バレンシア州 経済

バレンシア州

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 13:33 UTC 版)

経済

バレンシア県の典型的な農地

バレンシア自治州は、その南北に長く伸びた面積を陸づたいの人的交流および使用を歴史的に妨げてきた、峻険で不規則な山岳地帯に順応させられてきた。また、海岸軸線はヨーロッパとの関係を、地中海経由やカタルーニャを経由する船舶によってよりよく促進されてきた。地中海性気候と雨季の降雨が足りないために、バレンシア州内の天然資源は鉱物関連が不足している。水資源においては、供給を上回る水の需要があり、この不均衡は、使用制限や地下水層開発でさしあたって解決されている州南部のコマルカで特に重大である。

2002年、バレンシア州は、スペインのGDPの10.5%及びその輸出品の12%を生み出した。人材分野では、失業率が10.5%で特に女性が多く、2002年の労働力は56.8%に達した。バレンシア州の特徴的な経営形態は中小企業で、一部に多国籍企業があるが主として家族経営である。1973年から1985年には経済危機に見舞われたにもかかわらず、当時国内第2の輸出品生産割合を誇る州で、国内の12%を占めていた。

2012年、スペインの経済危機は同州の経済を直撃。自治州政府も資金調達が困難になり、7月には中央政府に支援要請を行う事態となった[5]

バレンシア州は地中海性気候であり、柑橘類野菜の生産に適している。バレンシア州における最も典型的な農産物はオレンジである。

社会

交通

アリカンテ=エルチェ空港

空港

観光客中心のアリカンテ=エルチェ空港、ビジネス客中心のバレンシア空港と、バレンシア州は2つの国際空港を有する。2011年にはカステリョン県にカステリョン=コスタ・アサアール空港が開港した。

鉄道

国営鉄道のレンフェによってバレンシア州と他地域を結ぶ長距離鉄道路線が運行されている。アリカンテからバレンシアやカステリョン・デ・ラ・プラナを経由してカタルーニャ州の州都バルセロナに至る路線はユーロメッドと呼ばれ、アリカンテやカステリョン・デ・ラ・プラナからバレンシアを経由してスペインの主とマドリードに至る路線はアラリスと呼ばれる。

既存の長距離路線とは別に専用線を建設し、2010年にはバレンシアとマドリードを結ぶ高速鉄道AVEの東回廊(レバンテ線)が開業した。2013年にはアリカンテとマドリードがAVEで結ばれ、2018年にはカステリョン・デ・ラ・プラナとマドリードがAVEで結ばれた。

バレンシア都市圏ではレンフェによって通勤鉄道のセルカニアス バレンシアが運行されている。レンフェのほかにはバレンシア公営鉄道によって、アリカンテ=ベニドルム=デニアを結ぶ鉄道路線が運営されている。バレンシアでは地下鉄のメトロバレンシアが、アリカンテでは路面電車のアリカンテ・トラム英語版も運行されている。

道路

言語

バレンシア州の言語普及図。緑色がバレンシア語地域、白がスペイン語地域

バレンシア州の公用語はバレンシア語スペイン語の2言語である。スペイン語は国家公用語であり、スペインの全17州で公用語となっている。一方でバレンシア語は州の「本来の言語」(llengua pròpia)とされる。バレンシア語は伝統的に、スペイン語を伝統言語とみなす傾向のある内陸部よりも地中海沿岸部で話されてきた。1833年にアリカンテ県とバレンシア県が創設された際に併合されたその他地域(歴史的なバレンシア王国の一部となっていなかった)でも同様に、スペイン語が優勢である。1984年のバレンシア語の使用と教育における法律は、特定の自治体をスペイン語話者優勢地域と定め、バレンシア語の公式使用に関してわずかな例外を与えた。たとえ右の表のように言語を使い、バレンシア語で教育を受けたとしても、州のどこでも州自治法第6.2章で保証されている。

バレンシア州における
バレンシア語の精通割合
理解できる 76%
話せる 53%
読める 47%
書ける 25%
Enquesta sobre la situació del valencià バレンシア語アカデミー、2004年

かつてバレンシア王国の一部であった地域でさえ、バレンシア語の使用と精通は、スペイン及び世界各地からの移民、18世紀の新国家基本法以降の長期に渡る地方言語の抑圧の影響、そして1936年から1975年まで続いたフランコ独裁によって衰退した。州政府(ジャナラリタ・バレンシアーナ)によって『主としてバレンシア語を話す』と定義された地域のバレンシア語精通割合は、理解できるが83%、話せるが58%だった[6]。これはバレンシア全体として高いとはいえない。

