フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/15 09:02 UTC 版)
文化
言語・民族
2006年の国立統計研究所(ISTAT)の統計によれば、6歳以上の住民の家庭内での会話における言語状況は以下の通り[4]。イタリア語(Italiano)、地方言語(Dialetto)、他の言語(Altra lingua)についてのデータで、左列が全国平均、右列がフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の数値である。
家庭内の会話における使用言語 | 全国 | 州 |
---|---|---|
イタリア語のみ、あるいは主にイタリア語 | 45.5% | 35.8% |
地方言語のみ、あるいは主に地方言語 | 16.0% | 10.7% |
イタリア語と地方言語の双方 | 32.5% | 20.9% |
他の言語 | 5.1% | 30.9% |
- フリウリ語
- フリウリ語はレト・ロマンス語群に属する言語で、フリウーリ地方を中心に州外(ヴェネツィア県など)も含め約60万人の話者がいる[5]。ユネスコの「危機に瀕する言語のレッドブック」 (Red Book of Endangered Languages) では、危機に瀕する言語(vulnerable から critically endangered(絶滅寸前)までの4段階のうち、2段階目の definitely endangered)に指定されている[5]。フリウリ語の保護・公用に関する州法(Norme per la tutela, valorizzazione e promozione della lingua friulana)が2007年12月18日に施行され、フリウリ語地名の規範化と、公的な使用が行われるようになった。
- ヴェネト語
- 中世にヴェネツィア共和国の影響下にあった地域(トリエステを含むフリウリ東部やゴリツィア県南部のビシアカリア地方[6])では、ヴェネト語が広く使われる。州で話されているヴェネト語の方言としては、ポルデノーネ方言 (it:Dialetto pordenonese) 、ウーディネ方言 (it:Dialetto veneto udinese) 、ビジアカリア方言 (it:Dialetto bisiaco) 、グラード方言 (it:Dialetto gradese) 、トリエステ方言 (it:Dialetto triestino) などがある。
- スロベニア語
- 民族的なスロベニア人は、スロベニア国境に隣接するトリエステ県やゴリツィア県に10万人いるされ[6]、スロベニア語が話されている。州法(legge statale 482/99)および法令(legge 38/01)に基づき、コムーネの中にはスロベニア語がつかわれているものもある。州で話されているスロベニア語は、その中でもプリモルスカ方言群 (Littoral dialect group) に属する方言で、イストリア方言 (Istrian dialect) やナツィゾーネ方言 (Natisone Valley dialect) などに分類される。
- ユネスコの「危機に瀕する言語レッドブック」では、ウーディネ県北東部(レージア)で話されているスロベニア語の言語変種レージア語 (Resian dialect) に一項目を立てている。レージア語の話者は1000人で、ユネスコは危機に瀕する言語(definitely endangered)としている[7]。
- ドイツ語
- かつてオーストリア=ハンガリー帝国の領域であったことから、今日でも北部の住民にはドイツ語(バイエルン・オーストリア語に属する南バイエルン・オーストリア語)を母語または第2言語とする人々もいる。
食文化
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州地域の料理 (it:Cucina del Friuli-Venezia Giulia) には、フリウーリ地方伝統のフリウリ料理 (it:Cucina friulana) や、オーストリア帝国のもとでさまざまな民族が暮らしたヴェネツィア・ジュリア地方のトリエステ料理 (it:Cucina triestina) やゴリツィア料理 (it:Cucina goriziana) など、さまざまな要素が混じりあっており、中央ヨーロッパの食文化に近い。食文化の中心となる大都市はウーディネやトリエステで、域外のヴェネツィアからも影響を受けている。
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州はワインの生産地として知られる。また、ハムやチーズの生産も盛んである。
- 豆やザウアークラウトなどを煮たヨータは、イストリア半島周辺で食べられていた料理でトリエステ・ゴリツィア・フリウリでも親しまれているが、クロアチアやスロベニアの料理とも共通する。
- チャルソンス (it:Cjarsons) はラビオリに砂糖やシナモンなどをまぶした甘いパスタ料理である。
- 畜肉加工品・肉料理
