2014, pp. 101–111, 「第2章 昭和から平成へ仮面の下のイノベーション 09 押川善文」(東映ヒーローMAX vol.38掲載)
- ^ “新作『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』制作決定!半田健人・芳賀優里亜が想いを明かし、井上敏樹・田崎竜太・白倉伸一郎も登壇したイベントの模様をレポート!”. 電撃ホビーウェブ (KADOKAWA). (2023年5月6日) 2023年5月7日閲覧。
- ^ a b 公式アルバム 2003, pp. 66–67, 「10000 ORPHNOCHS VS 555」
- ^ ディケイド公式読本 2009, p. 57.
- ^ 「日本映画監督協会劇場EVENT REPORT」『宇宙船』vol.152(SPRING 2016.春)、ホビージャパン、2016年4月1日、114頁、ISBN 978-4-7986-1218-8。
- ^ a b c d HF 2004, p. 47.
- ^ a b c HF 2004, p. 94.
- ^ HF 2004, pp. 47、94.
- ^ a b c d e HF 2004, p. 45.
- ^ a b c d e f g 公式アルバム 2003, pp. 12–55, 「CHARACTERS OF 「555」」
- ^ a b c d e f g HF 2004, p. 91.
- ^ 超辞典 2011, p. 798.
- ^ a b c d e f HF 2004, p. 86.
- ^ a b 図解超百科 2003, p. 32.
- ^ 平成完全超百科 2018, p. 25.
- ^ HF 2004, p. 93.
- ^ テレビマガジン特別編集 2004, p. 76, ファイズ成立への道.
- ^ a b c d e f 公式アルバム 2003, pp. 61–63, 「DESIGNS OF 「555」」
- ^ 『週刊 仮面ライダー OFFICIAL DATA FILE』[要文献特定詳細情報]
- ^ 英雄伝 2010, p. 113.
- ^ 図解超百科 2003, p. 34.
- ^ 超辞典 2011, p. 102.
- ^ 決戦超百科 2003, p. 39.
- ^ 英雄伝 2010, p. 114.
- ^ a b ディケイド公式読本 2009, p. 71.
- ^ HF 2004, p. 57.
- ^ ディケイド公式読本 2009, pp. 158–159.
- ^ a b c d e f g h i j k l m 完全超悪 2020, pp. 142–145, 「DESIGNER INTERVIEW 篠原保[仮面ライダー龍騎/仮面ライダー555]」
- ^ HF 2004, p. 89.
- ^ a b c d HF 2004, p. 64.
- ^ a b c HF 2004, p. 88.
- ^ 図解超百科 2003, p. 49.
- ^ a b c d 公式アルバム 2003, pp. 76–78, 「DIARY OF 「555」」
- ^ a b c d e f 公式アルバム 2003, p. 79, 「STAFF LIST」
- ^ JAE NAKED HERO 2010, p. 141, LIST OF WORKS 高岩成二.
- ^ a b c d e f g h エンドクレジットより。
- ^ ディケイド公式読本 2009, p. 172.
- ^ 『仮面ライダー平成』 vol.4《仮面ライダー555》、講談社〈講談社シリーズMOOK 仮面ライダーOfficial Mook〉、2015年、31頁。ISBN 978-4-06-353554-9。
- ^ a b JAE NAKED HERO 2010, pp. 36–51, 永瀬尚希
- ^ a b JAE NAKED HERO 2010, p. 110, LIST OF WORKS 押川善文
- ^ JAE NAKED HERO 2010, p. 123, 押川善文.
- ^ 「VisualRadar」『宇宙船』Vol.112(2004年5月号)、朝日ソノラマ、2004年5月1日、66頁、雑誌コード:01843-05。
出典(リンク)
- 劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロストのページへのリンク