バレンシア州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 13:33 UTC 版)
バレンシア州 | |||
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国名 | スペイン | ||
州都 | バレンシア | ||
県 | バレンシア県、アリカンテ県、カステリョン県 | ||
政府 | |||
• 州首相 | カルロス・マゾン | ||
面積 | |||
• 合計 | 23,255 km2 | ||
面積順位 | 8位(スペイン中4.6%) | ||
人口 (2019) | |||
• 合計 | 5,003,769人 | ||
• 密度 | 220人/km2 | ||
順位4位 (スペイン中10.9%) | |||
自治州憲章 | 1982年7月10日 | ||
公用語 | スペイン語、バレンシア語 | ||
スペイン下院 | 33人(350人中) | ||
スペイン上院 | 17人(264人中) |
歴史
古代
古代、現在のバレンシア州の領域には、イベリア人の異なる部族が定住していた。南部のコンテスタニ人、中央のエデタノス人、北のイレルカボネス人である。イベリア人は、フェニキア人、古代ギリシャ人、カルタゴ人と海上貿易を通じて関係があった。
紀元前202年の第二次ポエニ戦争によるローマ勝利後、バレンシア沿岸部全体がローマに服従した。7世紀ものローマ支配の間、イベリア人は政治的・経済的・社会的組織に徐々に吸収されていき、言語もラテン語を取り込んでいった。スペインの他のイベリア人定住地にあったような固有の反乱は、この地域には存在しなかった。
中世
8世紀から13世紀まではイスラーム教徒がこの地を支配し、タイファ諸国のバランシヤ王国やデニア王国の領域だったが、11世紀までは中心都市の定まらない人口希薄地域にすぎなかった。イスラーム教徒らが灌漑システムを拡張し始めると、バレンシアが都市に成長した。
1232年から1245年にかけて、キリスト教勢力のアラゴン王ハイメ1世がバランシヤ王国やデニア王国を征服し(レコンキスタ)、アラゴン連合王国の構成国としてバレンシア王国を築いた。アラゴン王がバレンシア王を兼任したが、バレンシア王国には自治法や議会などの自治権が与えられた。イスラーム支配時代の名残として、レコンキスタ後にも残留したイスラーム教徒であるムデハルが人口の大多数を占めていたが、アラゴン連合王国への併合後には主としてカタルーニャ人とアラゴン人がバレンシアに入植した。
15世紀のアラゴン連合王国の地中海遠征がもとで、バレンシアは社会的・経済的に黄金の世紀を迎えた。1479年のアラゴン=カスティーリャ同君連合成立によって、その繁栄は最高潮に達した。
近代
1518年、スペイン王カルロス1世が即位すると、ヘルマニア反乱、カスティーリャ人のバレンシア副王・官僚に対する農民反乱といった重要な社会的対立が起こった。一方、アメリカ大陸発見によって貿易の中心が大西洋にとってかわり、バレンシアの比重は減少した。また、バルバリア海賊の襲撃が継続してバレンシア沿岸を脅かした。1609年のモリスコ追放により、バレンシアは人口の1/3を失うという打撃を受けた。
18世紀はじめのスペイン継承戦争でバレンシアはオーストリア・ハプスブルク家のカール大公の側について戦った。ブルボン家のアンジュー公フィリップが勝利し、フェリペ5世として王位に就くと、彼は1707年に新国家基本法を布告し、バレンシアの全ての自治権を剥奪した。スペイン王国の一部としての行政組織に取り替えられてしまったのである。18世紀後半、バレンシアの経済成長と人口の伸びは顕著なものとなった。
現代
19世紀のバレンシアでは、ワイン用ブドウ、米、オレンジ、アーモンドの栽培が盛んとなり、農地が拡張された。アルコイやサグントといった例外を除いて、スペインの他地域のような工業化は不完全で遅れていた。
1833年11月、スペイン国土区分令によってスペイン国内は49の県に分割され、かつてのバレンシア王国はバレンシア県、アリカンテ県、カステリョン県に三分割された。
1873年から1874年の短期のスペイン第一共和政には、州を独立したカントンに移行することを目指すカントナリスモ運動がアルコイを中心として起こり、20世紀初頭にはバレンシアの政治的自治が要求されるようになった。1931年から1939年のスペイン第二共和政では、自治制定法の様々な提案が編成されたが、どれも投票によって結局承認されなかった。
