メガネザル メガネザルの概要

メガネザル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 16:01 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
メガネザル科
Tarsius tarsier
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
亜目 : 直鼻亜目 Haplorrhini
下目 : メガネザル型下目 Tarsiiformes
: メガネザル科 Tarsiidae
学名
Tarsiiformes Gregory, 1915[1]
Tarsiidae Gray, 1825[1]
和名
メガネザル型下目[2]
メガネザル科[1][2][3]

分布

東南アジアの島嶼部[4]

ウォレス線にまたがって分布する[4]

形態

眼は大型で、1個の重さが3グラムと脳よりわずかに重い[4]。眼は前方に位置し立体視ができるが、眼窩内ではほぼ動かすことができない[4]。後肢の第2・3趾には鉤爪があり、後肢の残りの趾および前肢の指には平爪がある[4]

体重100グラム程度の小型の霊長類である。体の割に大きな眼を持つ。眼球1つの重さは3グラムと、の重さとほぼ同じである。この眼は夜行性に適したもので、暗い所でもよく見ることができるが、逆に昼間はまぶしくて、あまり見えないらしい。この眼球は眼窩の中でほとんど動かすことができないが、代わりに(くび)を自在に動かすことができ、頸を180回転させて真後ろを見ることもできる。これほどまでに大きな眼を持つのは、たいていの夜行性の哺乳類に存在するタペータム網膜裏側の反射膜)を持たないからである。これは、かつて一時期昼行性となったために不要となったタペータムを失い、その後再び夜行性へと戻った際にそれを再生できなかったためと思われる。そのため、眼を大きくすることで夜間の乏しい光を捉え、夜の闇に適応したと考えられている。

後肢が長く、跳躍が得意で、枝から枝に跳び移ることができる。跳躍の距離は体長の25倍である。手足の指は長く、それぞれの指先には鋭い爪と、肉趾(にくし)と呼ばれる円盤状のふくらみがあり、枝からぶら下がることに役立っている。尾は体より長く、ほとんど毛がない。

分類

以前は原猿亜目Prosimiiに分類されていたが[1]、網膜の裏側に光を反射する膜(タペータム)がない・鼻先が湿っていないなど他の原猿類とは異なっている点もみられた[5]。19世紀には本科のみでメガネザル亜目を構成し、霊長目を3亜目に分ける説が提唱されたこともある[1]

過去には本科を旧メガネザル属Tarsiusのみで構成し、ニシメガネザルT. bancanus・ヒガシメガネザルT. spectrum・フィリピンメガネザルT. syrichtaの3種を認める説が有力であった[1]。 2010年に分布や形態・染色体数から、Cephalopachus属の復活(ニシメガネザルCe. bancanusのみで構成)と新属Carlitoの記載(フィリピンメガネザルCa. syrichtaのみで構成)に伴い、本科を3属に分割する説が提唱された[6]。2017年に形態や鳴き声から旧スラウェシメガネザルT. tarsierのスラウェシ島の北部半島部個体群が、それぞれT. spectrumgurskyaeT. supriatnaiとして新種記載された[7]。2019年には旧スラウェシメガネザルのトギアン島個体群が、T. niemitziとして新種記載された[8]

以下の分類(各属の特徴)は、付記のないかぎりGroves & Shekelle (2010)に従う[6]。和名・英名は、付記のないかぎり日本モンキーセンター和名リスト(2018)に従う[3]

  • Carlito - フィリピンに分布。耳は短い(3センチメートル未満)。上顎の犬歯は大型。乳頭数は2対。染色体数は2n = 80。メスとその幼獣より、大きな群れは形成しない。
  • Cephalopachus - スマトラ島・ボルネオ島および周辺の島嶼に分布。耳は短い(3センチメートル未満)。上顎の犬歯は大型。乳頭数は3対。染色体数は2n = 80。ペアとその幼獣からなる家族群を構成する(それ以上大きな群れは形成しない)。
  • Tarsius - スラウェシ島および周辺の島嶼に分布。耳は長い(3センチメートルよりも長い)。上顎の犬歯は小型。乳頭数は3対。少なくともダイアンメガネザルの染色体数は2n = 46で、他種も同じだと考えられている。主にペアとその幼獣からなる家族群を構成するが、8頭に達する群れを形成することもある。

  1. ^ a b c d e f 岩本光雄 「サルの分類名(その7:総説とメガネザル)」『霊長類研究』第5巻 1号、日本霊長類学会、1989年、75 - 80頁。
  2. ^ a b 川田伸一郎他「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1 - 53頁。
  3. ^ a b 日本モンキーセンター霊長類和名編纂ワーキンググループ 「日本モンキーセンター 霊長類和名リスト 2018年11月版」(公開日2018年12月16日・2021年7月31日閲覧)
  4. ^ a b c d e f Carsten Niemitz 「メガネザル」上原重男訳『動物大百科 3 霊長類』 伊谷純一郎監修、D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、38 - 39頁。
  5. ^ 小山直樹 「原始的なサルである「原猿類」は、その名のとおり、古いタイプの哺乳類の特徴をもっている。」『動物たちの地球 哺乳類I 5 キツネザル・ロリスほか 第8巻 41号 小山直樹編著、朝日新聞社、1992年、130 - 131頁。
  6. ^ a b Colin Groves & Myron Shekelle, "The Genera and Species of Tarsiidae," International Journal of Primatology, Volume 31, 2010, Pages 1071 - 1082.
  7. ^ a b c Myron Shekelle et al., "Two New Tarsier Species (Tarsiidae, Primates) and the Biogeography of Sulawesi, Indonesia," Primate Conservation Volume 31, 2017, Pages 61 - 69.
  8. ^ a b Myron Shekelle et al., "A New Tarsier Species from the Togean Islands of Central Sulawesi, Indonesia, with References to Wallacea and Conservation on Sulawesi," Primate Conservation Volume 33, 2019, Pages 65 - 73.


「メガネザル」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「メガネザル」の関連用語

メガネザルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



メガネザルのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのメガネザル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS