メコン川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 05:54 UTC 版)
源流および支流、分流
(上流から記載)
- 瀾滄江 - 上流部の中国国内での呼称
- 昂曲 - 瀾滄江の支流
- コック川 - 支流
- オウ川 - 支流
- ムン川 - 支流
- セコン川 - 支流
- トンレサップ(トンレサップ川を含む) - 支流
- コーチェン川 - 分流
ダム
メコンの上流に位置する中華人民共和国とラオスは、治水と水力発電のために多数のダムを建設している[2]。
名称 | 国籍 | 完成 | 発電量 (MW) |
位置 |
---|---|---|---|---|
功果橋ダム Gongguoqiao Dam |
中国 | 2008 | 750 | |
小湾ダム Xiaowan Dam |
中国 | 2013 | 4200 | |
漫湾ダム Manwan Dam |
中国 | 1996 | 1500 | |
大朝山ダム Dachaoshan Dam |
中国 | 2003 | 1350 | |
糯扎渡ダム Nuozhadu Dam |
中国 | 2017 | 5850 | |
景洪ダム Jinghong Dam |
中国 | 2010 | 1750 | |
橄欖壩ダム Ganlanba Dam |
中国 | n/a | 150 | |
孟松ダム Mengsong Dam |
中国 | n/a | 600 |
- 参考
環境問題
メコンが現在直面している環境問題は、流量減少[1]、流域各国での水質汚染と過剰な漁獲、ダム建設と急流を緩和する治水工事、及び、上流部を領有する中国による河川舟運を目的とした岩礁爆破などの地形改変である。多くのダムが既に川の支流に建設されており、顕著な例ではタイ・ウボンラーチャターニーのパクマンダムが、環境への被害をもたらすと共に、地域住民の生活にも悪影響を与えると批判されている。 主流へのダム建設は、さらに深刻な影響を与える。中国はチベット周辺にあるメコン川主流へのダム建設の大規模な計画に着手している。1990年代に始まり既に1つ目の漫湾ダムを始め、3つのダムが完成し、さらに12のダムを計画中である。
中国は雲南省からタイ、ラオス北部にかけての上流部でより大型の船舶が航行できるように、障害となる岩礁の破壊などを実施・計画している。こうした岩礁は魚や鳥の繁殖場所であり、生物の種類・生息数を減らすことが懸念されている[14]。
経済が未発達なカンボジアでは、食料供給の大部分を川に依存している。年に一度の氾濫は、メコンの支流であるトンレサップ流域を肥沃化するために必要な、多量の水を供給している。氾濫が無ければ、この地域は乾いた埃だらけの生産力の低い土地となり、ひいては都市を維持できなくなる。トンレサップ生物保護区は、トンレサップ周辺領域を保護するために創設された。
メコンの下流に位置する国々を顧みない中国の姿勢を、メコン川委員会(MRC)の他国は非難し、ダム建設の中止を求めたが、空振りに終わった。最初の中国のダム建設以降、水位は低下し、捕らえられた魚は小さく、漁獲量は4分の1に減少した。チェンライ港の取引高は半分未満まで減少し、メコンイルカやマナティーを含む、多くの種が絶滅の危機にさらされるようになった。水位の低下によりフェリーが立ち往生するため、チェンライからルアンパバーンまでの航行は、以前の8時間から2日間を要するまでに伸びている。 現在でもこうした問題が発生しており、中国のダム建設が計画通り行われると、さらに深刻な影響を及ぼすことになる。下流域諸国は環境破壊と汚染に加え、低い水位が魚の遡上を妨げ、産卵ができなくなるという、川の閉塞問題にも直面する。中国政府は建設前に下流の地域に事前に警告することになっているが、遅過ぎるか全く無いことが多いという[4]。
メコン川では流量が激減しており、メコンデルタでは海水が逆流して漁獲量の減少、農地の塩害をもたらしている。MRCは2021年2月12日、雲南省の水力発電が原因とする非難声明を初めて発表した。中国外相の王毅は2020年2月、メコン流域諸国との外相会談で、流量減少は降雨不足で、中国も被害者と説明したが、メコン上流での水利用データの公表は拒んでいる[1]。
中国が岩石と砂洲を浚渫し、峡谷を爆破して流速を緩和する一方で、別の場所ではダムから放水を行うことにより、雨期-乾期という自然のサイクルを無視した一時的な水量の増加が、別の環境問題を引き起こす。この問題で、特に強い影響を受けているのはカンボジアである。カンボジアの農業生産は絶妙な水量のバランスの上に成り立っており、それが崩れることで、15世紀にクメール王朝を滅亡させた大規模な飢饉と壊滅的な洪水というシナリオの再現が危惧されている。メコン流域のラオスの都市やベトナムのホーチミン市[要出典]も低い水位[15]と汚染により、大きな打撃を受ける。
- ^ a b c d e f g 「メコン川流量激減/東南ア 農漁業被害/中国のダム建設影響か」「新たな米中攻防の舞台」『読売新聞』朝刊2021年2月26日(国際面)※本文閲覧は要会員登録。
- ^ a b c 「メコン流域国 米中が綱引き/河川管理、中国主導に米反発」『日本経済新聞』朝刊2020年9月9日(国際面)2020年10月4日閲覧
- ^ “メコン川流域で163種の新種を発見!最新報告を発表”. WWFジャパン. 2017年8月17日閲覧。
- ^ a b 「ダム建設に揺れるメコン川」『ナショナルジオグラフィック日本版』2015年5月号(2020年10月4日閲覧)
- ^ a b c “Tram Chim National Park | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年2月2日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “Beung Kiat Ngong Wetlands | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2010年6月16日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “Lower Songkhram River | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2020年4月23日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “Xe Champhone Wetlands | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2010年6月26日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ a b “Middle Stretches of Mekong River North of Stoeng Treng | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年1月1日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “Nong Bong Kai Non-Hunting Area | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2001年7月5日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “Lang Sen Wetland Reserve | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2015年5月22日). 2023年4月6日閲覧。
- ^ “ベトナム・メコン河下流域における水位変動特性” (PDF). 上原克人. 2015年3月24日閲覧。
- ^ Probe International 30.06.2006 The Hydrolancang cascade Archived 2009年5月29日, at the Wayback Machine.
- ^ “【ASEAN50年】メコン川流域 中国主導の「水運開発」岩礁爆破に住民反発”. 『毎日新聞』朝刊2017年8月4日(国際面). 2017年8月18日閲覧。
- ^ メコン川に大異変、世紀の低水位を記録、深刻な食料危機の恐れも 水が澄む「ハングリーウォーター」現象も発生、6000万人が頼る大河が岐路に ナショナルジオグラフィック(2020年2月29日)2020年10月4日閲覧
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