スペイン1978年憲法では新たな地方行政区分として自治州の設置が認められた。1982年7月10日にはバレンシア自治州憲章が制定され、バレンシア県・アリカンテ県・カステリョン県の3県からなるバレンシア州が発足した。スペイン政府によって地域言語の権利が認められたため、バレンシア州は国家公用語であるスペイン語とともにバレンシア語を公用語とした。
1992年11月2日、バレンシア州政府は日本の三重県と姉妹(友好)提携を締結した[1][2]。
地理
地勢
バレンシア州の内陸部は山地である。カステリョン県の山地はイベリコ山系に属し、アリカンテ県の山地はベティコ山系の一部である。地中海にはコルンブレテス諸島やタバルカ島がある。
バレンシア州を代表する山はカステリョン県にあるペニャゴロサ山(標高1813m)である。かつてペニャゴロサ山はバレンシア州の最高峰と考えられてきたが、実際にはリンコン・デ・アデムス[注釈 1]にあるカルデロン山(標高1839m)がバレンシア州の最高峰である。バレンシア州南部を代表する山はアイタナ山(標高1558m)である。
ナオ岬やカステリョン県のペニスコラ周辺を除けば、地中海沿岸には肥沃な平野が広がっている。この沿岸地帯の典型は、バレンシア近郊のアルブフェーラ、エルチェのエル・フォンド、ペーゴ近郊のマルハルのような湿地である。サンタ・ポーラやトーレビエハ地域にはかつて湿地だった土地や塩田もある。渡り鳥、定着した海鳥、水鳥がいることから、これらは全てラムサール条約登録地となっている。
アルブフェーラ近郊とグアルダマールには重要な砂丘地があり、どちらも砂丘の成長を食い止めるために19世紀に数千本の植林がなされ、現在注目される環境的価値のある保護区とされている。
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ペニャゴロサ山
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アルブフェーラ湿地
水文
バレンシア州内には2つの主要河川がある。アリカンテ県を流れるセグラ川と、バレンシア県を流れるフカル川である。どちらの河川も農業用水や工業用水としての取水量が多く、下流部では水量が少ない。アラゴン州に源を発するトゥーリア川はバレンシア州第3の河川である。乾燥する地中海性気候や取水量の多さが理由で、バレンシア州にはほとんど流れがないか夏期に干上がってしまう河川もある。
気候
バレンシア州は概して温暖な気候で、接する地中海から非常に影響を受けている。しかし地域ごとに重要な違いがある。
- 地中海性気候 - アリカンテ県ベニドルムより北側の地中海沿岸地域、バレンシアやカステリョン・デ・ラ・プラナを含む地域では、夏季は暑く乾燥し、冬季は穏やかである。降水は春季と秋季に集中し、年間降水量は約600mmである。マリナ・アルタ郡やラ・サフォル郡などナオ岬の北にある郡では約1000mmであり、他地域よりも降水量が多い。
- 地中海性気候から大陸性気候への遷移地帯 - バレンシア州の内陸部や地中海沿岸の高標高の地域、アルコイ、モレーリャ、レケナ、ビリェーナなどでは、夏季は温暖で暑くなることもあり、冬季は冷涼で降雪も珍しくない。年間を通じて降水がある。
- 地中海性気候からステップ気候への遷移地帯 - アリカンテ県ビジャホヨーサ/ラ・ビラ・ホヨーサより南側の地中海沿岸地域、アリカンテやエルチェを含む地域では、長い夏季はとても暑く乾燥し、冬季は穏やかであるか温暖である。降水は春季と秋季が多いが、年間降水量は300mmと非常に少ない。
県と自治体
古代ローマ時代の人口中心地はサグントやデニアだった。近年には州都バレンシアやバレンシア都市圏の自治体、さらに地中海沿岸の自治体において人口集中率が高まった。ベニドルムやトーレビエハなど、定住人口は少ないものの夏期には人口が増加する観光都市もある。肥沃な農地や重要な河川や港湾を有するバレンシア州中央部と南部は人口密度が高く、灌漑化が進んでいない北部と山地を有する内陸部は人口密度が低い。
県
バレンシア州はバレンシア県・アリカンテ県・カステリョン県の3つの県で構成される。バレンシア州には32のコマルカ(郡)、542のムニシピオ(基礎自治体)がある。
県 | バレンシア語 表記 |
スペイン語 表記 |
県都 |
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バレンシア県 | València | Valencia | バレンシア |
アリカンテ県 | Alacant | Alicante | アリカンテ |
カステリョン県 | Castelló | Castellón | カステリョン・デ・ラ・プラナ |
自治体
# | 基礎自治体 | 県 | 人口 | # | 基礎自治体 | 県 | 人口 |
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1 | バレンシア | バレンシア県 | 794,288 | 11 | サグント | バレンシア県 | 66,140 |
