ヘモレオロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/08/23 03:46 UTC 版)
非ニュートン流体としての血液の性質を示すものとして、血液の粘度は剪断速度(ずり速度)に応じて変わる。心臓の最大収縮期のように剪断速度が高い状況では血液の粘度は下がり、一方拡張末期で血流速度が下がると血液の粘度は上昇する。それ故、血液は剪断減粘性を持つ流体であると言える。
目次
血液の粘性
血液の粘性は血液が流れる際の抵抗や粘着性を表す指標である。この生物物理学的性質は、血流の血管壁に対する摩擦や、静脈還流量、心拍出に要する心臓の仕事量、そして体内の各組織や臓器への酸素運搬の効率などを決定する重要な要因となり、更にこれらの心血管系の機能が、血管抵抗、前負荷、後負荷、そして組織灌流にそれぞれ直接関係することになる。
血液の粘性を決定する最も主要な要因はヘマトクリット、赤血球変形能、赤血球凝集能、そして血漿の粘度である。血漿の粘度はその含水率と血漿中に含まれる高分子要素により決定される。即ち、血漿蛋白質の濃度とその蛋白質の種類に影響されることになる[3]。しかし、実際血液の粘性に最も強い影響を与えるのはヘマトクリットである。例えばヘマトクリットが1上昇しただけで、粘度は4%上昇する[2]。この関係はヘマトクリットの上昇に伴い更に鋭敏になり、多血症の場合のようにヘマトクリットが60%から70%程度まで上昇すると、[4] 血液の粘度は水の10倍程になり、血管内を流れる血流は抵抗の上昇のために著明に遅延することになる[5]。その結果として、組織への酸素運搬効率の低下に繋がる[6]。血液の粘性に影響を与えるその他の要因は温度がある。温度が下降すると粘度は増加するため、低体温症の際には循環障害を起こすことがある。
臨床との関連
血漿の粘度の上昇は冠動脈疾患や末梢血管疾患の病態の進行に相関する[3][4]。また従来から提唱されてきた多くの心血管系リスク因子と心血管イベントに与える影響はそれぞれ全血の粘度と相関がある。高血圧、トータルコレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、カイロミクロン、VLDL-コレステロール、糖尿病、そしてメタボリックシンドローム、肥満、喫煙、男性、また加齢などの因子は全て血液粘度に相関がある。一方HDL-コレステロールは血液粘度に対し負の相関がある。貧血は血液粘度を減少させ、結果として心不全に繋がることがある[7]。
正常範囲
単位を Pa・s とすると、血液粘度の正常範囲は37℃で 3 × 10−3 から 4 × 10−3であり[8]、CGS単位系ではそれぞれ 3 〜 4 センチポアズ(cP)である。以下の式でμは粘度、ρは密度、νは動粘度を表す。
外力が加わった時の血液の評価に必要な力学的パラメーターは以下の様に表される。
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- 剪断応力:
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