バレンシア語は1998年に創設されたバレンシア語アカデミー英語版(AVL)によって管理されている。アカデミーを設置した法律は、バレンシア語がかつてのアラゴン連合王国の構成地域、カタルーニャバレアレス諸島の言語系統の一部であると断言しており、これら地域でもそれぞれ独自の言語だと認識されている[7]。しかし、2005年以降の公式声明においてAVLは、バレンシアで話される言語は、カタルーニャとバレアレス諸島で話される言語と同じである、古い法律で使われた専門用語「言語系統」に言及し「一つの言語」(カタルーニャ語)を構成する異なった種類である、と述べた[8]。カタルーニャ語研究所(en:Institut d'Estudis Catalans、略称IEC)も、カタルーニャ語とバレンシア語は同じ言語だとみなしている。たとえこの2つの言語の音声の違いが顕著でも、標準的に書かれたバレンシア語は、標準に書かれた中央カタルーニャ語とはわずかしか違わない。バレンシア自治州憲章はバレンシア語手話に特別な保護を与えている。

純粋に言語学的な基準を除いて、バレンシアにおいて伝統的かつ通用する言語はバレンシア語である。一般大衆と全ての大政党によるこのバレンシア語という用語の広範囲に渡る使用は、カタルーニャ語の言語学上の起源を必ずしも否定するわけでもなく、支持するわけでもない。カタルーニャ語とバレンシア語はどちらも、同じ言語と見なされるかどうかに関してある混乱を生んだもののわずかに異なる基準を持つ。こうして、スペイン政府文書にはカタルーニャ語とバレンシア語のための異なる版がある。欧州憲法承認のための2005年スペイン国民投票で、スペイン政府は、標準カタルーニャ語で、最初は憲法議定書の同一翻訳版を配布した(カタルーニャ用とバレンシア用に同じものを配布した)。これが標準バレンシア語での翻訳を要求するバレンシア州政府のうるさい反応を引き起こした。一旦この訴えが承認されると、次はカタルーニャ州政府が、カタルーニャ語とバレンシア語の言語学上の同一性を支持する手段として、標準バレンシア語と仮定し、カタルーニャで使われるリーフレットの中に標準カタルーニャ語を使わなかった[9]

この点では、主要なバレンシア保守政党(与党国民党)は、カタルーニャ語とバレンシア語の親子関係についての質問にほとんど取り組まず、一方で事実上カタルーニャ語と最も一致する標準バレンシア語を支持していた。さらに、右翼に共感する一派や、カタルーニャ語とバレンシア語を単一の言語として考えることに反対するブラベリスメ運動英語版(反カタルーニャ主義)から吸収された一派が、国民党内に含まれている。

文化

象徴

バレンシア州の紋章

バレンシア州の旗・州歌・紋章は、1982年7月1日に初めて発令されたバレンシア自治州憲章に明記されているように、バレンシア自治州と州政府内閣[10]の公式シンボルである。

バレンシア州旗は、バレンシア王国旗(Real SenyeraまたはSenyera Coronada)としてよく知られており、歴史的なバレンシア市の旗でもある。それは、アラゴン王国の黄色地に赤の4本線で構成されている。旗竿の次にある青い縁飾りは、開いた本物の王冠の部分的表現、王位を示す頭飾り、花形装飾及び宝石で飾られている。

バレンシア州歌は1909年の州博覧会歌であり、16世紀につくられたバレンシア市歌を含んで作曲された。

ジャナラリタ・バレンシアーナの紋章は、ペドロ4世儀典王の紋章(羽ばたく金色のドラゴンクレスト王冠を被った銀色の、十字の描かれたマント)から構成されており、金色の地に4本のギュールズ縦帯が描かれている傾いたシールドは、歴史的なバレンシア王国を表している。ジャナラリタの旗も、深紅の地に上記の紋章が描かれている。

金色のドラゴン(drac alat) 、正面を向いて翼を広げたコウモリ(rat-penat)は、バレンシア社会全てで受け入れられる公式の紋章ではなく、アラゴン王国に由来するものである。これらの紋章とムイシェランガの音楽は、1960年代に盛んになったバレンシア民族主義(Nacionalismo valenciano)によって一般に浸透した。

バレンシア人の帰属意識とナショナリズム

スポーツ

ピロタ

バレンシア州ではサッカーが盛んであり、バレンシアCFビジャレアルCFレバンテUDCDカステリョンエルチェCFエルクレスCFなどのクラブがある。バスケットボールではバレンシアBCが知られる。

オートバイのロードレースが盛んであり、バレンシアGPが行われるバレンシア・サーキットがある。伝統的な球技であるピロタ英語版ペタンクも行われている。

食文化

バレンシア料理英語版コメを基調としており、品種としては短粒種のボンバ米などが使用される。炊き込みご飯の一種であるパエリアがよく知られており、アロス・ア・バンダ英語版(魚介ベースのパエリア)やアロス・ネグロ(イカ墨のパエリア)などの種類がある。チーズを使わないピザであるコカも知られている。飲料としてはキハマスゲの地下茎を用いたオルチャータなどが知られている。

バレンシア菓子の大多数がイスラム支配下に生まれたものであり、地元の祝祭に欠かせない。ヒホナで伝統的に製造される柔らかいヌガー、トゥロンはスペイン国内やヒスパニック諸国のクリスマスに消費される。シャティバのアルナディは、カボチャで入念に作られたデザートである。オリウエラ、アルコイでは、ペラディージャスという砂糖がけアーモンドが製造されている。




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