2 | アリカンテ | アリカンテ県 | 334,887 | 12 | アルコイ | アリカンテ県 | 58,994 |
3 | エルチェ | アリカンテ県 | 232,517 | 13 | サン・ビセンテ・デル・ラスペイグ | アリカンテ県 | 58,385 |
4 | カステリョン・デ・ラ・プラナ | カステリョン県 | 171,728 | 14 | エルダ | アリカンテ県 | 52,618 |
5 | トレビエハ | アリカンテ県 | 83,337 | 15 | ヴィラ=レアル | カステリョン県 | 50,893 |
6 | トレント | バレンシア県 | 82,208 | 16 | アルシーラ | バレンシア県 | 44,352 |
7 | オリウエラ | アリカンテ県 | 77,414 | 17 | ミズラータ | バレンシア県 | 43,691 |
8 | ガンディア | バレンシア県 | 74,562 | 18 | デニア | アリカンテ県 | 42,166 |
9 | パテルナ | バレンシア県 | 70,195 | 19 | ブルハソット | バレンシア県 | 38,024 |
10 | ベニドルム | アリカンテ県 | 68,721 | 20 | オンティニェント | バレンシア県 | 35,347 |
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バレンシア州の州都バレンシア
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アリカンテ県の県都アリカンテ
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カステリョン県の県都カステリョン・デ・ラ・プラナ
注釈
- ^ カスティーリャ・ラ・マンチャ州とアラゴン州に囲まれた飛び地。
出典
- ^ “スペイン・バレンシア州”. 三重県環境生活部多文化共生課. 2016年1月17日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “姉妹(友好)提携情報”. 自治体間交流. 一般財団法人自治体国際化協会. 2016年1月17日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Estatuto de Autonomía de la Comunitat Valenciana
- ^ Third Section, First Chatper of the Statute of Autonomy of the Valencian Community Archived 2007年12月26日, at the Wayback Machine.
- ^ “スペインのバレンシア州が中央政府に支援要請、財政不安高まる”. ロイター (ロイター通信社). (2012年7月21日) 2012年9月1日閲覧。
- ^ Enquesta sobre la situació del valencià バレンシア語アカデミー、2004年
- ^ LLEI 7/1998, de 16 de setembre, de la Generalitat Valenciana, de Creació de l'Acadèmia Valenciana de la Llengua. (1998/7973)
- ^ Dictamen de l’Acadèmia Valenciana de la Llengua sobre els principis i criteris per a la defensa de la denominació i l’entitat del valencià Archived 2007年3月11日, at the Wayback Machine.. First article.
- ^ Cataluña asume la traducción valenciana de la Constitución europea エル・パイス、2004年10月10日
- ^ Los símbolos de las Comunidades Autónomas españolas. Dossier del Consejo de Estudios Políticos y Constitucionales.
- 1 バレンシア州とは
- 2 バレンシア州の概要
- 3 政治
- 4 経済
- 5 脚注
- バレンシア州のページへのリンク