- サン・ダニエーレ・デル・フリウーリは、生ハム(プロシュット)の産地として高名である。原産地名称保護(DOP)や地理的表示保護(IGP)の指定を受けているものとして、以下がある。
- プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ(DOP) - ウーディネ県サン・ダニエーレ・デル・フリウーリ
- プロシュット・ディ・サウリス(IGP) (it) - ウーディネ県サウリス
- サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラ(DOP) (it)
- ソーセージやベーコンなど豚肉を食材として用いた料理がある。このほかに肉料理としては、ハンガリーに起源を持つシチュー料理グラーシュなどがある。
- 水産加工品・魚料理
- イワシが好まれる。玉ねぎとともにマリネにしたサルドーニ・イン・サヴォール(Sardoni in Savor)などにされる。このほか、魚介類の料理には、海老をトマトソースで煮たスカンピ・アッラ・ブサラ(Scampi alla busara)、モンゴウイカを煮たセッピエ・イン・ウミド(Seppie in umido)、シャコのスープであるズッパ・デ・カノッキエ(Zuppa di canochie)などがある。
- また、マスの燻製、干し鱈 (it:Baccalà) などが食される。
- 菓子(ドルチェ)とコーヒー
- オーストリアの影響下にあったためにカフェの文化が根付いており、コーヒー(エスプレッソ)が親しまれている。イッリカッフェ(イリー)は1933年にトリエステで創業し、本社を置く。
- 詰め物を層状に巻いた渦巻き状の菓子シュトゥルーデルは、かつてのオーストリア帝国の領域に普及した菓子である。木の実が入った渦巻き型のパイ・プレスニッツ (it:Presnitz) はトリエステの名物、ドライフルーツなどを生地に詰め渦巻き状に焼いたグパーナ (it:Gubana) はフリウリの名物である。
- ワインとその他のアルコール飲料
- 以下の産地名称は、イタリアの原産地名称保護制度の中で最上級にあたる保証つき統制原産地呼称(DOCG)に指定されている。
- 長らくオーストリアの影響を受けたフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州ではウーディネ県を中心にビールが生産されている(イタリアのビール参照)。州内に本社を置くビール醸造業者としては、1859年創業のモレッティ社 (it:Birra Moretti) (本社: ウーディネ)、カステッロ社 (it:Birra Castello) (本社: ウーディネ県サン・ジョルジョ・ディ・ノガーロ)や Birra Zahre(本社: ウーディネ県サウリス)などがある。
- また、州ではグラッパ(蒸留酒の1種)や、洋ナシのブランデー、プラムのブランデー「スリヴォヴィッツ」 (Slivovitz) などのフルーツ・ブランデー(ブドウ以外の果物を原料としたブランデー)が生産されている。
- ドイツを中心に使われるキャベツの漬物・ザワークラウト(イタリア語ではcrauti)もよく用いられる。フリウリではカブをブドウ果汁に漬けたブロヴァーダ (it:Brovada) が生産され、肉とともに供される。
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- ^ 国立統計研究所(ISTAT). “Tavola: Superficie territoriale (Kmq) - Friuli-Venezia Giulia (dettaglio provinciale).” (イタリア語). 2013年3月3日閲覧。
- ^ a b c 国立統計研究所(ISTAT). “Total Resident Population on 1st January 2012 by sex and marital status” (英語). 2013年3月22日閲覧。
- ^ 死者六百人超す 悪条件の中、懸命の捜索『朝日新聞』1976年(昭和51年)5月8日夕刊、3版、1面
- ^ 国立統計研究所(ISTAT). “La lingua italiana, i dialetti e le lingue stranieri (pdf)” (イタリア語). p. 5. 2012年11月3日閲覧。
- ^ a b “Friulian”. UNESCO Interactive Atlas of the World’s Languages in Danger. UNESCO. 2012年12月10日閲覧。
- ^ a b “Languages of Italy”. ethnologue. 2012年12月10日閲覧。
- ^ “Resian”. UNESCO Interactive Atlas of the World’s Languages in Danger. UNESCO. 2012年12月10日閲覧。
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